season5 28話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
28.『とこしえの森撮影大作戦』
到着すると、サザレはニョロゾを撮影中(午後7時半くらい)。
「イイね……、イイよー、イイよー。ねえねえ、かわいいとこ、もっと見せてー……?」
声をかけるべきか迷って様子を見てると、ガーディが駆け寄ってきた。
「あ、ガーディさん」
「ピーカ」
小声で話しかけるヨーコとぴっかりさん。
「そうそう、イイ子だねえ、あーかわいいねえー!」
しかし気づかないサザレ。
「じっとしててね……、そのまま、かわい子ちゃん!」
意を決して話しかけるヨーコ。
「サザレさん」
「ピカピカ」
「ぐぐふん!」
ガーディも手助けする。ようやくこちらに気づくサザレ。去っていくニョロゾ。
「助手クン! ピカチュウ! 来てくれたんだ!」
「お疲れ様です。すみませんお邪魔してしもうて」
「ううん。かわいい子いたから、ついついシャッター切っちゃった」
サザレ、辺りを見回して、
「この森のこのあたりで、赫月の姿が目撃されてるんだ。それが霧が濃い夜の出来事だったらしくて」
写真を見せる。ぼんやりと浮かび上がる、巨大な熊のポケモン。目と月の模様が不気味に浮かび上がっている。
「うわ、怖……」
「ピカ……」
思わず身震いするヨーコとぴっかりさん。
「聞いた話だと、霧の夜にはいつもと違うポケモンたちが姿を現すんだって! きっとそこに赫月も……」
と、前方の草むらからガサガサ音がした。
「ん?」
「さっきの子? 戻ってきたのかな?」
出てきたのはアリアドス!!
「キュイーヤ!!」
叫んで飛びかかってくるアリアドス。
「うわあ!?」
思わず尻餅をついてしまうサザレ。
「あいててて……」
「サザレさん!」
「ぐるるるふう!」
果敢にも吠えるガーディ!
「助太刀します! ぴっかりさんはサザレさんを!」
「ピカチュ!!」
それぞれの位置につくふたり。
「キュイキュイキュイー!!」
ウチのシマで何しとるんじゃおどれら、と鳴くアリアドス。
「わっぷるさん、あんたに決めた!」
わっぷるさん登場!
「キュキュキュシャ!!」
かかってこいや! なアリアドス。
「一気に決めるで! アクロバット!!」
次の瞬間飛びかかってアクロバット! 急所に当てワンパン! 哀れ吹っ飛んでいくアリアドス。
「ありがとうわっぷるさん」
「バルーブ」
華麗にサムズアップ。ヨーコ、ボールに戻す。
「いたたぁ……、ビックリしたね」
さすりながらも立ち上がるサザレ。
「サザレさん、大丈夫ですか?」
「ピカチュ?」
「うん。私もカメラも無事だよ。助手クン、ピカチュウ、ありがとう」
「いえいえ」
「ピーカチュウ」(ドヤッ)
「ぐふーん!」
僕も! と鳴くガーディ。笑いかけるサザレ。
「もちろんキミもね」
サザレ、森の方を見て、
「アリアドスも気の毒だな。突然人間がいたから、ビックリして襲ってきたんだろうね」
「ええ。ちょっと申し訳なかったです」
「テント設営して、人間いるよアピールしなくっちゃ!」
ということでテント設営。ヨーコも手伝い完成!
