がん遺伝子パネル検査③|きっかけと準備**
はじめに
“費用が高い、いや高すぎる”でお馴染み「がん遺伝子パネル検査」。PET検査同様、保険適用になるための「条件」があることは前回書きました。
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条件を満たして保険適用となる場合、ケースによっては上記3割負担からさらに軽減されます。
そこで、ケース別に概算してみようというマニアックな話題に入る前に、今回はそのきっかけと準備のお話です。
◆きっかけ
今年7月に「がんゲノム医療に関する提言書、アンケート調査結果」が公表されました。
提言書内の①政策提言「4.患者費用負担の軽減」には、次のような記載があります。
これらは、がん遺伝子パネル検査に直面して初めて実感される切実で率直なご意見とご感想です。
未経験の方にとっては、お読みになっても何がなんだかさっぱり分からないかもしれません(が、「高額療養費制度」を利用した経験のある方でしたら、それなりに理解できると思われます)。
そこで、上記引用部分について、実際に概算することにより、問題がより顕在化できたり未経験の方とも共有しやすくなったりするのではないか、提言書の後押しにもなるといいな、と考えるに至った次第です。
◆準備
・「現状」の想定
次のような「現状」が想定できます。
上記⒉と⒊は、通院先が「がんゲノム医療●●病院」か否かで、さらに分かれてきそうです。
・「高額療養費制度」のトラップ
高額療養費制度には様々な「トラップ」が潜んでいます。上記提言書でも言及されています。助かる制度ですが、理解するのはなかなか大変です。
❶自己負担限度額は“月ごと”なので、月を跨いでしまうと合算できません。なるべく“同じ月”で合算できると、負担費用を圧縮できて助かります。
❷“外来分”の自己負担限度額と“入院分”の自己負担限度額は、一旦それぞれ窓口払いとなり、あとから外来分+入院分と合算して自己負担限度額超えの場合には、申請することで、払い戻しを受けることになります。面倒です。
❸(❷と同様)一旦“それぞれの医療機関に”窓口払いして、あとから合算・限度額超え・申請・払い戻しの流れです。やはり面倒です。
ということで、トラップにも注意して、細かく場合分けしながらの概算になりそうです。
・「モデルケース」の設定
69歳以下で、年収400万円程度の会社勤務の方をモデルケースとしますので…
・「支払い回数」の特殊性
がん遺伝子パネル検査は、“2回に分けて”支払うルールになっています。初回は説明などを聞き、2回目の「検査提出時」に13.2万円、3回目の「結果説明時」に3.6万円…という立て付けです。
このルールにより、トラップたちがその都度登場してしまいます。なお、2回とも2.1万円以上ですから、トラップ❹だけは回避できます!
さいごに
冒頭でもご紹介しました。
モデルケースで「高額療養費制度」を利用すると、(3割負担の16.8万円ではなく)最大約11.6万円の費用負担になります。
約11.6万円は、あくまでも最大です。ここから、さらに費用負担が軽くなったり、費用負担ゼロ(実質0円)になったりする世界は…次回です。
<参考:最大費用負担(所得区分別)>
モデルケースの「所得区分」(年収)だけを変更して、算出しました。最大でいくらの費用負担になるかという大まかな目安(検査費用のみ)。
「多数該当」の場合です。
「多数該当」という分類が分かりにくいですね。
いろんながん種に適応拡大中の「免疫チェックポイント阻害薬」。薬剤によって2週間毎、3週間毎など投与スケジュールの違いはありますが、たった1回の単剤投与であっても月の自己負担限度額を超えてしまうことがあります(なお、2週間毎の場合、同じ月に2回目の投与をした際には、薬剤は実質0円になりますね)。
過去12ヶ月間で超えた月が3回あると、4回目の月からは限度額が軽減されます。その結果「多数該当となるタイミング」で検査を受けられると、お得になります。