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無視されていた人口減少

 2000年代初め、「女性活躍の推進」という言葉が使われるようになりました。働く女性が、出産・育児で家庭に入り、労働市場から退出することになるということが取り上げられ始めたのです。同じころ、日本の労働人口減少が取り上げられるようになり、女性の活躍推進=仕事と家庭の両立支援=少子高齢化の防止、という大義名分が成立し始めたころでした。
 実は日本の人口が減少に転じるという予測は、2000年代前半、すでに一部の学者が取り上げられていました。しかし、だれもそんなことは考えたこともなく、書店でもキワモノ扱いされて書棚の隅に数冊だけひっそりと立てかけられていました。たまたま私は書棚の隅で見かけて、人事部の仲間にも話したですが、だれも本気で取り合わない。もっとも、国立社会保障・人口問題研究所による将来人口推計では、2002年の国勢調査をベースとして、すでに人口が2008年頃から減少に転じることを予見していました。それが、2005年頃からいきなり減少が社会問題として出てきたのです。その後、2008年をピークに日本の人口が減少していることはその後の国勢調査で確認され、いまでは日本の人口が縮小していることは周知の事実です。数字は嘘をつきません。マクロの流れも変わらないでしょう。ただ、それを見る人の意識はその変化についていけないということを実感した経験です。
 そしてコロナ禍の2022年、ついに東京も人口減少に転じました。在宅勤務の進展やオフィス空室率の増加という働き方の変化もありますが、来るべくしてきた現実です。私たちは、人口・働き手の減少という事実を直視し、悲観的にならず、しかし、冷静に先手を打っていかねばなりません。