ある写真を読み解く
私の手元に1枚の写真。
眺める。
この人はなんで、右手を自分の斜め前の人の肩の上に置いてるのだろう。
すごく不自然に感じた。
置くかな、普通?
私なら置かないな。
ってことは、なにか意味があるのか?
不自然な動き。
それは何かメッセージなのかもしれない。
私はそのころ、肩に重みを感じていた。
今日は部屋の片づけをしていた。
長年住んでいなかった部屋の窓ガラスを拭いたり、カーテンをはずしたり、手を伸ばす作業をした。
といっても、それほど長時間やったわけでもなかった。
だけど、なんだこの重みは!
だんだん痛みに変わってきた。
ひどい筋肉痛だ。
右肩がパンパン。
さわるだけで飛び上がるほどに痛くなってきた!
どんどん重く、どんどん痛くなる。
は!
写真で人の肩に乗せてる手。
私の肩の痛み。
これかもしれない!
「行かないで」。
そんな意味にとれた。
私は何度目かのあきらめの境地にいた。
目の前の現実に打ちひしがれていた。
今まで何度この感覚になったことであろう。
見たくもない写真をこうして私は観察するかのように、凝視してる。
が、この痛み。
どんどんひどくなるばかり。
ぐっと肩をつかまれて、はなさないようにされてるかんじがする。
行こうとする私を力の限り引き留めている。
だからかなり痛い。
暴力的でないが、引き留める力に強い意志を感じる。
なにかをつたえようとするなら、痛みか不快感でしか伝えられない。
心地よさではメッセージは伝わらない。
強い痛みはその印。
肩をさすりながら、肩に聞いてみる。
「ああ、そうだよ。君の見立て通りだよ。行かないで、って言ってる」
私はこういった。
「行くなというけれど。いつまで待てばよいのか。あてもなく、直感だけを頼りに待ち続けるの、時に目の前の現実に心折れそうになる。行くなというなら、待っていてと言うなら、安心して待っていられるようになにかしらメッセージがほしい。そう伝えて」と。
肩からメッセージを聞いたら、痛みが少し和らぎ、パンパンでカチカチの肩のはりがちょっと楽になった。
写真で、その人は今まで見たことないような穏やかな笑顔で微笑んでいる。
こんな顔みたことないな。
だからちょっと最初みたときは、悲しくもあった。
私にはこんな笑顔みせてくれたことない。
絶望感にもさいなまれた。
だが、もしかして。
この笑顔は私にむけられているかもしれない。
私がこの写真を目にすることは予想しているはず。
再び私は写真に目を落とす。
サッカーのユニフォーム?
サッカー好きだっけ???
聞いたことないような。
おしゃれな人がサッカー好きなわけでもないのに(実は好きなのかもしれんが)、ユニフォーム着てることの違和感。
少なくとも私はこの6年半、みたことない。
あなたって、サッカー好きでしたっけ???
またしても、違和感。
この違和感を見逃すな。
このユニフォームもメッセージかもしれないな。
よし、どこのユニフォームか調べてみよう。
セリエAのどこかのチームだと推測した。
黒と白のストライプ。
全チームのユニフォームをくまなくみる。
あ!これだ!
ユベントスだ。
イタリアの名門サッカーチームだ。
英語の表記を調べてみる。
Juventus
なんと「Ju」!!!
私の名前の最初の文字だ。
「君のことを思ふ」。
これが伝わってきたメッセージだ。
「いつまでも、君のことだけを思う」
私のイニシャルのものを身にまとって、にっこりほほえんでいるのだ!
むむむ、なかなか大胆な!
そこは変わらぬな。
ときどき、大胆な行動に出て、こちらがびっくりする。
いいのか?
いや、いいのだ。
私はうれしい。
素直にうれしい。
この状況下で。
私にしかわからない形でのメッセージだ。
私以外、読み解けやしまい。
気持ちを、あの頃を変わらぬ気持ちを伝えてくれるのが何よりうれしい。
私は、私に向けて言っていることを明確にしてほしかった。
だれのことなのかわかるようにしてほしかったのだ。
私に言ってるんだって、わかるようにしてほしかった。
だから
うれしい。
これだけで、底知れぬ安心感がわくのだ。
君の力は大きいのだ。
これはほかのだれにもできないこと。
だから私も同じように君に大きなものを与えることができてるとおもう。
平安時代の和歌のやりとりのように、二人の秘密めいているところがいい。
1回じゃだけだからね、何度も送ってね。
ってリクエストはしてある。
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