残業規制は愚策以外のなにものでもない
ひとつの事象だけとっても、愚策だということがよくわかる。
例)
売上10億の金属加工の製造業。
溶接や機械加工を覚えていくことになった新人君。
オリエンテーションを終え 現場での OJT が始まった。
1ヶ月が経ち、簡単な軽作業も行わせてもらうことになった。
仕事自体はすごく楽しく、溶接の技術を身につけていくことや、機械加工で 様々な形に金属を加工していくことの楽しさを感じていた。
先輩たちが溶接作業を行い、製品を仕上げていく姿を見て、早く一人前になりたいと、休み時間に端材を使って溶接の練習を自ら進んでやっていた。
もっともっと溶接の技術を身につけたい、と思っていたが、溶接の機械を家に持って帰ることもできず、もちろん機械加工の機械を家に持ってくることなんて絶対にできない。
なのでその新人君は、定時が終わった後、溶接の練習をやらせて欲しいと先輩に申し出た。
溶接を使う際の材料や消耗品というものは会社にとってのコストにはなる。しかし、先輩や上司も新人が自ら申し出て自分の技術を上げていきたいという願いには答えてあげたかった。
新人君は、家に帰ったからと言って特にやりたいことがあるわけでもなく、ただただ仕事を進めていく上での技術を身につけたいという思いで願い出たことだった。
しかし 自分が定時後に溶接や機械加工の練習をするということになると、安全面を考慮し、誰かがそばについていなければならない。
先輩も快くそれを引き受けてくれ、定時後に1時間から2時間、様々な指導を行っていた。
もちろん仕事に必要な技術を身につけていくことだから、勤務時間内に行えることがベストなのではあるが、現実問題として、勤務時間内にそれを行うことは不可能だった。
通常の仕事が終わった後、何の生産性もない新人の練習を行うことに残業代をつけるべきなのだろうか。
また、そこに立ち会っていかねばならない 先輩や上司の残業代もつけなければならないのだろうか。
必ずしも定時で帰れるわけではなく、お客さんへの納期を考えると、残業もしなければならない。
17時という定時を終え、2時間の残業をした後、新人があと1時間練習をさせて欲しいという。
3時間の残業と考えなければならないのだろうか。
会社として、人件費というコストを考えた場合、生産性のない残業をやらせていくということはあまり好ましいことではないが、新人が 一般的なスピードよりも早く戦力になるための投資として残業を認めていくということもあるだろう。
新人が練習をするということに対して残業を支払い、人件費のコストを高めていく。
それをカバーするだけ売上げや利益が確保できるような大きな会社であれば それも可能だろう。
しかし多くの中小零細企業において、余剰人員を抱えているわけでもなく、経費の削減などを行いながら、ギリギリの利益を出している状態の中で、残業というものに対する考え方は非常に微妙なのである。
ここに働き方改革というものから出てきた残業制限などを考えると、会社としては、成長をしてほしい、でも人件費をそこまではかけられない、というジレンマ。
新人君は、銭金の問題ではなく、自身の技術を身につけ、1日も早く会社の中で一人前の戦力になりたいという思い。
そこに残業代を欲するということはなかった。
しかし本当に会社を真面目に運営しているのであれば、新人の練習、そしてそこに立ち会う先輩上司への残業代は支払わなければならないし、残業時間というものも考えていかなければならない。
いわゆるブラック企業と言われる残業の強制や、サービス残業を強いるようなところをどう制御するのか、ということから生まれたものであれば、そういったところを取り締まる形の法律を作ればいい。
ただ真面目に運営をし、真面目に働き方改革関連法案を遵守しながら会社を運営していくだけで、職人を育てることができず、従業員のやる気を削ぎ、人件費もかさんでしまう。
そして結果的に会社の生産性は落ち、利益も減り、他の従業員の昇給やボーナスを支払う原資すらなくなっていく。
これが 働き方改革の正体 である。
評論家や働き方改革賛成派のヤツどもよ。
一度現場を見るがいい。
欧米諸国と比べるな。
日本のよい文化を守り、健気に謙虚に働く者の意欲を削ぐな。
日本には日本の良さがある。
ダメなところを強烈且つ強行に取り締まればいい。
それだけだろ。