雑記と私#42:想像力を解き放て!
ウルトラマンアークが面白い。
実は私、この作品自体には元々それほど興味が
あったわけではない。
あくまで興味があったのはこの作品の主題歌を
担当する”access”のお二人だった。
この主題歌「arc jump’n to the sky」のPVや楽曲に
感銘を受けた私は、作品内での楽曲の使われ方も
気になり、とりあえず1話を視聴することにした。
私は世代的には昭和ウルトラマンシリーズ、
特に6兄弟たちが活躍した時代よりあとの世代だ。
所謂”直撃世代”というわけではないのだが、
当時はドラマやアニメ、特撮などが頻繁に
再放送されている時代。生まれた世代より前の
番組でも視聴する機会には事欠かなかったのだ。
そのように昭和のウルトラマンを観ていた私だが、
しかしそれ以降ウルトラマンに触れる機会は
あまりなかった。
観たのはせいぜい”ティガ”と”メビウス”くらい。
ティガは放送当時のカノジョが長野博さんの
大ファンだったから、メビウスはその内容が
昭和ウルトラマンに直結するものだったから、
というのが観ていた理由だ。
実に久し振りに腰を据えて観る事になった
新たなウルトラマン。
そこから感じたものはどこか懐かしい”昭和の香り”、
そして”斬新な画作り”と”等身大のヒーロー”、
この3点だった。
この作品のメイン監督を務める辻本貴則さんは
昭和のウルトラマンが大好きだと公言されており、
タイトルロゴやオープニング映像を始めとして
至る所にその雰囲気を”あえて”仕込んできている。
映像だけではない。
「人と怪獣」「人とウルトラマン」との関係性に
ついても昭和ウルトラマン、特に昭和二期の
第一作となる『帰ってきたウルトラマン』の
影響を多大に受け、それを反映させているという。
人間と怪獣とウルトラマン、それぞれが単に
”正義と悪”だけではない複雑な関係にあり、
そこにドラマ性を持たせるというストーリー展開は
まさに帰ってきたウルトラマンさながらだ。
そのドラマの中心にいるのが本作の主人公、
”飛世ユウマ”だ。
本作には怪獣たちから地球を守る防衛隊のような
組織は存在こそするものの、直接登場はしない。
ユウマが所属するのは”SKIP”という組織。
この組織は怪獣災害に対して研究や予測、
事前事後の調査や市民の避難誘導などを行う
いわば”研究団体”であって、武装らしいものも
何も保持していない。
ユウマ自身も熱血漢でもなければスポーツ万能でも
天才的な頭脳を持つわけでもない。
ごく普通の1人の青年にすぎないのだ。
そんな青年が”光の巨人”から借り受けた
『想像力を力に変える』能力によって、彼は
ウルトラマンアークへと変身する。
とはいえ、大きくなって力を得ても中身(精神)は
あくまで”ユウマ”のままである。
ここがこれまでのウルトラマンと大きく違うところ。
人の姿を借りた生まれついてのヒーローではなく、
ヒーローから力を借りたただの1人の青年、それが
ウルトラマンアークなのだ。
だからこそ、その戦いぶりもこれまでの
ウルトラマン以上に”人間くさい”。
怪獣の固い部分を殴れば普通に痛がるし、
何かを考える時は首を傾げる。
この見た目は大きくても”等身大”なヒーロー像が
とにかく新しい、そして面白い。
そして前述した「首を傾げる」ポーズ。
ここで彼は研究員としての知識や洞察力を
最大限に発揮し、「想像力を力に変える」のだ。
こうした描写を表現する画作りも非常に面白い。
例えば第1話。
ウルトラマンといえばお約束である
『地球で戦えるのは3分間』という制限を、
「誰かがスマホで撮影した映像」という形で
擬似ノーカットの映像で撮影したのだ。
実際にはCGによる加工等も入っているので完全な
ノーカットではないのだが、それでも3分間という
ウルトラマンならではの制限を、如何にも現代的に
取り入れた撮影方法だろう。
こうしたこれまでにはない斬新な映像表現が、
本作ではあえてウルトラマンのセオリーを”外す”と
いうテーマをもって積極的に取り入れられている。
一方でウルトラマンのデザインそのものは
近年の所謂”ニュージェネレーション”に比べて
非常にシンプルで、それこそ昭和ウルトラマンに
近いものになっている。
ここも個人的には取っ付きやすいポイントだった。
古き良きもの。
親しみのある身近な存在。
斬新な切り口。
これらを巧みに融合させているウルトラマンアーク。
世代を問わず楽しめる作品になっているので、
もし興味を持たれた方がいれば一度観て欲しい。
現在5話までYouTubeの円谷チャンネルをはじめ
各プラットフォームで配信もされている。
世界同時配信ということで世界的にも今
注目されている作品でもある。
決して子供騙しではない、深いテーマがそこで
見つかるだろう。
キーワードは『想像力を解き放て!』
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