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ジャズ鑑賞と全脳活性化

脳内神経細胞は多数のニューロンを繋ぐ膨大なルートである。発火点シナプス結合の中から特定の結合が選ばれて働いている。ニューロン間での情報の受け渡しの際、脳波を発生する。
1929年、ドイツ・精神科医ハンス・ベルガー「ヒトの脳波について」論文発表。現代臨床脳波学の基礎となっている。
1~3Hz(ヘルツ)δデルタ波、4~7Hz、θシータ波、8~13Hz、αアルファ波、14~30Hz、βベーター波、30Hz~、γガンマ波。
デルタ波は深い睡眠時のノンレム睡眠で知られる。
ガンマ波はアルツハイマー認知症で確認されています。
シータ波は雑念と関わる神経DMN、デフォルトネットワーク(Default Mode Network)が働き、ぼんやりした状態の脳が行っている神経活動で、雑念と関わる神経ネットワークの働きを抑制するという研究結果がある。デフォルトモードネットワーク、DMNの働きは「危機への備え」や「創造性」と「情報の整理」があり、うつ病や不安神経症や雑念はDMNの「過活動状態」が根底にあり、脳内処理できてない状態といえる。自動車のアイドリングに例えられ、ON・OFFの切り替えが脳内ホルモン「セロトニン」の働きである。セロトニン神経核は脳幹部縫線核である。中脳から脳幹の内側部に分布する細胞集団で免疫組織学的手法によりセロトニン細胞の分布と重なる。シナプス間隙のセロトニンが増加するとシナプス前膜のネガティブフィードバック(オートセレプター)が働き、セロトニンの働きを抑制する。情動や認知機能にも関与する。(関西医科大学医学部中村加枝教授)
セロトニンの分布抑制因子はストレスである。セロトニンが過剰に働くと、遊離された神経伝達物質の一部は神経前終末へ回収される。オートセレプターを適応性に保つにはジャズ鑑賞等、シータ波との同期、感応や、叉、マインドフルネスの継続が求められ、オートセレプターの数が適応性に減少し、セロトニン神経が賦活化されると考えられる。
東邦大学医学部名誉教授有田秀穂氏は道元の「只管打坐」を例に、マインドフルネスの効果「気づき」は数週間から数ヶ月の実践を要するという。「セロトニン欠乏脳(NHK出版)」
座禅ではないが、ジャズ鑑賞も内観に相応しい環境として「ジャズ喫茶」(会話厳禁店)を勧めたい。或いは、有志によるジャズレコード(CD)鑑賞会への定期的参加など勧めたい。 
 ジャズは1900年初頭アメリカ・ルイジアナ州、南東部ニューオーリンズという港町が発祥地である。
ニューオーリンズはヨーロッパ各国の植民地争いの場所であり、様々な人種が混ざり合う人種のるつぼであり、黒人特有のリズム・ブルースと西洋音楽(クラッシック)が融合することでジャズが生まれた。
 クラッシック音楽は、中世5~14世紀に遡り、口伝えによるものを記憶して歌い、演奏が始まり、ルネサンス期(15~16世紀)になるとピアノの原型である「チェンバロ」や「オルガン」が使用されるようになる。ヨーロッパでは教会音楽や宮廷音楽が源流である。
クラッシックはバッハが活躍した「バロック音楽」からといえ、約400年の歴史である。
方や、ジャズは新大陸アメリカに100年前にコンボという小編成、現代ジャズの原型が生まれる。1940年代後半あたりからバドパウェル等ピアノトリオ誕生。
 クラッシックはメロディ重視でできており、リズムの変化も楽譜の演奏記号と指揮者の指示によって創られる。
一方、ジャズはコード進行の流れから、無限にパーソネルの共同により即興で紡いでいく。ジャズは予期しない状況に直面しても効果的な反応を優先させ、パフォーマンスを中断させない。ジャズ演奏家は「何を表現」するかを念頭において演奏する。他のプレイヤーの演奏や場の空気に応え、演奏内容を変化させ、柔軟に神経を集中させる。ジャズに「名曲」はなく「名演奏」ありきの所以である。テーマ(メロディ)は素材に過ぎない。
ジャズは、奴隷として、更には公民権運動の渦中、理不尽で不条理な状況の中、武満徹の言葉を待つまでもなく、「呻き」であり、「祈り」から生まれた。それを「ブルース衝動」という。
ブルースって、正反対の感情が同時に高まってくる感情。絶望的でありながら、同時に希望を感じさせるもの、淋しいくせに明るいもの。悲しいくせに、陽気なもの、俗っぽくてそして高貴なもの、それがブルースなんだ。
五木寛之「海を見ていたジョニー」より。
 ジョニーは横須賀のジャズクラブでピアノを弾き、セッションをしていた。万雷の拍手を浴びる。やがて、ベトナム戦争へ招集される。帰って来たジョニーはセッションをする。
「凄いぞ!いい音楽だ」
ジョニーはクラブを飛び出し、岸壁に座り項垂れる。
「人を何人も殺した自分に人を感動させる音楽は出来ない」
呟くと、自らの頭に銃口を当てる。
ジョニーは崩れ落ちた。
 記憶に辿ったあらすじで正確でないかもしれない。
五木寛之が言いたかったことは、苦悩し、葛藤していたことにより、人々を感動させるジャズができるというものだ。
情動を喚起させ、昇華したものがジャズ演奏だ。

譜面を度外視して即興演奏するジャズ演奏家ほど、脳内のフル活動はない。コード進行等「枠組み」の中インプロビゼーションで紡いでいく。「枠組み」という約束があり、デタラメでないので全脳を集中させる創造活動である。譜面がないのでメンバーの想定外の演奏もあり、ミスも刺激として創造に結びつける。
正に、私たちの日常とも通じる。思ったように事は運べず、苦渋を強いられる日々。

