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予備試験で運良く上位合格できた私の使用教材

 どうも、ゆうです。R6予備試験では問題との相性が良くて短答1桁順位、論文20位代、口述1桁順位という好成績をとることができました。学習期間としては大学1回生〜3回生までの間の学部試験に向けた勉強の積み重ねを基礎として、大学3回生が終わる春休みから約1年間弱予備試験に向けて勉強しておりました(詳しくは以下のnoteをお読みください)ので、3年+1年という感じです。今回のnoteでは私が予備試験に合格するまでに使用した教材とこれに対する私の雑感を書いていこうと思います。

1.学部試験対策に使用した教材

(1)家族と法

 1回生で法曹志望でもなく、何も知らない状態の時になんとなくレジュメで勉強するのが嫌で買った教科書が有斐閣アルマの民法7親族・相続です。
 一周読んで大事そうなところに線を引いて二周目は線を引いたところを中心に読んでいく、という大学受験の時の世界史(得意科目でした)の勉強法をそのまま流用して勉強していました。また、過去問も公開されているものは全て解きました。
 周りが大して勉強していなかったのか全然書けなかったのにも関わらず望外に良い結果でした。それなりに頑張れば良い成績を取ることができたという経験が今後の定期試験に対するモチベに繋がったと思うので、最初って肝心ですね。

(2)民法総論総則親族

 通年の授業だったので前期の間はほとんど何も勉強していませんでした。後期になって少し不安になり、教科書指定されていた佐久間毅先生の民法の基礎1総則という教科書でダラダラと勉強を始めました。もっとも、この教科書がなかなか骨太でかなり細かいことまで書いてあるため通読にかなり時間がかかり、一周読んで二周目に進むと何も覚えていないという残念な状態に陥りました。佐久間本は辞書的に使うのが正しい使い方なのではないかとここで初めて気づきました。
 そこで、予備校が出している本を買ってみようという気分になり、呉基礎本の民法総論・総則を購入しました。わかりやすさ、見やすさ、読みやすさに感動するとともに、「論証」という存在を初めて知ったきっかけでもあります。最終的には学説対立だけレジュメで勉強してあとは呉基礎本を読み、過去問を解くというので試験を乗り切りました。

(3)憲法統治機構

 教科書指定されていたリークエの憲法総論・統治を読み、過去問を解いただけです。一応呉基礎本の憲法も買って読みましたが、あまり定期試験にマッチしている感じではなかったので一周くらいしか読んでいません。
 リークエは理論的な問題がメインになる学部試験には非常に有用でしたが、予備試験や司法試験向きではないと思います。

(4)刑法総論

 教科書指定されていた島伸一先生のたのしい刑法Ⅰ総論という本を一周しましたが肌に合わず、すぐに呉基礎本に乗り換えました。呉基礎本を読んで巻末の論証を丸暗記して過去問解いて試験に臨み、良い成績を取ることができたので呉基礎本様々です。

(5)民法物権法

 教科書指定されていた安永物権法を一周読みましたが総則の時の佐久間民法総則と同じくそのボリュームに打ち勝つことができず、これまた呉基礎本に乗り換えました。これを読んで巻末論証を丸暗記して過去問解いて(以下略)です。

(6)憲法基本権

 教科書指定されていたリークエ憲法の人権を読んでいました。呉基礎本中心にやりたかったのですが、いかんせん過去問を見ると理論面が重視されていたようなので、呉基礎本は定期試験にマッチしていないかなと思ったためです。リークエ中心の勉強はなかなか骨でした。

(7)債権総論

 呉基礎本読んで巻末論証覚えて過去問を解く、それだけです。他に何もしなくてもそれなりの成績は来ました。

(8)刑事訴訟法

 教科書指定されていたリークエ刑訴法を読んでみたものの、ナンバリングのわかりにくさに辟易として呉基礎本に乗り換えました(お決まり)。そしてこれを読んで巻末論証覚えて過去問解い(以下略)。

(9)行政法総論

 教科書指定されていた大橋行政法Ⅰを読み、そこそこ読みやすかったのでこれを中心に据えて適宜レジュメを参照しながら過去問を解くという勉強をしていました。呉基礎本を買おうとしたら行政法と民訴法と商法について未刊であることを知り、非常に落胆したことを覚えています。もしも大橋行政法が読みにくかったらどうなってたことか、、、