「ちょっと古いけど立派なテントでしょ!」
「はい! なんかかわええです!」
「ピカピカ!」
「お父さんが使わなくなったの、勝手にもらってきたんだ。ここが、赫月調査のための我々の拠点となりまーす!」
「ぐふーん!」
思わず拍手するヨーコ。
「おおー」
「赫月はほかのポケモンよりよっぽど用心深くて、人間の前にはめったに姿を現さないんだって。だから、地道な調査が必要になってきます!」
「はい!」
ピシッ! なヨーコとぴっかりさん。
「これから助手クンたちに手伝ってもらいたいのは、ポケモンの写真撮影! 今夜この辺りに現れるポケモンを撮って調査してほしいんだ」
「ふむふむ」
「いろんなポケモンをたくさん撮っていって! そのデータをカメラにつけたポケモン探しマシーンに登録していくと! ほかのポケモンの反応がだんだんと除外されていき……、最後には赫月の場所がつきとめられるってスンポーさ!」
「なるほどさすがです!」
「あれ!? 今の説明でわかったんだ!?」
「へ?」
「リサイクルショップでもらった説明書を読んだだけだから、ワタシは理屈よくわかってないんだな」
「ありゃあ……」(汗)
ぴっかりさんジト目。
「霧の夜、このあたりには数十種類のポケモンが現れるとこまでは調査できてるんだ。ふたりと2匹で手分けするとして、助手クンたちには10種類くらいポケモンの写真を撮影してほしいんだ」
「了解です!」
「ピカチュ!」
「あ、ポケモンは大きく撮影してね。それと、被写体が逃げちゃうから、ライドポケモンには乗らずによろしく!」
「はい!」「ピカ!」
「力を合わせて調査して、赫月の居場所をつきとめよう!」
「おー!」
「ピーカチュー!」
「それじゃあ夜まで待機だ!」
テントで色々話すヨーコ。ロトムスマホのデータをマシンに同期したり昼寝したり。果たして日が暮れ、霧が出てきた。
「あんま見えん……」
「ピカピ……」
テントから出て囁き合うヨーコとぴっかりさん。
「そろそろ頃合いかな。調査よろしくね」
「はい」
抜き足差し足で歩くヨーコ。ぴっかりさんは肩の上。
と、ウソッキーがいたのでスマホロトムでパシャリ。
『まねポケモンのウソッキーだ! 霧の中だと木と間違えそう! イイねイイね! キミにお願いして大正解! 引き続き調査頑張ろう! 期待してるぞ助手クン!』
次々撮るヨーコ。ヤトウモリにイトマル、ヒトモシ、ホシガリス、イシツブテ、ヨマワル、ホーホー、シビシラス、バルビード。調査完了!
テントに戻るヨーコ達。
「キミが撮ってくれた写真とワタシの写真をあわせると……」
カメラを確認するサザレ。
「霧の森のポケモン全員の写真を撮影できたね!」
「わぁ!」
「やった! やったったー! 本当に感謝だよー!」
「ぐふふーん!」
「チャアー!」
ガーディとぴっかりさんもハイタッチ。
「それじゃさっそく、ポケモン探しマシーンにデータ送信、と……」
カメラをいじるサザレ。
「データの反映? までちょっと時間がかかりそう」
サザレ、ヨーコを見て、
「そういえば、助手クンが撮った写真、どれもすっごくイイね!」
「え、あ、ありがとうございます」
サザレ、何か考えている風に、
「……助手クンは、撮るとき何を考えてるのかな?」
「え? うーん……」
ヨーコ、少し考え、
「なんとなく、ですかねえ。目についたポケモンひたすらに撮った、みたあな」
サザレ、目を見開き、
「なんとなく……、天性の才能、感覚で世界を切り取ってるんだな」
「いや、そがなおおげさな……」
サザレ、首をふり背を向け、
「……ワタシ、スランプでさ」
「え」
「あ、スランプって、何やってもうまくいかないってことね」
カメラを見つめながら、
「これでも、小さいころは天才カメラ少女って言われるくらい、まわりからほめられてたんだよ」
黙って聞くヨーコ。夜空を見上げるサザレ。
「でも、ここ数年は何を撮ってもしっくりこないし、賞もとれない、認められない。
──そんなのがずっとずーっと続いてたら、なんで写真撮ってんのかわかんなくなっちゃった」
「がふん……?」
心配げに鼻を鳴らすガーディ。静かに触れるぴっかりさん。
「そんなときに赫月の噂を聞いてさ、すごいポケモンを撮れれば、自分の中で何か変わるかもって、家、飛び出してきたんだ」
ああ、コルサさんと同じじゃ。思うヨーコ。そして切羽詰まってたから、ペパーにも似ていた。
でも今ふたりは。
「──きっと大丈夫です!」
「え?」
振り向くサザレ。
「うまく言えんけど、スランプとかつまづくことがあっても、でも今は笑って自分の道を進んどる人たちを、うちは知っとります! じゃけえ、サザレさんも……!」
サザレ、笑って
「あはは、反応下手かー? でも、ありがと。ごめんねー、辛気臭い話しちゃってさ」
「いえ、そがなことは……」
と、軽快な音が鳴る。テロリンテロリンテロリンロン!
