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season1 12話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
12.『言うのは恥だが役に立つ』
言語学にまつわるぴっかりさん回&先生回パート2。
言語学と美術の受講が始まり、さっそく授業を受けることにするヨーコ。
*
最初は美術から。美術室にて授業開始。
「美術担当のハッサクです。よろしくお願いしますですよ」
「お願いしまーす」
「そもそも美術とは! この中のほとんどの人が、卒業後その知識を忘れてしまう授業でしょう! 試験や就職で、美術の知識や美的感覚を問われることはありませんからね。
それでは、小生の授業はまったくの無駄なのでしょうか?」
ハッサク、少し間をおいて、
「……きっと違います。違うと思いたいですね。
あなたたち、考えてみてください。『美しい』『美しくない』、その違いは何だと思いますか?」
「えー、なんだろ」
「わかんなーい」
「色とか形とかー?」
みんながそれぞれ頭をひねる中、
「人それぞれ、かねえ?」
ヨーコ、つぶやくように発言。
「ふむ、なるほど……。ヨーコくんはそう思うのですね」
「あ、はい」
「いやなに、正解はありません。考えてもらうことが重要なのです」
ハッサク、みんなを見回しながら、
「例えば、道端に咲いた花をどうして美しいと感じるかを考える。空の青と海の青、その違い。
木々の色の移ろいに疑問を持ったり。ボウルタウンの風車の動き、カラフシティの水の冷たさ、考えることで、まわりに存在するありとあらゆることがらをより鮮明に、より深く感じることができます。
それはきっと勉強に疲れた時、仕事で大変な目にあった時……、あなたたちの背中を、そっとひと押ししてくれるかもしれませんよ」
(なるほどー……)
ヨーコ納得。
「……ちょっと難しい話なので、わからなくても大丈夫です。とにかく芸術とは! 人生になくてもいいものですが、あったほうがより楽しいもの! みなさんの生活に少しでも彩りを添えられたら喜ばしいです。次からはより実践的に美しさにふれていきましょう! おしまい!」
「ありがとうございましたー!」
*
授業後、ハッサクと話すヨーコ。
「ハッサク先生」
「おや、ヨーコくんではありませんか。どうでございましょう? 小生の授業は難しいですか?」
「ちょうどええです。うちも絵とか描きますし、色んなキレイなもん見たいし」
「それはよかったでございます」
ハッサク、うなずき、少し間を置いて、
「ヨーコくんは……、宝探しのひとつにジムを選んでいますでしょう。あなたはポケモン勝負がお好きなのですね?」
「はい! 色んな技見れるし、人もポケモンもすっごくキラキラしとりんさるし! あ、負けたらもちろん悔しいし、相棒達に申し訳なく思いますけど……」
「好きこそ物の上手なれ。だからお強いのでしょう。突然変なことを聞いてすみませんですね。最近、強さについて考えてることが多くございまして……。いや本当、強さとは……、何なのでしょうね……」
遠くを見るようなハッサク。首をかしげるヨーコ。
ハッサク、ヨーコに視線を戻し礼を言う。
「ヨーコくん、ご意見ありがとうございました」
「いえいえ」
*
(強い人でも、ああして考えること、あるんじゃねえ)
考えながら、1-Aの教室に入るヨーコ。次の授業は言語学。
担当のセイジ先生はノリノリ。
「親愛なる生徒のみんな! 体はお元気ですか? マイネーム イズ セイジ! マイ ネームイズ セイジだよ! マジメにレッスン受けてくれて、アリガトサンキューなのさ!」
マシンガントークなセイジ先生。
「うら若き少年少女たちと一緒に青春できてハッピーだな! セイジは誠実の『セイジ』だから、これからなかよしプリーズ! ハハハ! 今のは言語ジョーク!」
(元気な先生じゃ)
思わず(汗)なヨーコ。
「そうそう、ワシのレッスンは言語学! 言葉についてのお勉強なんだよな! おはよう! こんにちは! なーんて挨拶の言葉もところ変わればグッモーニン! ハロー! になるんだね!
いくつかの言葉を合体させた、おはこんハロちゃおって挨拶する動画配信者もいるんだって! 世界にはいっぱいの国があって、国ごとにいっぱいの言葉があります!」
セイジ先生、電子黒板に触れる。さまざまな言葉の綴りが並ぶ。
「グラシアス! メルシー! シェイシェイ! ダンケシェーン! サンキュー! これ全部同じ意味! わかるかな?」
黒板の文字を読み上げていくセイジ先生。
ヨーコ、ちょっと考えて、
「……ありがとう?」
「オヌシの名前は、ヨーコ……! すごいねー!超ベリベリ大正解さ! 発言しようとする姿勢もイイネ!」
「えへへ……」
照れるヨーコ。みんな拍手。
「グラシアス! メルシー! シェイシェイ! これ全部ありがとうって言葉! サンキューは大ヒントだったわな! 言葉の長さも響きも、全然違ってウケるよね!」
セイジ先生、一旦言葉を切り、
「突然ですが、セイジのワンポイントアドバイス! 海外に行った時は、カタコトでも現地の言葉を思いきってしゃべってみよう!