(10)刑法各論

 呉基礎本を読んで論証を覚えて過去問を解くという今までのパターンを行いました。また、シラバスで判プラが教科書指定?されていたのでこれもサラッと読んだ記憶があります(何も頭に残っていません)。結果はあまり芳しくなかったです。それなりにか書けた記憶があったので当時は釈然としませんでしたが、今になって考えてみると刑法各論は得意な人がいっぱいいて、彼らは授業で取り上げられているであろう学説対立や深い判例理解についてしっかりと学習していたので、呉基礎本ばかり読んでいた私の評価が相対的に伸びなかったのだと思います。
 それまで私は呉基礎本を盲信していたのですが、ここで初めて呉基礎本は情報量としてはかなり控えめであり、無敵の教材というわけではないことに気が付きました。

(11)憲法総論・憲法訴訟

 統治機構の授業の際に教科書指定されていたリークエ憲法を引っ張り出してきてこれを読み、過去問を解きました。
 また、生協の書店ぶらぶらしていたらなんとなく表紙に惹かれたので買ってみた憲法論点教室も読みました。わかった気になってたものの実はわかっていなかった概念(適用違憲や規制目的二分論等)について非常に分かりやすく解説されていて、とても気に入ったのを覚えています。暇だったので憲法判例の射程も読みました。
 もっとも、試験結果はそこまで抜群の出来というわけではなかったので、結局学部試験レベルの段階で高得点を取るコツとしては表面的な理解でも良いのでできるだけ広範囲をカバーするという点に尽きるのだなと感じました。

(12)商法(会社法)

 教科書指定されていたリークエ会社法を通読しようとしたところ、細かい条文知識ばかりの無味乾燥な記述に辟易して挫折しました(基本書通読段階で挫折したのはこれが最初で最後になります)。
 今までの科目と条文知識の細かさが段違いで、どのように勉強していくか右往左往した結果、最終的にはロープラ商法と過去問を用いて最初から演習ベースでインプットを進めていき、適宜リークエを参照していこうという勉強方法に落ち着きました。
 点数はそこまで伸びなかったものの、まあ最初の挫折具合から考えると持ち直したかなという感じなので、通読が苦手な方は最初から演習→インプット教材参照という順番で学習するのも手かもしれないですね。

(13)行政法(行政訴訟)

 教科書指定されていた大橋行政法Ⅱを読み、レジュメを適宜参照しながら過去問を解いて試験に臨みました。大橋行政法は読みやすく、情報量もかなりいい塩梅なのではないかと思います。

(14)民事訴訟法

 教科書指定されていたリークエ民訴法を読み、過去問を解いて試験勉強をしていましたが、理解しているようなしていないようななんとも言えない絶妙な感覚で止まっていました。そこで、何か良い本はないかと思っていたところ、勅使河原先生の読解民事訴訟法の表紙のかっこよさに惹かれ、これを購入して試験直前に読み進めました(あんまりよろしくない勉強法です笑)。これが中々分かりやすく、今まで分かったフリをしていた部分が浮き彫りになり、かなり理解が深まった覚えがあります。また、ロープラ民訴もサラッと読みました。
 最終的な試験結果は良くも悪くもなくという感じでした。

(15)労働法

 教科書指定されていた水町労働法を読み、過去問を解き、それでも時間が余ったため指定教科書と著者が同じである事例演習労働法を2周ほど脳内構成して試験を迎えました。
 事例演習労働法は水町労働法と親和性が高く、学者さんの本にしては珍しく解答例も載っているため予備校の講座を取ってない方にはかなりおすすめです!(これだけで予備試験・司法試験まで大丈夫とはあまり言い切れないですが)

(16)債権各論

 教科書指定されていた潮見イエローⅠ.Ⅱを通読しました。読みやすくはあったのですが判例と異なる説を取っていることが多く、併せて読んでいた呉基礎本と記載内容がかなり異なっていたので戸惑いました。
 もっとも、過去問を解いていたら京大の債権法はかなり判例批判寄りであることを知り、呉基礎本よりは潮見イエローの方を重視して勉強することとしました。
 債権法改正前の過去問は使い物にならず、過去問だけでは問題の蓄積が足りないかなと感じたため、ロープラ民法もさらっと読みました。

