season4 4話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
4.『片割れ』
しばらく進み、ふとネモが聞く。
「ミライドンって、タイムマシンで今の時代に来てからは……、しばらく博士ともう1匹とエリアゼロで暮らしてたんだよね?」
「そういう話、だったはず」
「うん」
うなずくボタンとヨーコ。
「だったらここって、ミライドンの第二の故郷なんだよね!」
「言われてみれば……」
「まあ、なじみはあるんでない?」
「そっか! じゃあ里帰りじゃん! のんびりできるね!」
呑気なネモに、ペパー、
「……にしては、ビビり散らかしてたけどな。今もボールの中から出てくる気配ないしよ」
「……それ、やっぱり気になるなねえ?」
ヨーコも首をかしげる。ぴっかりさんも同様。
ネモは相も変わらず呑気に、
「あれ? 高いところだから怖かったんじゃなかったっけ?」
「あー、誰がそんなこと言ったんだっけか……?」
「「……」」
ジト目のボタン。じっと見るヨーコ。
と、ボタンがふうと息をつき、
「──ミライドンのあの反応って……、嫌な記憶があるんかと思った。嫌なことあった場所とか行動とか、思い出すだけで手が震える。
──うちがクラスで孤立してたときと一緒……。学校のこと考えたら、あんなふうに引きこもりたくなったし……」
「ボタン……」
目を伏せるネモ。ヨーコも、
「ほうよね。……確かにそう」
「ヨーコ?」
振り向くネモ。ぴっかりさんに触れながら話し出すヨーコ。
「うちもクスノキシティでお父ちゃんとお母ちゃん亡くして……、お母さん達に上手く話せんようなって、学校にも行けんでポケモンに触れんようなって……。今はもう大丈夫じゃけど」
「そっか……」
優しくうなずくネモ。ややあって、ペパーが口を開く。
「──マフィティフと同じで、エリアゼロで何かに傷つけられたとか?」
「わかんないけど……、戦うフォルムにもならないんでしょ? 可能性、あると思う……」
うなずくボタン。
「それが本当ならかわいそう……。どうにかして元気になってもらいたい!」
「ネモさん……」
「ピカ……」
ネモの言葉に感動するヨーコとぴっかりさん。しかし、
「……ミライドンと戦いたいからとか、そういう不純な目的じゃないから!」
「えー……」
「ピカー……」
「……あちゃー、自分て言っちゃったか」
(汗)なヨーコとぴっかりさん。頭を抱えるボタン。妙に感心するペパー。
「ネモさ、オマエ、逆にすげえよ……」
そしてさらに奥へ進む。
上からの光が届くか届かないかあたりに、結晶に埋もれた建物が。
「あれじゃ!」
「うん!」
第4観測ユニットだった。中に入るヨーコ達。
「え……」
呆然とするヨーコ。ぴっかりさんは声も出ない。
「何これー! ボロッボロ!」
叫ぶネモ。中は何かが暴れたような惨状。
「なんかが暴れたみたいな?」
「暴れたって、何が……?」
ボタンとペパーが疑問を口にすると、
『ハロー、子供たちよ』
フトゥーの声が響く。
「うわ、博士か。……ビックリした」
胸を撫で下ろすボタン。
『すまない』
「ここって、なんで壊れてるんですかー!?」
元気に聞くネモ。
『それは、すまない。ハロー、子供たちよ』
「え?」
「ピカ?」
「……あ?」
一瞬身震いするヨーコとぴっかりさん。気色ばむペパー。
『すすすままない、すまななない、すますまない、すまないまま、すまままままままままままままま』
壊れたレコードのようになるフトゥー。
「え」
「え?」
ネモとボタンも動揺。
『ハロー子供たチハローハロー』
「なんだあ!?」
「やめて、キモいし!」
「な、なんが起こっとるん!?」
うろたえるボタンとペパー、ヨーコ。ぴっかりさん小さく唸っている。
『……ハロー、子供 コドモ コドドたちドド、タチ、コドモタチ』
一瞬の間。
『……再起動を開始しします』
音声と共に、ブツリと切れる。
みんなを落ち着かせるように、ネモが、
「……なんか、通信、変だったね?」
ペパー、しばらく黙り、
「……変……、ってか、アレって、もう……」
敢えて言うボタン。
「……わざとなら趣味悪すぎ。ちょっとビビった……」
「うん……」
うなずくヨーコ。重い沈黙が下りる。
