ポータブル医療機器の清拭/消毒における持続活性消毒剤の評価

はじめに
環境の清拭/消毒は、除染された表面がすぐに汚染されてしまう限界があります。近年、このイタチごっこを脱却する手段として、継続的な除染を実現する技術が注目されています。その有望な技術のひとつが、持続性のある第四級アンモニウム系消毒剤で、ポリマーコーティングが含有されており、環境表面にポリマーコーティングが結合して持続的な抗菌活性を発揮します。
今回ご紹介する論文は、持続活性第四級アンモニウム系消毒剤の有効性をリアルワールドで検証した米国からの報告です。
 
方法
本研究は、医療と介護を対象とした各々215床、250床の施設で実施されました。合計114台のポータブル医療機器をランダムに、清拭なし(N = 38)、持続活性のない(通常)の第四級アンモニウム消毒剤の単回スプレー塗布(N = 38)、持続活性のある第四級アンモニウム消毒剤の単回スプレー塗布(N = 38)のいずれかに割り当てました。ベースラインおよび実施後1日、4日、7日に、総好気性コロニー数、黄色ブドウ球菌、腸球菌を対象機器からサンプリングしました。
 
結果
In vitroな実験では、持続活性のある第四級アンモニウム消毒剤は、5分間の曝露でMRSA、VRE、Candida auris、およびカルバペネム耐性K. pneumoniaeおよびE. aerogenesを少なくとも5 log10減少させました。通常の第四級アンモニウム消毒剤は効果が低く、0.5 log10以内の減少でした。
今回の検証では、持続活性のある第四級アンモニウム消毒剤は、ポータブル医療機器の好気性コロニー数をベースラインと比較して持続的に減少させました。通常の第四級アンモニウム消毒剤では、好気性コロニー数は全体的に減少しませんでした。さらに、持続活性のある第四級アンモニウム消毒剤では、清拭なしおよび通常の第四級アンモニウム消毒剤と比較して、1–7日目に黄色ブドウ球菌および/または腸球菌の割合が有意に減少しました。

 

図1 ベースラインと清拭なし(対照)または通常の第四級アンモニウム消毒剤、継続活性第四級アンモニウム消毒剤実施後 1、4、7日後に医療機器から回収された総好気性コロニー数(CFU)比較

考察
医療施設において、ポータブル医療機器に1回スプレー塗布された持続活性第四級アンモニウム消毒剤は、7日間以上、好気性コロニー数を減少させ、黄色ブドウ球菌と腸球菌の回収率を低下させました。この結果は、ポータブル機器を介して病原体が伝播するリスクを低減するために、持続性のある消毒剤の塗布が有用であることを示唆しています。
結論として、持続性のある第四級アンモニウム消毒剤の塗布は、医療機器の汚染を低減するのに役立つ可能性があります。ただし、これらの知見を裏付けるためにさらなる研究が必要であり、これらの製品が患者の転帰に与える影響をよりよく理解する必要があります。
 
感想
今回検証した持続活性のある第四級アンモニウム消毒剤を手にしたことはありませんが、本文からスプレータイプということが分かります。スプレーは塗布にムラが生じ、消毒できない部分があることは念頭に置かなければなりません。また、スプレー方式は実施者の吸引リスクもあり、多量にスプレーした場合に医療機器へ残留し、ベタつきや機器の劣化も気になります。
微生物(特にグラム陽性菌)が持続的に環境から少なくなることは、院内感染の防止に多大な寄与をもたらしますが、実際の使用感覚も重要となるため、机上の空論になる危険性を十分に理解したうえで、効果的な消毒剤などをリリースする必要があるでしょう。

文献
Evaluation of a continuously active disinfectant for decontamination of portable medical equipment.
(Infect Control Hosp Epidemiol. 2022 Mar;43(3):387-389. doi: 10.1017/ice.2021.66.)


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