「お?」
「あ、データ反映終わったみたい」
カメラを確認するサザレ。
「だけど……、あれ……?」
「なんかあったんですか?」
思わず身構えるヨーコ。
「──この音、うちのお風呂が沸いたときの音と同じだ……」
「え」
拍子抜けするヨーコ。笑うサザレ。
「あははは! なんでさー!? 使い回してるのかなー!?」
サザレが少し明るくなったことにホッとするヨーコ。
「ええーっとね……、霧の森でワタシたちが集めたデータ以外の反応はひとつ。多分、これが赫月の反応。やっと居場所がわかったね」
生唾を飲むヨーコ&ぴっかりさん。
「……ふふ! キミと話してると、いい感じに肩の力も抜けてきた」
サザレ、ヨーコを見て、
「助手クンさえよければこのまま赫月に会いにいくけど、覚悟はできてるかい?」
「──もちろんです!」
「ピカチュ!」
うなずくヨーコ&ぴっかりさん。
「よしきた! それじゃあ出発だ!」
準備しながら、
「いよいよ赫月に会える。あいつを……、撮れるんだ」
意気込むサザレ。
「サザレさんきあいだめしとりますねえ」
「もしものときは助手クン、ボディーガードまかせたぞ」
「はい!」
「がっふがっふ!」
僕も! と鳴くガーディ。
「もちろん、キミもね」
うなずくサザレ。
「それじゃあ、行こうか」
「はい」「ピカ」
*
森の中を、足元に気を付けながら進む一行。
「未確認のポケモン反応は、このあたりから出てたはず……」
ガーディが静かに鳴いて空気の匂いを嗅ぐ。ぴっかりさんもそれにならう。
「……静かだね」
「ええ、気を付けて」
「了解」
やたらとしーん、としている森。さっきまでの賑わいはどこへやら。
と、前方から足音。
ドスン……、ドスン……! と地響きのような。
「足音? 大きい……」
前方を睨むサザレ。わっぷるさんのボールを手に取るヨーコ。
ガサガサ……! 草を分ける音。
そしてそれは、現れた。
「ワギイイイ」
「あれが……!」
息を飲むヨーコ。
「額の赤い月!
──こいつが赫月! 本当に……いた! 本当に……会っちゃった!!」
興奮気味に囁くサザレ。
「ギイ?」
こちらを見る赫月。
「ぐふうん?」
身構えるガーディ。
「そ、そうだ、カメラ」
慌ててカメラを構えるサザレ。
「いい子だから、おとなしくしててね……」
シャッターを切るサザレ。しかし目映い光が。
「う」
思わず目をしばたたくヨーコ。
「ギワッ!?」
驚く赫月。
「ご、ごめん! フラッシュ焚いちゃっ……」
「ワギヤアアアアア!!!!」
吠える赫月。怒っている。
「ガ、ガーディ、いける!?」
「ふぬんす……」
怖じ気づくガーディ。
「あっ、ダメそうだな! 助手クンはどう!?」
「まかせてつかあさい! こっちじゃ赫月さん!」
ヨーコ構える! ぴっかりさんはサザレのところへ!
「ごめん! 戦闘はまかせたよ!」
少し離れるサザレたち。
「お願いわっぷるさん!」
わっぷるさん登場!
「ワギアアア!!!!」
臨戦態勢に入る赫月! さっそくアクアステップ! 効果抜群だがまだまだ元気な赫月。
「この臨場感、すごい、すごい!! そのまま続けて続けて……!」
シャッターを夢中で切るサザレ。
額から放つブラッドムーンくらって息が上がるわっぷるさん。しかしアクアステップ急所に当てる! が、だいちのちからに倒れる。
ぴっかりさん戦闘に参加。アイアンテールで防御さげるも、効果抜群のだいちのちからが急所に当たりワンパン。まんじゅう出す。
めいそうで特攻と特防を上げる赫月。
メガホーンかますもだいちのちから! 耐えるまんじゅう。メガホーン再び! ようやく疲れを見せる赫月。
「まだ違う顔見せてくるか! イイね、撮りごたえありすぎだよ」
しかしだいちのちからをくらい、倒れるまんじゅう。次はヒナじろう。ルミナコリジョンで特防がっくり下げる。しかしブラッドムーンもろにくらう! ギリギリで耐えるヒナじろう。 ルミナコリジョンくらわすもきりさくをくらい倒れる。
ポンさんを出すヨーコ!
「面影宿して、ポンさん!」
テラスタル! ツタこんぼうでとどめ! 完全に弱る赫月! ヨーコを見る目は、ヨーコを認める光があった。
「赫月が弱ってるぞ! 捕獲チャンスだ助手クン!」
ヨーコ、うなずきモンスターボールを投げる!
ボールに入る赫月!
