(リクエスト)【ゴスレ二次創作】On a snowy day, together.
冬は、嫌いだった。
特に、大雪の振る日は。
昨日から降り始めた雪が、家の裏庭に積もっている。
フローは、夫から渡されたホットワイン(ノンアルコールである)のマグカップを手に、雪景色を眺めていた。
「はー、つもったなあ」
隣にいた夫──グレイ、本名ジャック──が、しみじみ呟いてホットワインを啜る。
「そうですねえ」
フローも笑って一口飲んだ。
家と繋がっているドアの小さな階段にふたりして座り、雪に降られながら、しんと静まり返った裏庭をグレイと共にフローは眺めている。雪遊びに興じる子供達の声が遠くから聞こえるだけの、静謐な世界だ。
前世から、いや今世でも記憶を思い出してから、フローは冬が来るたび、凍りついてそのままバラバラに砕けてしまう心地がしていた。
しかしグレイと再会し結婚してからは、そんなものは全く感じなくなった。それどころか、むしろ好きな方に傾きつつある。
理由はただひとつ。どんなに仕事が忙しかろうと、こういう雪が降って凍えそうな日には、いつもグレイが側にいてくれるからだ。フローが仕事の時には必ず迎えに来てくれるし、一緒に温かい夕食を作ってくれたり、お茶やコーヒーを淹れてくれる。
「さて、飲み終わったら雪だるまでも作るか?」
前世から好きな、あの悪者顔を向けてくるグレイに、フローはにっこりうなずいた。
「はい! 2つ作りましょう!」
「おー、張り切るなー」
からかうグレイに顔を赤らめつつ、フローはマグカップの中に目を移した。雪の結晶がひとつ、ホットワインの中に溶けて消えるところだった。
それを飲んでから、フローはグレイにそっと体を持たせかけた。
あの時は、世界でひとりぼっちになる、身を切られるような感覚だった。
でも今は、こうしてふたりでちゃんといる。寒くてもとても温かい。
クリミアでの日々と同じだわ。と、フローは笑った。