気持ちを伝えようとがんばる姿は、きっと相手もハッピーにするよ! ぶっちゃけその国の言葉は、こんにちは、おいしい、ありがとう、3つ言えればなんとかなるし! あとはミブリムテブリム……。身振り手振りで乗りきるのだ!」
みんな、じーんと感動。チャイムが鳴る。
「おっとチャイムが来やがったね! オヌシたちとはしばしの別れ! それじゃあアディオス、バイバイ! シーユーネクストタイム!」
軽やかに去っていくセイジ先生。
授業について話すヨーコとネモ達。
「言葉って面白いんなね」
「うんうん! 海外の人との勝負に役立つしね!」
「ネモちゃんは言葉じゃなくて勝負で心を通じ合わせそうだけどね……」
と、ネモ思い出したように、
「あ、勝負といえば、セイジ先生、ヨーコと同じでピカチュウ持ってるんだよね。でも勝負はしないみたいなんだー」
「まぁ全部のピカチュウが勝負するとは限らないし……」
別の子、苦笑い。ヨーコ考え込む。
「ピカチュウ……」
同時に、今日の生物学の授業でなつき進化について聞いたことを思い出す。
『ポケモンの情報を集めるのには、捕獲やタマゴを孵したりする他にも、手持ちのポケモンを進化させるという方法がありまあす。後半の授業で詳しく触れますが、進化の方法にも色々あって、トレーナーや自分の仲間に懐くことで進化するポケモンもいます~』
(ぴっかりさん、なかなかピカチュウに進化せんかったけど、理由あるんかな。いやでも進化するタイミングなんてピチューさんで違うかもじゃし。病気、はありゃせんよね……?)
ヨーコ、セイジ先生にヒントもらうべく職員室へ。
「失礼しまーす。セイジ先生」
「オー! オヌシ ヨーコ! 職員室まで遠路はるばる! ワシに会いに来てくれた?」
「会いに来ました!」
「HAHAHA! ついにここまで生徒に慕われちゃったー!? セイジ超ベリベリうれしいね!」
ニコニコなセイジ先生に、ヨーコちょっと困惑。
「はあ」
「授業でも言ったけど、コミュニケーション大事だもん! 授業でわからないあったとき、学校でこまったことあったとき、何でもかんでもセイジにテルミー! フゥー!
さあ親愛なるヨーコ! セイジとレッツコミュニケーション!」
「ええとですね、セイジ先生、ピカチュウさん持ってるって聞いたんですけど」
少し戸惑いながらも聞くヨーコ。うなずくセイジ先生。
「うんうん、持ってるよー!」
「ピチューさんから育てたんですかね?」
「そうだよ! ここで先生始める前に野生で出会ってね、ベリベリプリティーでいっつもコミュニケーションしてたら心開いてくれて進化! 今ではお仕事サポートしてくれてます!」
「なるほど」
セイジ先生、ヨーコの顔を見て、
「そのフェイス、ピカチュウについて知りたいことあるみたいだね?」
「あ、実は、うちの相棒もピカチュウなんですけど、なかなかピチューからピカチュウに進化せんかったんです。じゃけえちょっと気になって」
「ふむふむ。コミュニケーションしてた?」
「はい。コサジではほとんど連れ歩きでした。でも勝負じゃ負けたり活躍させてやれんかったりしたけ、それでちょっと嫌いになってたりして、ですかね……?」
「うーん、というよりは……」
ちょっと考え込むセイジ先生。
「というよりは?」
聞き返すヨーコ。しかしセイジ先生は答えず、
「──突然だけど、セイジから超ヒント&アドバイス! おいしいとか知りたいとか、相手の事が大好きとか、そんなプラスな気持ちでも、恥ずかしかったりプライドがあったり、あるいは悲しいことあって、なかなか顔や言葉に出せない人もいます! ポケモンも同じだね!」
「……あ!」
何かに気づくヨーコ。
「もちろん、ちゃんと言葉にするのが一番いいんだけどもな! お互いビーケアフル! 気を付けていこう!」
「ありがとうございます! ちょっとジニア先生に確認してきます!」
「オーケー! シーユーネクストタイム!」
ヨーコ、急いで生物室へ。ジニア先生がいた。
「ジニア先生!」
「ヨーコさん、どうしました?」
「あの、なついて進化するポケモンで、相手が大好きっていう気持ちに素直になれんで進化するんが遅うなっちゃう子もおるんですか?」
ギクッ、といった感じに震えるぴっかりさんのボール。
「ええ。それはもちろん。ポケモンにも色んな性格の子がいますから。特にいじっぱりな性格の子に時折見られる特徴なんです」
と、ぴっかりさんが出てくる。バレたからにはしょうがない、というツンとした顔。
わっぷるさんとまんじゅうも出てきて、「あれれ~?」みたいな顔でぴっかりさんを見る。
「ぴっかりさん」
「あはは、ぴっかりさんはそうみたいですね」
笑うジニア先生。ぴっかりさん赤面。
「あと、これは性格関係なかったりしますけど、トレーナーや家族に甘えたい、肩や頭に乗っていたい、という理由から、ある程度強くなっても進化パワーを自分で抑える子もいるんですよ~」
ギクッ! 肩を震わせるぴっかりさん。
「……ぴっかりさんも、ほうじゃったんね」
「ピーカ!」
そうよ悪い!? みたいな感じで振り向くぴっかりさん。わっぷるさん&まんじゅう、クスクス。
「ううん、嬉しい。ありがとうぴっかりさん。これからもよろしゅうね」
「ピーカチュウ!」
手を差し出すヨーコ。どや顔で手を握るぴっかりさん。
わっぷるさんとまんじゅうも「ぼくらも!」みたいな感じで鳴く。
「うん! わっぷるさんとまんじゅうもね!」
ヨーコ、ふたりに笑いかけてから、
「ジニア先生、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。素敵なものを見せてもらってありがとうございますー。
ヨーコさん達なら、色んなところにいって色んなポケモンに出会えそうですねえ。先生も応援してますよ!」
その後、寮の部屋ですずにぴっかりさんの進化について電話する。笑ってくれるすず。
照れ隠しに鳴くぴっかりさんに、やっぱりニヤニヤするわっぷるさんとまんじゅうなのだった。