(17)行政法(国家補償)

 教科書指定されていた大橋行政法Ⅱを読んで過去問を解き、さらっとレジュメを確認したところ、試験範囲が狭かったのですぐに一通り終わってしまい、他の教材に手を出してみることにしました。ちょうど巷で人気があった基本行政法基本行政法判例演習をそれぞれ読んでみたところ、非常に読みやすくて感動した覚えがあります。
 なお、試験結果はこんな点数初めてというほどひどい点数を取りました。ちゃんと書けた気がするのであまり納得がいってないです。答案の取り違え説を今でも信じてます笑
 まあ、色んな教材に手を出すのは悪手ということでしょうね。

(18)商法(総則・商行為)

 教科書指定されていた北村雅史先生のスタンダード商法Ⅰ(商法総則・商行為)を読み、過去問を解きました。非常に薄くて読みやすかったので、おすすめです。商法総則や商行為法は司法試験や予備試験ではそこまで重きは置かれていないようなので、学部試験から司法試験までこの本程度の情報量で必要十分だと思います。

(19)商法(手形・小切手)

 教科書指定されていた早川徹先生の手形小切手法を通読し、過去問を解きました。また、この授業の試験勉強をしていたのが3回生の1月だったので、予備試験を意識してアガルートの重問と論証集を購入しており、これの手形小切手法の部分もさらっと一周しました。
 手形小切手法は予備試験の短答や京大ローの試験で地味に出る(実際どちらでも出ました)ものの、あまり勉強時間はかけたくない科目であるため、学部試験に向けて勉強をしていたことは後になってかなり響いてきました。予備試験の勉強をするにあたり1番役立った定期試験科目かもです笑

(20)その他

 上記以外に一般教養科目、政治系・基礎法学系の専門科目、特別講義、ゼミなどを取っていましたがこれらについては割愛します。

2.予備試験対策に使用した教材

(1)短答

 基本的には短パフェを周回していました。それと隙間時間に短答攻略クエストというアプリの無料部分のみをぽちぽちとやっていました。短パフェは解説部分が骨太なので一周目に解説部分で大事そうなところに線を引いて二周目からは問題を解いた後に線を引いた解説部分だけに目を通すという方法で周回の高速化を図っていました。
 また、過去問を解いているだけだと点の知識しか身につかないため、これを線の知識にするために判例六法も使っていました。具体的な使い方としては過去問で出た判例や条文に印をつけ、更に学説知識も追記し、二周目からは追記された学説知識や印を付けた判例、そして全ての条文を素読していくという方法で勉強していました。商法だけは判例六法を素読するのがしんどかったのと図表が欲しかったので、判六の代わりに商法の択一六法を使用していました。
 理想を言えば全科目択一六法なり逐条テキストなりに一元化できれば良いのでしょうがいかんせん7科目分揃えるのはお値段的にしんどいので商法以外は判六で我慢していたというのが実際のところです(判六は余白小さすぎる、、、)。

(2)論文

①基本7科目
 アガルートの重問(憲法以外※憲法は読み解く合格思考を主に使用)と論証集で基本的事項をさらいました。
 過去問演習について令和年度分は辰巳のぶんせき本を用いました。それ以前の分の過去問演習は民法と民訴法は実戦演習シリーズを使用し、刑法は伊藤塾の予備赤本を使用し、商法は論文演習会社法を使用し、行政法は行政法解釈の技法を使用し、憲法は合格思考憲法に載っているものだけ解きました。刑訴法はお金をケチってネットに転がっている再現答案でなんとか頑張りました笑
 とにかく、短文事例問題集・過去問・模試・基本書などから得た知識を論証集に一元化していくことが論文対策のコアな勉強になってくるのかなと思います(答案を書く練習は別で必要ですが)。
②選択科目(労働法)
 学部試験の時に使っていた事例演習労働法を短文事例問題集と位置付けこれを周回し、論証集は辰巳の一冊だけで労働法に掲載されている趣旨規範ハンドブックで対応しました。過去問2年分はぶんせき本を用いて一応解きましたが司法試験の過去問までは手を出していません。
 予備校講座・テキストを買うのをケチったため上記教材を使用することになりましたが、知識量としてはかなりギリギリだったと思います。
③実務基礎科目
 民実は大島本基礎編でインプットし、大島予備試験過去問解説本で過去問演習をしていました。要件事実を覚えるのが少し苦手だったため補助的にアガルートの民実一問一答も使用しました。
 刑実は定石本でインプットを行い、予備赤本を用いて過去問演習をしていました。

