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日記;父母覚書

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脳内出血で倒れた父と認知症の母。もう亡くなりましたが、日記にしたためていたメモを公開
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#連続投稿

湖畔

湖畔

_亡き義父母の会話_

湖畔の宿・・往年の大女優(私は盛りを知らないのですが〉高峰三枝子様が、歌われたとか。

当時、舅が、「俺は、この人が好きだ」と・・つい、無用心に呟いた事がありまして、

そう、高峰三枝子様は、年齢に似合わず、豊満な胸をお持ちで、入浴シーンなど、CMを観たような♪

姑が、怜悧な標準語で、一言(姑は東京下町生まれですw〉

「あら、貴女は、こんな女性がお好みでしたか。悪う御座

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母;生前覚書

母;生前覚書

゙お母さん、お誕生日おめでとう!

ぇっと・・何歳になったんだっけ?”

「38歳よ。

わたしは、38歳から年を取らないの。」

遠い昔の記憶、母の名言。

洋装も和装も似合った母の並外れた美貌。

小中学校の保護者会、校長先生筆頭に男性教師達が色めき立ち

母を観に来ていたと、後に知る。

そんな騒動を・・我が兄は恥じ入っていたのだった。

昨日ホームで見た母の明朗さ、思いがけず観た闊達さー

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高倉健/父生前の日記

高倉健/父生前の日記

昨日、高倉健氏の訃報を父とホームで知る。

以後、父はまたしても、ナーバス。
死に遅れた、死にたい病に取り付かれている。

「健さんより、オレは年上ったい、あぁ、長く生き過ぎた・・死ぬにも死ねん。

いつまで惨めな奈落で過ごさにゃならんとか!」

父の舎弟たるオジサン曰く
”会長!死んだときが寿命です”
実に端的ながら真理だと思う。

幼い頃から不在の多い父との数少ない思い出は映画鑑賞である。

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母 思ふ/生前覚書

母 思ふ/生前覚書

幾分、ひんやりした空気が心地よい

夜の風や音に心和み

羽音にすら季節を思う

煌々と輝く花の美に

我が母想い、つと涙がこぼれる

あぁ、どんどん痩せて無表情になりゆく母よ

かつての貴女なら

「わたしは石楠花じゃないわよ。薔薇!」だと言い切ったでしょうに。

何も発さぬ母よ

発し続ける父よ

辛かろうと思います。

でも、お迎えが来るまでどうぞ生きて下さい

あなた方の存在はやはり

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父想う雲/生前覚書

父想う雲/生前覚書

ソレを積乱雲と呼ぶことを知ったのは幾つだったかしら。

いえ、どう考えても、アレは入道雲なのです。

小さい頃から、空を見上げることの好きな私は

ある日、むくむくと空に湧き上った巨大なアレが父に見え畏怖したものだ。

父の雲は・・年々、小型化している。

畏怖せしめよ、父!
私の入道雲よ、父!

怖かった。でも愛して愛して、愛されたいと願って来た。

嗚呼、その大きな父たる雲を、今、焦がれてやま

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