ブログに「真面目な人ほどジャズを聴け」というものだ。
新脳優位で旧脳を抑えつけストレスになると言うもので、ジャズを聴くことて旧脳を賦活化するというものだ。
しかし、私たち大脳1/3は新皮質である。新皮質と旧脳双方の活性化により誕生した芸術ジャズに触れることにより、大脳のバランスを取れ、自律神経も安定してくる。
「ジャズ療法」は医療ではなく、民間療法である。
メロディ・ハーモニー・リズム、音楽の三要素は宇宙のリズムである。ピタゴラス。
ジャズは苦悩の存在者から生まれた音楽である。
苦悩や悩乱にジャズは効果ある。
但し、妄想・幻覚・幻聴が強い場合や急性期の場合は医師の指示に従って下さい。
ジャズは、パーソネルとの会話で生まれた。オープンダイアローグでもある。一流の名盤と対座することはマインドフルネスにも通じる。
ジャズ演奏はブローするという。ピアノであれ、ウッドベース演奏であれ、「ブロー」=吹くという。言葉にならない情動表現である。
 ベース、チャーリーミンガスや往年のジャズピアニスト山下洋輔の立ち上がり、肘で叩き身体全体を使う演奏でも頷けることだう。

音楽の源流、言語と脳活動を考えたい。

 そもそも、アフリカや、アメリカ先住民、我が国、源郷縄文人たちの意思伝達は、太鼓や、鳴り物で伝達していた。或いは狼煙等視覚に訴えた。
 元来、音楽と言語、聴覚と視覚は深い関係を持つ。
芸術そのものが基本的に多要素から成り、脳の多機能の駆使によってもたらされる。
知覚性言語野(受動性─与えられた言語を理解する)
この言語領野は視覚性連合野で発達。
音楽に関する領域は、脳内で言語機能領域と連合され結びついている。我々の大脳には言葉を理解する皮質域が後連合野に、言葉を伝える皮質域が前頭連合野にある。「響き」は音楽と言語が結びついて成立する。
聴覚野に伝えられた情報は大脳皮質側頭葉にある聴覚連合野に送られ個々の音の情報が統合的に処理される。
「音楽を聴く」には聴覚野のニューロンの興奮が大脳皮質の他の領野に伝えられ、情報処理されなければならない。
視・聴覚の認知情報を周囲の状況に応じて処理したのちに運動連合野に伝達する。
感覚野→後連合→高次運動野→第一次運動野。の流れ。
演奏家は音の順序づけをイメージする回路(連想→即興演奏→記憶)を前頭前野により活性化して、側頭葉に貯蔵されている長期記憶を想起し、内的「響き」と照合しながら、演奏を行う。
特にジャズ演奏家は音が外的空間に鳴り響いてないときも、音のイメージを大脳皮質連合野内に連続的に想起し、何らかの意味をもった形象=作品へとまとめ上げる能力を持っている。
演奏表現は「広義の運動野」の活動によってなされ、脳全体としてバランスを保った調和した機能である。
能動的ロゴスの座である運動性言語野を含む前頭連合野と、受動的ロゴスの座である感覚性言語野は結びついており、各ロゴス野の近傍の前頭葉下部と側頭葉前方部は、それぞれパトスの座である大脳辺縁系(海馬・扁桃体)と結びついて、前頭連合野と辺縁系とは関連し前頭前野で情報処理した後に、運動系を活性化させている。
バラードのように簡潔な響きの中に多層的意味が内在しているほど、新皮質レベルの活動に大脳辺縁系に属する古い皮質(海馬、扁桃体)及び脳間(視床下部)や中脳(アドレナリン・ドーパミンやセロトニン)を含めた皮質下の情動の機構働きに起因する。
聴覚連合野の機能に情動が生じることにより、高次の脳機能が発揮する。
聴受の場合は、音楽と呼ばれる総合的響きの全体が脳に働きかけて情動を呼び覚ます。
多数からなるニューロン群は皮質間に互いに結合されている。この神経回路を活性化させることにより、演奏や聴受により、機能的にもその結合が強化される。さらに、高次の反応形態をもったニューロン群に伝えられることにより統合されていく。これらの過程が後連合野内で行われる。
音楽を指して用いられる「形姿」「形態」(ゲシュタルト)は脳内の諸領野の働きが収斂されたところに浮かび上がる形態に他ならず。
情動の機能は高次の認識機構が基盤で根底にあったときに芸術や文学などの分野において、格段に高いレベルが発揮される。
川村光毅(慶應大学名誉教授・脳神経系科学、脳解剖学・精神科)ウェーブ上論文・論考を参照させて頂きました。
近赤外分光法測定で解明されたコヒーレンス(脳内同期)は仏教等で古くから根付いてきた「朱に交われば朱(あか)くなる」や「感応」を科学的に証明されたものである。
故に、私どもはジョンコルトレーン名盤鑑賞会を開催しております。私はジョンコルトレーンを「妙音菩薩」と捉え、ジャズ曼荼羅の中心に置いております。曼荼羅は本来円融のものですが、菩薩界の中にも十界具足しており、菩薩界所具の「仏陀」或いは「聖者」との位置づけも可能ではとの思いからです。
亡くなる前年の東京公演でのコルトレーンのことば。
「私は聖者になりたい」の、はにかみながら謙虚な言葉に象徴されていると思う。
音楽はフォノンといって、空気の振動で働く「準粒子」といわれている。準粒子(ゆらぎ)は私たちの細胞に直接働きかける。
現在、「思考が物質になる時」ダイヤモンド社刊。読んでます。
読み終えましたら。まとめてみたいと思っています。













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