(3)口述

 民事は大島本要件事実編民法論証集伊藤塾再現(伊藤塾模試に申し込めば入手可能)を用いていました。
 刑事は基本刑法Ⅰ・Ⅱ基本刑訴Ⅰ・Ⅱ伊藤塾再現を用いていました。基本刑法Ⅰを通読するのが億劫で最初は徹底チェック刑法の総論部分を読みましたが、その後他の受験生が使用している教材と違うものを使用するのが怖くなり、結局基本刑法Ⅰを通読する羽目になりました(徹底チェック刑法自体は神教材です!)。
 基本的に多くの受験生が上記の教材を周回して試験に臨んでくると思うのであまり変則的なことはしない方が良いと思います(個人的には基本刑法Ⅰについては徹底チェック刑法で代替できるかもしれないと感じてはいますが)。

3.教材についてのアドバイス

(1)短パフェ・合セレ論争について

 短パフェ合セレ論争について私は時間がない人は合セレ+(必ず)インプット教材の往復で対応して、時間がある人は短パフェ+インプット教材の往復で対応するのが良いという立場です。
 短パフェのいいところは一周しただけで短答知識について実質二周程度(しかも違う角度から問うてくる問題に対応する形で)できていること・シェア率が高くかつ一番網羅性のある教材なので他の教材の使用者に比べて試験直前に他の受験生の方が知識量が多いのではないかとあまり不安にならないことだと思います。多くの受験生が短パフェを使用してくるため、よほど時間がない人以外は短パフェ使うのが安牌だと思います(合セレで合格している方もそれなりにいるので短パフェの方が精神的な安心感が違うという程度のことだと思いますが)。
 いずれの過去問集を使うにせよ過去問を解くだけで終わらせず判六や択一六法その他インプット教材と絶えず往復して知識を線にしていくことが最重要です。

(2)短文事例問題集と論証集について

 短文事例問題集と論証集は市販で良いものがあまりないため予備校のものを購入してしまうのがおすすめです。どうしても市販のもので対応するとなると論証集は辰巳の趣旨規範やアガルートの合格論証集(公法系は未刊だったはずです)を用い、短文事例問題集は伊藤塾の予備赤本・辰巳のえんしゅう本・ロープラ(解答例はない)等を用いることになるのでしょう。
 短文事例問題集と論証集をアガルートや加藤ゼミナールで買っても値上がりしていなければ15万いかないくらいだと思います。市販の論証集と短文事例問題集を揃えてもそれなりにお金はかかるのでここは思い切って予備校に投資してしまうのは個人的にはアリな選択肢なのかなと思います。

(3)答案の書き方はどう会得するのか

 丁寧に「答案の書き方」を紹介してくれている教材はあまりありません(徹底チェック刑法の最初の講に刑法の答案作成方法がそれなりに詳しく書かれていますが、それ以外の科目の答案作成方法が書かれた教材について私はあまり知りません)。また、仮に「答案の書き方」だけを丁寧に解説してくれる教材があったとしてもそれだけで答案の書き方を演繹的に会得することは出来ないでしょう。結局のところ実際に問題を解き、解答例を見て、大まかなイメージを掴んでからでないとネットに溢れる「答案作成テクニック」のようなものも実感を伴った処理手順として受容しづらいのです。
 したがって、答案の書き方は重問などの短文事例問題集の解答例を見てそれを真似ながら帰納的に会得していくほかないと思います(少なくとも問題提起→規範→あてはめ→結論という大原則を抽象的には理解していることを前提として、の話ですが)。ある程度答案の型を帰納的に理解したらそこで初めて「答案作成テクニック」のような演繹的なものも実感を伴った処理手順として受け容れることができるということです。
 まずは短文事例問題集の解答例を問題提起→規範→あてはめ→結論に分解してマーカーなり囲いなりで可視化させておき、これを真似して書くことが答案作成方法会得の第一歩です。

