手術支援ロボット「ダビンチ」と患者さん✳︎
米国、韓国に続き、日本でもアームが1本だけの新型モデル「ダビンチSP」が販売されました。
ちなみに、「ダビンチ」「ダヴィンチ」「ダ・ヴィンチ」と表記ゆれも見られますが、開発した米国インテュイティブサージカル社は「ダビンチ」としています。病院も「ダビンチ」で表記を統一してほしいところです。
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記事によると、適応領域は以下のとおりです。
新型モデルは患者さんにとっても、メリットがあります。
記事のとおり、傷跡がより少なくなることです。これまでアームが4本だった「ダビンチ」から、新型は1本だけになりますので、切開創も1つだけになります。
また、記事にはありませんが、これまで「ダビンチ」が使えなかった経口的手術での活用もあります。新型はアームが1本ですので、口から挿入して咽頭癌や喉頭癌を切除できるようになります。
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今後、「ダビンチ」を導入している病院は
に分かれてきます。
さすがに②の病院はなかなか出てこないと思いますが、患者さんとしては選択肢が増えることになります(病院を選んだ時点で、①or③も選んだことにもなります)。
選択肢が増えること自体はとても良いことです。
記事には、新型「ダビンチSP」による「シングルポート」(単孔式)について、メリットが中心に書かれていますね。
がんの手術において、単孔式は、胸腔鏡・腹腔鏡手術とも現時点ではまだ少数派という印象です。「マルチポート」(多孔式)が、多数派・主流派です。そして、①単孔式という手技自体が非常に高度な技術を必要とすること、加えて②ロボット支援手術は症例数がすべてであることです。
適切なのか分かりませんが、伝わらないと意味がないのでいつものようにたとえてみます。
がんの手術は完全に取り切ることが前提です。
それでも、目に見えず画像にも映らない微小転移があって、再発・転移をしてしまうことがあります。
だからこそ、手術ではリンパ節も丁寧に郭清しますし、術前だけでなく術後の薬物療法を導入することもあります。
傷口を小さく少なくすることで、患者さんの体への負担を軽くする低侵襲。魅力的なメリットもありますが、必ずデメリットもあります。
どうしても開胸・開腹手術になってしまう場合もありますが、手技を選択できる場合もあります。
選択する際は、①それぞれの手技のメリット・デメリットを、主治医に“全力で”聞いてください。手術の場合には、②最新の『診療ガイドライン』も確認していただけると、後悔を減らせるはずです。
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これまで胸腔鏡・腹腔鏡手術で単孔式を積極的に実施してきた一部の病院の診療科が、新型「ダビンチSP」を導入して、ロボット支援手術でも単孔式での症例数を増やしていくことになるはずです。そのひとつが、記事にある札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科です。
参考までに「単孔式内視鏡手術研究会」のリンク先はこちら。事務局はもちろん上記病院診療科内です。だからこそ、東京での新型製品発表会なのに、わざわざ登壇されたということですね。
あとがき
手術関連の記事は、久しぶりです。
続きの記事を書いていませんでした。
どうしても、マニアックな内容になってしまいますね。
がん研有明病院
前立腺がんの治療待ち期間短縮を主目的として、昨年4台目の「ダビンチ」導入を決定しました。
これで国内で最も多く「ダビンチ」を所有する病院になったはずです。なお、4台とも新型ではなく「マルチポート」(多孔式)です。
以前記事にした時点での治療待ち期間は、少しずつ短縮されていると思われます(2/9現在、前立腺がん・膀胱がんとも日数上は変化していませんが)。日本最古のがん専門病院としての安定感に期待しています。
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