「──ここの壊れ方……、凶暴なポケモンが争った……?」
ややあって考察するネモ。促すボタン。
「はやくロック解除して出よ」
「うん、やってくる」
ヨーコ、マシンの前へ。開かれたままのファイルが目に飛び込む。
『人が足りない。時間が足りない。あの人も子供が生まれて去った。新たな人間を招いても、すぐには信用できないし使い物にならない。
自分がもう1人いればいいのに』
『研究者を1人増やし効率が2倍に。僕と同じ知識と技術を持っている。少し合理的すぎるが申し分ない。
もう1匹、ミライドンの転移に成功、2号はとても気性が荒い』
疑念を振り払いポチるヨーコ。
『すべてのロックが解除されました』
の音声案内。
と、通信戻る。
『アー、アー、ハロー、ハロー、先ほどはスマナイ、通信が乱れてしまった』
「……んなわけ、あるかよ」
呻くペパー。振り向くネモ。
「ペパー?」
「──なんか……、違えじゃん」
押し黙っている様子のフトゥー。少しして、
『ロックはすべて解除された。エリアゼロ最深部、ゼロラボを目指してくれ』
外に出て歩き始めるみんな。
「さ、さっきの博士……、なんか、ヤバかったね」
言いにくそうに話すボタン。しかしネモはお目々キラキラ。
「冒険をワクワクさせる演出だったのかも!?」
「いやむしろホラーの方じゃ……」
「えー。ネモ、あれでワクワクしたん?」
ヨーコとボタンがツッコむと、
「わりと……、した!」
「げーっ! 医務室で感性診てもらいなよ」
わくわくネモにうげえ顔のボタン。ペパーが黙りこくってるのが気になるヨーコ。
「ペパーさん」
ペパー、返事代わりかポツポツと、
「──さっきの、アレってさ……」
しかし、ハッ、と口をつぐむ。
「いや、何でもねえや」
「ペパー?」
「な、なんか元気ないな?」
「うん……。大丈夫?」
「ピカ?」
ペパーを見るネモ、ボタン、ヨーコ、ぴっかりさん。
「ヨーコ、ピカチュウ……、何かあったら、頼む」
「う、うん……」
しばらく無言。途中、不思議な記号が描かれたプレートを見つけるも、写真撮るだけで通りすぎる。ひたすら降りるとでかい結晶。そこに紛れて扉のようなものが!
「ん?」
見上げると、結晶に覆われたでかい建物。
「もしかして……」
息を飲むヨーコ。ペパー叫ぶ。
「ここが……、エリアゼロの最深部か!?」
「到着ー! 財宝伝説確かめちゃう!?」
「あれって教科書に書いてるだけっしょ」
「それにこれ、お宝眠っとる雰囲気じゃない気がする……」
ウキウキなネモにボタンとヨーコが言うと、ヨーコのスマホに電話が。
「はい」
『ハロー、子供たち。よくぞたどり着いた』
フトゥーだった。
『キミたちの目の前にある建物こそがゼロラボだ』
「博士がいるところですね!」
ネモ答える。ボタン驚く。
「結晶体に取り込まれてる……!?」
『エリアゼロ内部の結晶体は不思議なエネルギーを持つ。生物の能力を変化させたり、機械の機能上昇にも効果がある。ポケモンがテラスタル化するのも同じエネルギーなのだ』
「つまり、この建物もテラスタルしてるってことか?」
ペパー首をかしげる。
「……ペパー、ちょっと黙ってて」
ずっと考え込んでたボタンが制止する。そして、
「──テラスタルオーブはエリアゼロの結晶体でできてるってこと……、すよね」
「「「「!」」」」
びっくりして振り向くヨーコ達。
『一部の者しか知らないがね』
あっさり答えるフトゥー。
『4つのロックを解除したなら、ゼロラボのゲートを開けるだろう。だが、ゲートを開けば、中にいる危険なポケモンたちが一気に外へと飛び出してしまう』
「大丈夫なんですかね、それ……」
「ピカピカ……」
ヨーコとぴっかりさん、心配になる。
『……キミたち4人なら、乗り越えられるはずだ。しっかりと準備してから、ゲートを開いてほしい』
通信切れる。
「どんな相手でも、ヨーコとぴっかりさんとわたしがいれば大丈夫!」
張り切るネモ。
「ははー、心強いっす」
棒読みのペパー。
そして道具をチェックしたりして、ヨーコ、パネルへ。押そうとした時、
「ちょっと待ったー!」
「ペパーさん? どしたん?」
ペパーから待ったがかかる。
「えー、何? いよいよってときに……」
不満げなネモ。