(4)結局どんな教材がいるのか

①短答
・過去問集(必須)
→短パフェや合セレなどです。最近はアプリもありますが私は紙媒体の方が書き込みがしやすくて好きなのでアプリはあくまでサブに留めていました。
・インプット教材
→判六や択六、予備校の入門テキストなどが良いと思います。短答は条文と判例の知識がメインでたまに学説知識が出るという感じなので条文と判例がしっかり載ってるものを短答インプット教材と定めるのがおすすめです。繰り返しになりますが過去問とインプット教材の往復が超絶大事です。直前期は過去問や模試から得た情報を一元化したインプット教材を回すことになります。
②論文
・入門書
→呉基礎本や有斐閣ストゥディア、予備校の入門講座テキストなどがこれに当たると思います。
 初学者がいきなり基本書を読んでインプットするのは骨なのでまずは入門本から入るのをお勧めします。
・基本書
→佐久間本や安永物権、リークエなどがこれにあたります。
 長いし読みにくいし予備試験対策としては情報量過多なので通読してメイン教材として使うというよりも辞書的に使うのが良いと思います。入門書には載っていないことも勉強している過程でそれなりに出てくると思うので、一応各科目一冊ずつくらいは定評のあるものを持っておくと安心です。刑法と刑訴本についてはどうせ口述で基本刑法と基本刑訴を使うことになるのでこれらを揃えておくと良いでしょう。
・短文事例問題集
→アガルートの重問、加藤ゼミナールの基礎問、伊藤塾の問研などがこれにあたります。市販のものなら予備赤本のオリジナル問題部分やえんしゅう本のオリジナル問題部分やロープラがこれに当たると思います(ロープラは解答例がないため個人的には問題集ではなく読み物だと思っていますが)。
 論点抽出方法・基本的な論点知識・答案作成方法などを習得するためにほとんど必要不可欠な教材と言っても過言ありません。とりあえず論文対策で何をするか迷った方はこれを回しておけば間違いないでしょう。ただし事実の使い方や少し捻った論点などは短文事例問題集では学習できないため、「重問だけ」「問研だけ」というのではなかなか受かりにくいとは思います。最終的には過去問を通じて学習することが重要です。「重問だけ」「問研だけ」というのは青チャートのみで京大数学に挑むようなものです(運が良ければ耐えますが基本的には耐えないという意味で)。
・論証集
→アガルートの合格論証集や辰巳の趣旨規範本、伊藤塾の論ナビや加藤ゼミナールの総まくり論証集などがこれにあたります。
 論点学習+一元化教材としての役割を有する教材です。論点抽出・答案作成・事実の使い方など論点理解以外の重要な要素は論証集のみでは学習できないため、未改造の論証集だけ回すというのはあまり良くないですが、やはり最後に物を言うのはどれだけ重要論点についてしっかり書けるかということですので、最終的にはこれを回しながら論点を覚えていく作業は必要になってくるでしょう。
 重要条文・応用的論点・処理手順や事実の使い方など論証集に載っていないこと(加藤ゼミナールの総まくり論証集には割とこれらも載っています)については他の教材で学習し、それを全て論証集に一元化しておくと改造済みの最強の教材が完成します。ここまでしたらあとは論証集だけぐるぐる回していくという勉強でも良いかもしれません。
・過去問解説本
→ぶんせき本や予備校の過去問講座、実戦演習シリーズ、予備赤本等がこれにあたります。
 過去問は応用的な論点に対する学習・時間配分・答案作成方法の会得等様々な学習効果のある最高の教材なので、必ずやるべきです。予備試験に関しては採点実感がなく、出題趣旨も激薄なのでなんらかの解説本を購入し、解説や模範答案・再現答案を入手することが不可欠でしょう。
 A答案やC答案の相場を知るために令和年度についてはぶんせき本を購入し、それ以前の科目については自分の時間的余裕に合わせて学習が必要な科目について個別に実戦演習シリーズなどを購入することがおすすめです。
・副読本
→憲法判例の射程や憲法論点教室、読解民訴などがこれにあたります。
 勉強をしていてわからないことにぶち当たった時や自分が勘違いして理解している部分について副読本を読むと理解がとても整理されます。メインとして使うわけではないですが、辞書的に適宜参照して大事なポイントを論証集に一元化するという使い方ならかなり有用な教材です。時間がある人なら通読してみても良いでしょう。
・判例集
→百選や判プラ、基本行政法判例演習などがこれにあたります。
 判例に対する深い理解については予備試験段階ではそこまで必要ないので、これらをやり込むのは少し非効率かもしれません。もっとも、そうは言っても公法系科目など判例理解が特に重要となる科目もあるため、持っておいて損はないと思います。基本行政法判例演習は神教材です。
③口述
・民事
→要件事実を学習する教材(ex.大島本要件事実編)、民法論点を学習する教材(ex.論証集)、過去問(伊藤塾再現)は必須です。
 民事執行保全・民訴手続き・法曹倫理については過去問で出てきたもので対応可能だと思いますが不安ならば何か薄めの教材を用意しても良いかもしれません。民事執行保全や法曹倫理については大島本の基礎編の後ろに記載があります。民訴手続きについてはストゥディア民訴法など薄めの本がおすすめです(民訴手続きについては近年ではあまり出題されていないのでいらないと思いますが)。
・刑事
→構成要件の定義を中心に刑法知識を学習できるテキスト(ex.基本刑法Ⅰ.Ⅱ)、刑訴手続きと論点について学説に立ち入りすぎずに理解できるテキスト(ex.基本刑訴Ⅰ.Ⅱや定石本)、過去問(伊藤塾再現)が必要になります。
 刑法については基本刑法以外のテキストを使用している人はあまりみたことがないので普通に基本刑法を使っておくのが吉です。刑訴法については基本刑訴派と定石本派で分かれますね。浅く広くカバーしたいなら基本刑訴を用い、深く狭くカバーしたいなら定石本を用いることになるような気がします。両方持っておいて損はないでしょう。
 法曹倫理については過去問をさらって職務基本規程の重要条文を素読しておけば足ります。一応定石本の巻末には法曹倫理について掲載されてるのでこれを参照するとより良いと思います。

