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親友の忘れ形見、桜子の物語

今日は朝から犬のボランティアで、久しぶりのワンちゃんとの散歩を楽しんできた。
昨夕と今朝とご主人様がお留守のためお世話することになった桜子。
このわんちゃん、桜子は私の大親友、ふーちゃんの愛犬だった。
ふーちゃんは2年前、不治の病で天国に旅立った。

14年前私たちは、殺処分対象の犬を管理所から救い譲渡先を見つける活動をしていた方の少しばかりのお手伝いをしていた。
この子は兄妹の子犬たちと保護されて、ふーちゃんはこの子を一時預かりしていた。
他の兄妹犬の中でも特に警戒心が強くこわがりだった。そのため、譲渡会でも新しい飼い主さんに巡りあうことがなかった。
そのことを辛く受け止めた彼女が決意してお家に迎えた子だった。
そして、彼女は桜子と可愛い名前を付けた。

桜子は外へ出ることが怖くて散歩のできない犬だった。
そのため、家の中での悪さが絶えず、若い頃はリモコンやメガネ、家具等いろんなものを破壊して、その被害額も相当なものだった。

桜子の破壊は家の柱、網戸、扉などに及び畳替した次の日には畳が大きな爪で掘られていたこともあった。

このような桜子ですが、感心なことに子供や子犬には噛みついたり、威嚇することが全くない優しく穏やかな性格で、爪切りも嫌がることがなかった。ふーちゃんが後ろから体重20キロ以上ある桜子を抱きかかえソファーに座ると、私がいつも爪切りをしてあげた。血管を切らないように犬、猫の爪を切ることが私の特技で、彼女に抱かれた桜子は安心して大きい手足を差し出し、太くて頑丈な黒い爪をおとなしく切らせてくれた。
問題行動を起こしてしまうけれど、愛嬌のあるかわいい桜子を彼女はこよなく愛し温かいまなざしでいつも見守り、お世話していた。

桜子を家族に迎えてはじめてのお正月、家族旅行で1泊2日家を空けることになり、私がお世話にいくことになった。2日目の朝、ご飯をあげに家に入ると、掃除が得意なふーちゃんがいつもきれいに整理整頓されている部屋の中が一変していた。
リビングの大きなお気に入りのビーズクッションは噛み切られ家中が小さなビーズで溢れかえり、観葉植物の鉢は倒され掘られて、ビーズの白が雪のようで、そこに土色の大きな犬の足跡がカーペットやフロアーの上にたくさんついていて、悲惨な状況だった。
楽しい家族旅行中なので、その状況は伝えず、ちょっと早く帰ってきた方がいいかも、と意味深に私は伝えた。
そのころの桜子は家族以外には馴れていなかった。目の縁に軽い小さな白ビーズが貼り付いていたので、それを取ってあげようとするもいたずらっ子のように、家中を逃げ回って捕まらなかった。私はなすすべもなくその場を去った。

旅行から帰宅したときのショックは大きかったようだ。
お気に入りのビーズクッションを粉々にされ家中荒らされて、ため息をつきながら家族みんなでそのゴミの山をゴミ袋に何袋も入れて片付けたとのこと。
この出来事は、桜子の破壊話の中でも一番の思い出話として何度も話題に上がり、その都度笑い合った。

桜子は成長するにつれて、少しずつ散歩もできるようになり、今度は外への関心が増えた。
勝手口から網戸とアルミの枠を蹴り壊して脱走することもあった。
脱走はエスカレートして2階のベランダなどから下へ飛び降りたことも何度もあった。しかし、いっさい怪我することもなく恐るべき身体能力を持った素晴らしい犬?で、たぶん狩猟犬の血を継いでいるのであろう。
近頃の事件では、あるじ様不在時に二階トイレの窓から網戸を破って飛び降り、充分に外の世界を満喫したあと、誰もいない家の中に入りたくて玄関の戸を爪でガリガリとひっかいた。リフォームしたての家具調の玄関ドアが1週間もたたないうちに大きな爪で傷つけられた。帰ってきたご主人様、大ショック!

去年、お世話に行ったときも事件が起きた。
私宛に食卓テーブルの上においてあったビニール袋をあせり、アンチョビのはいった瓶の蓋を歯で噛み開けてぺろりと平らげていて、一緒に入っていた醤油ダレを食い開けてそこら中に巻き散らかしていた。家の中にタレの食欲を増す美味しい匂いが漂っていた。



悪さをしたあとの桜子、
後ろにはチョコちゃん 去年11月

恐るべし桜子(笑)
塩味の効いたアンチョビとガラスの破片を食べたようで心配したが異常なし。
畳を液体がしみない水拭きできるものに替えていたのは、とてもラッキーだった。

今回は何も起こらなかったと?
いえいえ、実は昨日は押し入れを開けて、高級羽毛布団を食い破っていた。2枚も。
久しぶりのいたずら。
とりあえず雪のように積もっている羽毛をなんとか片付け。(ふわふわ舞ってうまく集められず、家からゴミパック式の掃除機を持参する)畳の部屋に引きずり出された1枚の掛布団はなんとかゴミ袋に入れて押し入れに押し込み、部屋の中は一応片付いた。

今日、帰宅途中のご主人が我が家に手土産を持参してくれたので、一連の出来事を伝えた。彼は呆れた様子で、いつもしないことをするとは、わかってやっているな、と苦笑いしていた。
久しぶりの派手なイタズラにお互い笑いあった。

自宅に帰ったご主人から連絡が入った。桜子は後片付けをしているそばで何事もなかったようにシレーとしているとのこと。
ゴミ袋に入れていない方は高級羽毛布団だったようで押し入れから出した途端に細かい羽毛が空中に舞い上がり片付けるのに大変な様子だ。

9月に桜子とずっと一緒にいたチョコという高齢犬のチワワが虹の橋を渡った。おばあちゃんが飼っていた犬で4〜5年ふーちゃんがお世話していた。彼女にとても懐いていた。私はチョコちゃんがいなくなり、彼女との思い出の存在をひとつ失ったようで悲しくて涙が溢れた。桜子もひょっとしたら相棒がいなくなり寂しくて今回の悪さをしてしまったのかもしれない。

チョコちゃんの分も桜子にはずっと元気で長生きしてほしい。
これからもご主人様不在の時は私がお世話にいき、散歩したり、撫でたり、たくさん触れ合って楽しい時間を過ごしたい。
これは、生前のふーちゃんと約束したこと。

桜子は私と彼女との思い出がいっぱい詰まったかけがえのない存在だ。

散歩するようになり、私にもだいぶん馴れてきた。今回はほっぺをつけてはじめてスキスキすることができた。私が近寄っても逃げずに安心している。とてもかわいい。
トイレもいつも家の中の決まった場所でしてくれて、そちらは粗祖をしたことがない頭の良い犬だ。

散歩をしながら、こんなふうにふーちゃんと散歩ができたらよかったのになあと思う。

でも、彼女はそばにいて一緒に散歩しているようにも感じる。

桜子のいたずらも優しいまなざしで見守り微笑んでいるのだろうと、いつもふーちゃんの存在を感じている。





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