「っし!」
小さくガッツポーズなヨーコ。
「ワギ」
ヨーコの強さを認めたらしく、ボールの中で小さくうなずく赫月。
「よしよし、これからよろしゅうねアカツキさん」
ボールをしまうヨーコ。
「助手クン、大丈夫かい!?」
駆け寄ってくるサザレとガーディ。
「ええ、何とか。けど相棒たちがここまでやられるとは、アカツキさんやっぱし強いです」
「いやいや、まさかあの赫月と互角にやりあって本当に捕まえちゃうとはね!」
静かに感動するサザレ。
「すごかった……。本当にすごかった!」
「ぐぬんす!」
ガーディもうなずく。しかし、
「キミは……、もうちょっと強気にいかないとだぞ」
とサザレに言われふて寝。
「ぬふふぅん……」
「ふう。どうしよう、まだドキドキしてる。キミが赫月と戦ってるとこ、夢中で撮っちゃったよ」
カメラを手にするサザレ。
「助手クンのポケモン休ませたいし、いったん拠点に戻ろうか」
テントで休んで夜明け前、テント片付けを手伝うヨーコ。サザレつぶやく。
「テントしまうときって、なんかちょっとさみしい」
しかしにっこり笑って振り向く。
「助手クン、本当にお疲れさま。キミのおかげで撮れたもの、ちゃんと形にしたい……」
ヨーコをまっすぐ見るサザレ。
「こんな感覚、本当に……、ほんっとーにひさしぶり。思い立ったが吉日だ! 写真、現像したいから急いで村に戻らなくちゃ!」
サザレ、イキイキしている。
「サザレ家の家訓は『時間は貴重』! タイム・イズ・マネーってね! スイリョクタウンでまた会おう!」
「ぐふーん!」
駆け出していくふたり。それを見送り、森から離れたところでキャンプするヨーコ。両親に連絡を入れて昼までぐっすり眠る。
*
ぴっかりさんと共にスイリョクタウンに戻ると、いつもの場所にサザレがいた。
「サザレさん」
「ピカピカ」
「お待ちしてたよ助手クン、ピカチュウ! 赫月の写真、無事現像できたよ!」
「どうでした?」
「ピカ?」
サザレ、後ろを向き、
「いやー、いざ写真で見てみると赫月はブレてるし体は見切れてるしピントもあってないし、とても助手クン達にお見せできるものではなかったよ」
「ありゃあ……」
眉を下げるヨーコとぴっかりさん。
「……でもさ」
振り向くサザレ。晴れやかな顔。
「今まで撮ってきた中で、一番のお気に入りになっちゃった」
空を見上げながらしみじみと、
「ワタシ、考えてすぎてたのかも。カメラのセオリーとか、審査員の受けがいいかとか、自分が何を撮りたいのかとか……」
再びにっこり。
「被写体をがむしゃらに切り取れば、それだけで写真になっちゃうのにね!」
ヨーコもホッとする。
「助手クン。大事なこと、キミが教えてくれたんだ。……ありがとね」
「いえ、そんな。サザレさんの手助けしたかっただけじゃし」
ぴっかりさんニヨニヨ。
「──あ! そういえば助手クンの名前! ずーっと聞いてなかったよ!」
気づくサザレ。
「ごめんねー。今さらだけど、名前教えてくれないかな?」
「ヨーコです! 北條陽子! パルデアのグレープアカデミー1年生です! こっちは相棒のぴっかりさんです!」
「ピッカチュウ!」
「ヨーコクン、ぴっかりさん! 元気なキミたちにぴったりだ!」
サザレ、カメラを手に、
「あらためまして、ワタシはサザレ……。──カメラが大好きなカメラマンです!」
カメラを構えてにっ、と笑う。
「これからは、好きなものを好きって胸張って言えるよ」
ハッ、として、
「そうだ! お礼忘れてた! お世話になったお礼に、報酬は奮発しちゃいまーす!」
ヨーコ、こだわりスカーフもらう。
「それと……、じつはワタシのガーディって戦い好きな弟クンがいるんだけど、ワタシよりキミたちといたほうが強く育ててくれそうだなって」
ガーディを託される。
「うーんと強く育ててあげてね」
「はい!」
「ピカピ!」
「……さてと! 目的も果たしたし、ワタシはそろそろ行くよ。さみしいけどお別れだ。
ガーディは2匹が対となってるポケモン! 大事に育ててくれたら、おたがいが離れてたってまた偶然会えちゃうかもだ!」
「ほうですね。また会えます! きっと!」
「ピッカチュウ!」
「うん! 楽しみ! 期待してるぞー!
──それじゃあしばしの別れだ。また会おう、ヨーコクン!」
「ぐっふーん!」
晴れやかに去っていくサザレとガーディ。見送るヨーコとぴっかりさん。
ガーディとアカツキさんを出して挨拶。両親が呼んでるので、そちらへ歩いていく。
冒険を話しながら一緒に朝食をとる。ここで赫月をアカツキさん、ガーディをツノじろうと名付ける。
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