(5)教材は何周すれば良いのか

 結論として教材は何周すれば良いというのはありません。周回は手段であって目的ではなく、あくまでも目的はテキストに書いてある内容を血肉とすることだからです。
 もっとも、短答過去問集・短文事例問題集・論証集について一周すれば身に付きましたなどという人は見たことがないため、少なくともこれらについては少なくとも2.3周はすることになるのではないでしょうか。
 論文過去問や模試、副読本などに関してはそこから学んだことを論証集などに一元化しておけば何回も回すことは不要だと思います。

(6)憲法はどんな教材を使うべきか

 憲法は三者間問題や審査基準定立など他の科目と答案の書き方が異なる部分があり、また重問など他の科目で定評ある教材の評判があまり良くないので、なかなか学習しにくいと思います。
 私は憲法のインプットは学部試験の際にリークエで行い、予備試験対策としては読み解く合格思考憲法・アガルートの論証集・予備試験過去問(令和年度+合格思考に掲載されている分)を用いました。また、重問も集会の自由など私が苦手としていた部分だけパラパラと眺める程度には使用しました。
 重問やアガルートの論証集の憲法の評判が芳しくない理由としては解答例の多くが判例の規範で書かれており、目的手段審査で統一されていないため、初見の問題の「書き方」を学習することができないからだと思われます。確かに重問やアガルート論証集で基本的な憲法の問題の処理手順を学ぶことは難しいと思います。
 そこで、私は世間的に評判の良い教材である読み解く合格思考憲法を使用しました。読み解く合格思考憲法はどこから引用した見解なのかよくわからない見解に基づいているように見える記述が散見されるものの、憲法の処理手順を大まかに学習することができるとともに、学んだ処理手順を巻末に少しだけ載っている旧司法試験、予備試験、新司法試験の問題演習を通して実際に使用することができる点で全体としては良い教材だと思います。
 しかし、実際に私が予備試験の憲法でA答案を取ることができたことに大きく貢献したと感じるのはアガルートの憲法論証集です。というのも、R6の予備試験の問題(に限らず最近の予備試験・司法試験の問題に多い気がしますが)は判例の規範を当該問題で使用できるのか否か、判例の規範をどのように使うべきかといった点を考えさせるという判例理解重視の問題であったため、典型的な目的手段審査の処理手順をどれだけ使いこなせるかというよりも判例の規範をどれだけ知っていて使いこなせるかということが肝になっていたからです。重問に関しても当初勉強を始めた際に開いた時にはあまり使えないなと思ったものの、判例の規範を問題に落とし込むと言う点ではそこまで悪くない教材だと思います。つまり、アガルートの論証集と重問を「判例教材」として捉えたら割と有用だと言うことです(正確性や網羅性は学者さんの出す判例教材にかなり劣りますが予備試験に関してはこの程度の判例学習で足ります)。
 結局、憲法は①呉基礎本、基本憲法、予備校テキスト等でインプットを行う②合格思考や加藤ゼミナールの総まくり論証集などで基本的な書き方を学ぶ③アガルートの論証集や重問、その他百選など判例教材で判例の規範について学ぶ④予備試験過去問を解きながら今まで蓄積した処理手順を確認していく、という形で学習していくというのが良いのではないかと私は思います。
※アガルートの論証集や重問は2026年度からリニューアルされているようなので私が使っていたものとは内容が大幅に違う可能性があります。この点にご注意ください。

