交響曲第1番「街の喧騒」:散文詩と私
駅前を歩いていると
どこからかジャズが流れてきた
電子ピアノと電子ドラム
サックスにトランペット
高架下の四重奏のスウィングは
ネオンの輝く街の彩りを
より一層華やかにしていた
こうして行き交う人々を見ていると
みなが思い思いの音楽を奏でている
真新しいスーツとカバンの若い男は
社会という練習曲の譜面に齧り付く
派手な出で立ちのナンパ師が
甘く小夜曲を囁くけれど
ヒールの音色をフォルテにしながら
長い髪の女性が浮かべる表情は全休符
対象的な2人の演じる滑稽な有様は
さながら狂詩曲かのよう
クラクションの行進曲に合わせて駅へと急ぐ会社員
週末の夜に輪舞曲を踊るカップルたち
居酒屋へ向かうサラリーマンたちの協奏曲
昭和歌謡を切り取った屋台で
年配の男性がグラス片手に演歌を歌い
コンビニの前ではパンクな装いの女の子たちが
ヒップホップのステップを刻む
街は巨大なコンサートホール
その喧騒は指揮者のいない交響曲
星空の五線譜を読み解くと
それはドヴォルザークの「家路」
風は涼し この夕べ
いざや 楽しき まどいせん
さぁ帰ろう
今宵も音楽に酔いしれながら