中間報告における抗酸菌喀痰塗抹鏡検代替としてのXpert(エクスパート)

はじめに
抗酸菌喀痰塗抹鏡検は100年以上前に医療現場に導入され、以来、活動性肺結核の診断に使用されています。しかし、この検査は感度が低く、結核菌と非結核性抗酸菌を区別できないため特異度も低いことが課題です。Xpertなどの分子検査は、臨床検体中の結核菌を迅速かつ正確に検出する能力に優れており、塗抹鏡検に代わる有用な方法として注目されています。この論文では、抗酸菌感染症が疑われる患者におけるXpert検査と塗抹鏡検の診断性能を比較しています。
 
方法
肺結核が疑われる2,952例の患者から採取された喀痰検体を用いてXpert検査と塗抹鏡検を比較しました。
 
結果
2,952例のうち、263例(8.9%)で結核菌、265例(9.0%)で非結核性抗酸菌が培養で確認され、その他は培養陰性でした。検出された結核菌におけるXpert検査の感度と特異度はそれぞれ74.1%と97.5%、塗抹鏡検では38.8%と96.7%でした(P<0.0001; P>0.05)。塗抹鏡検陽性の82例の非結核性抗酸菌のうち、81例(98.8%)はXpert検査により正確に除外されました。また、検体採取時間と場所が塗抹鏡検の性能に影響を与えたのに対し、Xpert検査には影響しませんでした。さらに、結果報告までの時間もXpert検査の方が短い結果となりました(3.1時間 vs 19.1時間: P<0.0001)。
 
考察
Xpert検査は塗抹鏡検と比較して、より高速で安定した診断結果を提供でき、臨床診療における肺結核の第一線診断として、塗抹鏡検に代わる可能性があります。
 
感想
同様の結果はNEJM JW Infect Dis Nov 2018およびJAMA Intern Med 2018; 178:1380などでも報告されており、米国結核対策協会や米国公衆衛生研究所協会も、塗抹鏡検よりゲノム検査を推奨しています。ゲノム検査は従来の検査よりも費用がかかる点はありますが、迅速かつ高感度・高特異度な方法であるため、肺結核患者の感染対策としても支持が広がり、米国の多くの臨床検査機関はすでに塗抹鏡検に代わってゲノム検査を導入しています。日本ではまだ塗抹鏡検が主体ですが、大学病院を中心にゲノム検査への移行が進んでおり、今後さらに従来の抗酸菌塗抹鏡検の役割が低下していくことが予想されます。

Xpert MTB/RIF assay as a substitute for smear microscopy in an intermediate-burden setting
(Am J Respir Crit Care Med. 2019 Mar 15;199(6):784-794. doi: 10.1164/rccm.201804-0654OC.)


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