医療従事者における手指衛生の有効性比較 最新のシステマティックレビュー
はじめに
世界保健機関(WHO)は、手洗いならびに手指消毒の方法として、6ステップ法を提唱しています(図の2-7)。この6ステップ法による手指衛生は手指表面の微生物低減にどの程度有効か明確ではありませんでした。
今回ご紹介する論文は、WHOが英国の研究センターに委託し、6ステップ法の有効性を他の手指衛生方法と比較・検証したレビューです。
方法
Medline、CINAHL、ProQuest、Web of Science、Mednar、および Google Scholar(これらは医療文献を検索できるエンジンです)を用いて、医療従事者における手指衛生法を評価し英語で発表された研究を検索しました(1978-2021年2月)。また、レビュー担当者はCochraneツール(システマティックレビューの際に使用される)を用いて独自に品質を評価しました。
結果
検索の結果、9件の研究がヒットしました。WHOの6ステップ法が手指の微生物を低減することを示すエビデンスが得られました。ある研究では、WHOの6ステップ法が3ステップ法よりも効果的であることが示されましたが(P = 0.02)、別の研究ではこれら2つの技術の間に差が見られませんでした(P = 0.08)。独自の3ステップ法は、実験室環境ではWHOの6ステップ法よりも効果的でしたが(P = 0.021)、臨床現場ではそうではありませんでした(P = 0.629)。ある研究研究では、独自の6ステップ法がWHOの6ステップ法よりも効果的であることが示されました(P = 0.001)。検索した文献は、適用時間、製品、および対象人数において不均一でした。すべての研究に高いバイアスリスクがありました。
考察
9件中8件の研究により、WHOの6ステップ法が医療従事者の手指に付着した微生物を減少させることが明らかになりました。しかし、どの研究もバイアスが高く、最も効果的であり実現可能な技術を特定するにはさらなる研究が必要です。
感想
手指衛生はそのやり方によって有効性に差がでるのは明らかです。しかし、どの方法が最適かを決める評価方法の確立が困難で、各種方法のどれがもっとも有効かは分かっていません。今回紹介した論文でもWHOの6ステップ法が有効であることは明白といえそうですが、レビューされた文献のバイアスが高く、今後の研究課題があることは確実です。しかしながら、手指衛生は院内感染を低減する効果は確実にあるため、どの方法でも実践することがより重要といえます。
Comparing the effectiveness of hand hygiene techniques in reducing the microbial load and covering hand surfaces in healthcare workers: Updated systematic review.
(Am J Infect Control. 2022 Oct;50(10):1079-1090. doi: 10.1016/j.ajic.2022.02.003.)
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