「ヤバいポケモンが出てくるなら、ミライドンもいたほうがいいんじゃねえか?」
「え……」
戸惑うヨーコ。ネモ、腕を組んで考えた後、
「──たしかに、入り江の洞穴でのミライドンなら心強い! あの戦いっぷり、見たい!」
「えー、でも……、エリアゼロ来てからライドするんも嫌がってるし……。ってか、バトルフォルムになれんのでしょ?」
「うん」
懸念するボタン。うなずくヨーコ。
「アイツは本当は強いんだ。秘伝スパイス食ってたし、ここぞってときは戦うだろ!」
力説するペパー。
「それに、エリアゼロはアイツがしばらく暮らしてた場所だし、ボールから出しとけば家族も見つけてくれるかもだぜ?」
「ペパーにしては一理あるよね!」
「ううーん、そうなんかなぁ……」
「ほうね……」
考え込むボタンとヨーコ。
「ヨーコ! ミライドン出しちゃえ!」
「え、でも……」
「大丈夫だって! ミライドンが戦えなくっても、私が守るから! ね!」
「ピッカ!」
こっちもやってやるわよ、なぴっかりさん。
「う、うん……」
ヨーコ、ミライドンを出す。
「アギャ……?」
小首をかしげるミライドン。
「おっしゃ、ヨーコ! ミライドンボールに続いてラボのゲートもオープンだ!」
ペパーに押され、スイッチを押すヨーコ。
ランプが回り、ゲートが開いていく。その様子を、上の方で何かが見ている。
何かが飛び上がり、ヨーコ達の背後に着地!
「グオオオオオオ!!!!!」
雄叫びをあげるそれは、もう一体のミライドンだった。
「え、これ……」
「家族が会いにきてくれた!?」
驚くヨーコとネモ。
「おお……、マジか!」
「ピカチュウ!」
感嘆するペパーとぴっかりさん。
しかし片方が近づくにつれ、ミライドンは後退り。
「グアアアアオ!!」
威嚇する片方。
「アギャ……」
弱々しく鳴くミライドン。
「いや、なんか変……?」
つぶやくボタン。身構えるヨーコとぴっかりさん。
片方が襲いかかろうとしたその時、ゲートが完全に開き、その中へ吸い込まれるように行く片方。こちらを一瞥し、そのまま入っていく。
ミライドン、すっかり弱気になり、ネモの手に頭を擦り付ける。
*
「ギャヌス……」
すっかり意気消沈のミライドン。
「え? なんか……」
首をかしげるネモ。
「感動の再会? 意外とあっさりだったね?」
「いや、どう見ても! 違うでしょ!! バチバチカチコみ! 一歩手前! だったから!!」
「ほうよネモさん!」
「ビッガ!」
ボタンとヨーコとぴっかりさん、思わずツッコむ。
「え! そうだったの!?」
「気付かんかったん……」
「ビーカ……」
げんなりなヨーコ&ぴっかりさん。
「ミライドンもほら、おびえちゃってる……。仲間じゃないのかも?」
「アイツ、なーんかヤな感じだったな……」
「うちも思う。あれ、見下しとる目じゃった」
ペパーにうなずくヨーコ。ミライドンに声をかけるペパー。
「えっと……、おい! 気にしなくていいぞ!
オマエがバトルフォルムになれれば、あんなヤツ……!」
「ピカチュ!」
ぴっかりさんもかけよりポンポンする。
「キュウス……」
しかしうつむくミライドン。
「あ、すまん……」
「博士が言ってた危険なポケモンって、もう一匹のミライドンのこと?」
考え込むボタンに、ネモ、
「えーっと? 博士、中から出てくるって言ってなかった?」
「ハッ、そういえば……!」
「中から……」
ヨーコとペパーが振り向いたとたん、果たしてゲートからポケモン達が押し寄せてきた!
「ヘナーン!!」
「キャシャンキャシャン!!」
「ベベベベベ!!」
「うおおおおー!?」
「なんか出たー!!」
「ピカピー!!」
叫ぶペパー、ヨーコ、ぴっかりさん。気付けばすっかり囲まれてしまった。
「デ、デ、デ!」
「かこまれちゃった!」
普通に驚くネモ。
「ほわわわわ!」
「あきらかに……、友好的じゃねえよな」
うめくペパー。
「キシャキシャー!」
「いや、数多すぎ! 全部未来のポケモン!?」
叫ぶボタン。
「これ、けっこうマジでヤバイちゃんなんじゃ……」
「キュウス……」
相変わらず元気ないミライドン。
「ミライドンさん……」
「コイツもこんな感じだし……」
「っ、さてどうすっかね……」
じりじり構えるヨーコ。言い終わらない内にネモはりきる!
