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『受け継ぐ”思い”』:ショートストーリーと私

「父さん。」

今日はサッカー部の遠征のため、休日返上で
高1の息子の送迎役だ。
せっかく頑張ってるんだから、出来る限りの事は
してやりたい。運転手くらいお安い御用だ。

「どうした?どこか寄りたい所でもあるか?」

「ううん。そうじゃなくて・・・。」

どうにも歯切れが悪いな。
いつもなら遠慮ってモンすらないくらいなのに。

「・・・なんだ?」

「父さんって、告白とか、した事ある?」

・・・なるほど。それは歯切れも悪くなるな。
それにしても、もうそんな年頃か。

「もちろんあるよ。ラブレターも書いたしな。」

息子相手にこんな話をするとは思わなかったな。
何だかムズ痒い感じがする。

「それって・・・どんな風に?」

「どんな風に、かぁ・・・なんて言うか、難しいな。」

「そっか・・・。」

息子なりに色々と思うところはあるのだろう。
失敗した経験しかないが、それも息子のために
なるのならいいか。

「いいか?そりゃすごく緊張するし、頭の中は
ぐちゃぐちゃになりそうだし、胸はいっばいに
なるしで、もう大変だよ。お前だってこの前の
試合、初めてスタメンでピッチに立った時は、
そんな感じだったんじゃないか?」

「あー、その感覚はなんとなくわかるかも。」

「その時はどう考えてた?」

「うーん・・・とにかく自分に出来る事を精一杯
やろうって。いつもの自分のプレイで。」

「それと同じかな。その時感じてる精一杯の自分の
気持ちを、自分なりの言葉で相手に伝えればいい。
カッコつけようとか、そういうのは要らないから。」

「ふぅん、そっかぁ・・・。それで、誰に告白したの?
いつ?それでどうなったの?相手は母さん?」

遠慮がなくなってきたな、いつもの息子らしい。

「母さんじゃないな。父さんが高校生の時の・・・。」


今日も息子の試合の送迎だ。
でも今日は同乗者が増えている。
息子と同じクラスでサッカー部のマネージャーの、
髪の短い可愛い子だ。
なんかうらやましい、とは流石に言えない。

「すみませんお父様、ありがとうございます。」

・・・お父様!?
いやいや、育ちのいいお嬢さんのようだ。

後部座席で楽しそうに話してる2人をルームミラー
越しに眺める。

『お守り』でも買って渡しておくべきか?
いやしかし、どう説明しようか・・・。

私は父親としての正念場を迎えているらしい。


[あとがき]
このお話は私がTwitter(現”X”)でフォローさせて
頂いている、ある素敵なお父様にインスパイアされ
書き起こしたものです。

私はおそらくこのまま生涯独身を突っ走るかと
思いますが、もし年齢相応に親としての立場に
なっていたとしたら、こういう世界線もあったの
かもしれませんね。

・・・いや、鬱陶しがられるだけかな(笑)。
なんとなく想像は出来るんですよ、もし自分に
子供が居たら、間違いなく親バカになるって。
なので「うっせー親父引っ込んでろ」とか
言われてそう(泣)。

他にも私にはオンラインゲームを通じて知り合った
十数年来の親友も居ます。
彼もまた非常に魅力的な一児のパパさんとして
頑張っていますので、いずれ折を見て彼とその
ご家族(奥さんも知り合いなので)の事なんかも
取り上げてみたいですね。

ではまた、次の物語で。

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