(7)司法試験過去問演習は必要か

 必要ないです。司法試験の過去問まで解いている暇があるのなら短文事例問題集や予備試験の過去問、論証集をぐるぐる回したり実務基礎の勉強に力を入れておく方が予備試験対策としては得策だと思います。
 勿論余裕があるならやっても良いと思います。

(8)論証集は何が良いのか

 論証集として世に出回っていてそれなりのシェアを獲得しているものは伊藤塾の論ナビ(市販されておらず)、アガルートの論証集(現在公法系以外は市販されている)、加藤ゼミナールの総まくり論証集(市販されておらず)、辰巳の趣旨規範ハンドブック(市販されている)が挙げられます。
 私は予備試験対策としては基本7科目はアガルートの論証集を使用しており、労働法に関しては市販されていた辰巳の一冊だけで労働法に掲載されている趣旨規範ハンドブックを使用していました。現在司法試験対策として加藤ゼミナールの総まくり論証集を使用しています。伊藤塾の論ナビについては見たことがないのでここでは言及できませんが、それ以外の3つの論証集についてはここに少し私の独断と偏見による雑感を述べていきます(※趣旨規範ハンドブックは労働法を使用しただけなのであまり解像度高くないです)。
①網羅性について
→総まくり論証集が圧倒的です。辰巳の趣旨規範ハンドブックもそれなりかなと思います。アガルート論証集がこの3つの中では1番網羅性に関して心許ないと思います。ただ、総まくり論証集に掲載されていなくてアガルート論証集に掲載されている論点や知識もそこそこあるので単純に情報量として包摂関係にあるわけではないです。
②回しやすさについて
→①の網羅性において述べた順番を逆にしたものがそのまま回しやすさにおける順番になります。やはり網羅性と回しやすさはトレードオフの関係になります。
③短文事例問題重問との親和性
→重問に対してはアガルート論証集、加藤ゼミナールの基礎問に対しては総まくり論証集が親和性が高いでしょう(当たり前ですが)。辰巳の短文事例問題集はえんしゅう本が挙げられますがあまりシェアが高くないため趣旨規範ハンドブックと親和性の高い短文事例問題でそれなりにシェアの高いものはあまりないかもしれません。
④書き込みのしやすさ
→アガルート論証集と辰巳の趣旨規範ハンドブックは余白がそれなりに多くて書き込みがしやすいです。一方で総まくり論証集(製本版)は文字が小さくて情報量が多い上に余白が狭いため書き込みはしにくいです。ただ、総まくり論証集は素の情報量が多いため、書き込みをする必要が前二者に比べたら低いと考えるとこの点はトントンだと言えるかもしれません。
⑤正確性
→巷では総まくり論証集はわりかし正確で、アガルート論証集や趣旨規範ハンドブック(論ナビも)はあまり正確ではないと言われることがあります。この点に関しては正直なんとも言えません。どの論証集にも不正確な部分や断言しすぎな部分、文章がおかしい部分はありますし、これらが合格レベルに影響を与えることはあまりないでしょう(実際伊藤塾オンリーで短期合格されている方々は多くいらっしゃいます)。どの予備校論証集も正確さで言えばどんぐりの背比べですし、あんまり合否には影響してこないため、ここはそこまで気にする必要はないでしょう。
⑥その他特徴
→アガルート論証集はThe「論証集」という感じで論点以外の条文知識や処理手順、基本的概念の説明などは基本的には掲載されていません(なので適宜自分で補うか一元化を諦めて他の教材に頼ることになります)。一方で総まくり論証集はこれらの所謂論点以外の部分の記載にも相当の紙面が割かれており、その意味で「論証集」というよりも「まとめノート」に近いです。辰巳の趣旨規範ハンドブックはその中間という感じです。情報の一元化を重視したいなら総まくり論証集が良いですし、回しやすさを重視するならアガルート論証集が良いと思います。