「わたしの出番! 待ってました!」
「ネモさん!?」
「ヨーコ! ぴっかりさん! 力を合わせて戦っちゃうよ!」
「う、うん!」
うなずくヨーコ。相手はテツノワダチ!
ルガルガン、さっそくドリルライナー! 効果抜群だが倒れない! アイアンヘッドをくらわそうとするも、ぴっかりさんあなをほるでよける。
その隙にドリルライナーで削るルガルガン! ぴっかりさん、あなをほるでとどめ!
「いいね強いねー! 手ごたえある!」
「あはは……」
楽しそうなネモ。苦笑するヨーコ。むくれるボタン。
「たのもしいけど、なんかムカつく~!」
と、ボタンの背後からテツノカイナがせまる!
「ンビービー!」
「ウニューム!」
「わっわっ! 大変大変! ヨーコ、ぴっかりさん、手伝って!」
「よしきた!」
ハリテヤマに似たテツノカイナと対峙! ぴっかりさん&ブラッキー。
エレキボールを出してみるも、効果いまひとつ。ブラッキーのサイコキネシスに効果抜群。ワイルドボルトをくらうぴっかりさん! 今一つだがかなり強力。
「でんき・かくとうかね……、なら……!」
ブラッキー、つぶらなひとみで攻撃下げる。ぴっかりさん、あなをほるでかくれる。
テツノカイナがブラッキーにちきゅうなげ! その隙にあなをほる! 効果抜群。
「やっぱし!」
しかし倒れない。ブラッキー再びちきゅうなげをくらう。でも立ち上がりサイコキネシスでとどめ!
「や、やった……!」
「やべー、未来やべー」
と、ミライドン勇気をふりしぼって吠える!
「アギャアアアアアス!!」
逃げるパラドックス達。
「あ、逃げてく!」
「おー?」
目を丸くするネモとボタン。
「すごい、ありがとうミライドンさん!」
「ピーカチュウ!」
ほめるヨーコ&ぴっかりさん。
「でもあの子たちが外に出たら大変! ボタン、追いかけよっ!」
「なんでうち!?」
「待てー! ハァ、ハァ……!」
ボタンには答えず、息荒く追いかけるネモ!
「ちょっ待っ! ……なんか興奮してない!?」
ボタン追う!
「気いつけてねー!」
「ピカピカー!」
「アイツら、大丈夫かよ……」
ペパー、眉をひそめ、
「ほとんど逃げてったから、残りはふたりでがんばるか!」
「うん!」
「ヨーコ! 強そうなヤツ、いくぜ!」
対テツノコウベ。ぴっかりさん&マフィティフ。
マフィティフの特性:いかくで攻撃的下がるも、構わずぴっかりさんを噛み砕くテツノコウベ。だがかみなりパンチで大ダメージをくらわせ、マフィティフがじゃれつくでとどめ!
「っし!」
「ヌシ戦でつちかった友情パワーで息ピッタリだな!」
しかしまだ怖がっているミライドン。
「ミライドンさん……」
「さっきのもう1匹のこと、気にしてビビってんのか……?」
「ピカピ……」
見上げるぴっかりさん。
「……よし!」
ペパー意気込み、マフィティフと共にテツノカイナの群れと対峙!
「あとは楽勝そうなのばかりだ! ここはオレたちにまかせろ!」
「バウフ!」
おうよと答えるマフィティフ。
「ペパーさん!」
「だからヨーコ! ソイツ連れて先行け!」
「──わかった! ありがとう! 気いつけてね!」
ペパーの覚悟を汲み取りうなずくヨーコ。
「へへへ、信じてくれて嬉しいぜ! マフィティフだってやる気だぞ!」
「バウ!! ワウ!!」
思い切り吠えるマフィティフ!
「ミライドン!」
呼びかけるペパー。ミライドン振り向く。
ペパー、前を向いたまま、
「オマエのせいで、ガキのころは最悪だった! だからって、オマエが今ちぢこまってても、なーんもうれしくねえ!
オマエにはすげえ力がある! オレたちもついてる! だから……、あんなヤツに負けんな!
──勇気を出して、立ち向かってこい!!」
「行こう! ミライドンさん!」
「ピカピカ!」
ぴっかりさん、ミライドンの上に乗る。
「行け! ヨーコ! あとから追いかけるからよ!」
「うん!」
みんなでラボの中へ!