何と無しなめでたし
最低な夜だった。
私はノースリーブのワンピースから露わになる華奢な右肩の、自己満足のためだけに金と時間を費やした美しさの滲む、白くて艶やかな右肩の、どこまでも無機質なショルダーバッグに意識をやった。
こやつは私の意志でしかこのように存在できまい。
なんて無力なショルダーバッグ。
言葉を持たないお前に選択肢はないのだ。
いつもお前たちの運命を決めるのは言葉を持つ私たちなのだよ。
何かを決めなければいけない時、私はいつも焦燥感に駆られる。もっとゆっくりとゆとりを持って考えるべきなのだろうけど、白か黒かの発想しかない愚かな私はすぐに結論を出したがる。
少し経って落ち着きを取り戻しても、大体事は大きく前へ進んでいる。
前へ、なのかはわからないが、少なくとも元あった場所より大きくずれたところへ移っている。
なにかしらの決定をすれば、何事も形そのものを変えてゆく。だから慎重に進めなければならないことの方が多い。だけど私はそれが苦手だ。
バッグの中の液晶が光とともに震えた。
通知が来てから画面を確認するまで、いつもほんの少しだけ、何かに淡く期待をする。
その正体には掴みどころがない。だけど毎度懲りずに心臓がはねる。
もしかしたら人生が変わってしまうのではないかと、予想もしなかった良いことが起こる知らせなのではないかと、甚だありもしない期待に情けなく胸が膨らむのだ。
己の理性を超えてときめいた心臓から流れる赤く新鮮な血液を、静かに脈打つ血管に乗せて冷たい手のひらへ届ける。輪郭のない願いは、光を反射し視界をくらます水蒸気のようだ。
なんだか私はいつもその中にあるような気がする。
小さな高まりと共に画面を顔の方へ向けた。
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書いたのは本当にただの気まぐれ