 論証の書き振りについてはアガルート論証集はかなり長めの文章、総まくり論証集は短めの文章(ただし論証でない前提知識が書かれている部分の文章は長い)、趣旨規範ハンドブックはそもそも文章になっておらず趣旨や理由付けと規範を矢印を用いて対応させているという感じです。私は趣旨規範ハンドブックの独特な書き振りに関してはあまり肌が合わず、むしろきちんとした文章になっている前2者の方が好みでした(かなり好みが分かれると思います)。アガルートの論証は文章がかなり長く、その点を嫌う人が多いですがこれに関しては文章を丸々覚えるわけではなくて覚えるべきところを抽出して暗記し、それ以外の部分は理解するに留めておけば別にそこまで問題にならないかなと思います(私はこの点はあまり気になりませんでした)。
 憲法について、先述したようにアガルート論証集は判例を簡略化して三段階審査の順番に纏めたというようなテイストになっており、個人的には予備試験の憲法を突破する上でかなり役に立ったと感じています。一方で総まくり論証集は初めの方に答案の書き方が非常に詳しく書いてあるため、その部分はかなり勉強になるものの、判例引用に関してはあまり充実しておらず、引用の仕方としても「要点」としてあまり整理されていない順番で纏められてしまっています。判例学習も論証集で行ってしまいたいのなら世間の評判とは裏腹にアガルート論証集の方が正直やりやすいです。判例学習を判例教材などきちんとした教材で行う余裕がある方は総まくり論証集でもあまり不便はないかな(むしろ答案の書き方やアガルート論証集に載っていない知識・判例も掲載されている点で総まくり論証集の方が良い)という印象です。
⑦全体としての私の評価
 時間があって確実に合格をとりにいきたいのなら総まくり論証集を頑張って回し切るのが良いと思います。
 あまり時間がなくて情報量よりも回しやすさを重視するのならアガルート論証集がおすすめです。
 長い文章から覚えるべき部分を自分で抽出するのが苦手な人やできるだけ安く済ませたい人は趣旨規範ハンドブックがおすすめです。
 どれを使ったから合格できるとかできないとかはないと思うので各々に合ったものを使用すれば良いと思いますが、個人的には総まくり論証集を購入した時の全体としてのクオリティの高さには驚愕したのを覚えています。

※アガルートの論証集や重問は2026年度目標のものからリニューアルされているようなので私が使っていたものとは内容が大幅に違う可能性があります。この点にご注意ください。

4.最後に

 以上読んでもらうとわかる通り私は学部試験対策のために授業で指定された教材を使っていたため、結果的にそれなりの数の教材に手を出しています。もっとも、予備試験対策だけ考えるのならばメインで使用する教材は出来るだけ少ない方が良いです。最低限の教材だけ使用してこれに情報を一元化していき、最終的には一元化教材だけで事足りるという状況が理想です。
 もっとも、法律を学習していると入門書や基本書だけではどうにもわからない部分が出てきます。そのような点について調べるために使用する教材というのは(メイン教材として読み込むのは悪手ですが)辞書として一応手元に置いておいた方が便利です。
 つまり、多くの教材を手元に置いておきながら普段メイン教材として使用するのは最低限のものだけというのが快適に勉強することができてかつしっかりと知識を血肉にすることができる状況だと言えるでしょう。もっとも、実際には金銭的・経済的な制約が加わることになるため、少なくとも最低限の教材を揃えてこれを回すということが現実的な教材に対する向き合い方になってくるかもしれません。
 まとまりがなく読みにくいnoteだったかと思いますがここまで読んでくださってありがとうございました!!

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