違う頁を開こう
アルバムを開けばー
モノクロ写真、丸い顔にひらひらドレス着て
これはカソリック幼稚園のイヴ、催しだろうか、主役だったことは確かだ。
小さい頃の月齢差は大きい。
4,5,6月生まれの子は、余程、先生に嫌われぬ限りは、大役を任される。
ひな祭りには最上段、女雛。
お内裏さまも近所の子、確か春生まれだった幼馴染のゲンちゃん。
やんちゃで蛇や蛙好きで、素手で捕まえちゃ、「ほら、可愛いよ」と
女の子に見せるものだから、その親達の抗議殺到。。
当時「マムシ殺しのゲン」などと、大人があだ名つけ、ゲンちゃんは
蛇から遠ざけられた。
ゲンちゃんは蛇が好きだったもの。殺してもいないし、マムシを素手で掴まないわ。
えぐい大人たち。
う~ん、題名が思い出せない。
イヴに、白いドレスで何を踊っていたのか、わたしでありながら、とうに無くした
満面の笑顔が写っている。
そうか、この頃、わたしは、まだ母に愛されていたのだ。
母が愛するという対象たるわたしは、当然ながら、父にも愛されたのだ。
うすらと、父の広い背中、浴槽、海、父のお腹。断片的な記憶はある。
僅かな幼少期の記憶、父母の優しい顔。
何故、何が彼らを変えたのか?
わたしが道化を演じるしか笑顔を望めない事態になったのは、
何が原因か。
わたしが悪い子だったの。あなた方の期待を外れてしまったのか。
お兄ちゃんのミーちゃんを殺し、わたしのジャックを殺したのは
何故?
アルバムなど開いちゃいけないのだ。
問いも涙も握りこぶしも宙ぶらりん。
・・・
違う頁を開こう。
あした、笑えるように。