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「彼女」か「お金」か「アイス」で、「彼女」を選べなかったお話
問い
先日、パートナーと一緒に免許合宿に行ってきたのだが、高速教習をしている際に、若めの教官からこんな質問を投げられた。
「①彼女と一生デートできる、
②1億円もらえる、
③全国のアイスをいくらでも食べられる、
この3つやったらどれを選ぶ?」
私はこの質問に即答することができなかった。
背景
スクール
今回の免許合宿で訪れたドライビングスクールは、田舎の町の比較的小さなスクールであった。スタッフの数もそれほど多くはなかったが、教官同士仲が良いようで和気あいあいとした雰囲気だったため、落ち着いて教習を受けることができた。
また、担当してくれた教官のほとんどが私と私のパートナーを認識しており、教習では優しく明るく接してくれた。教習中の車内で雑談をするときも、まるで友達のような距離感だった。
アイス
ところで、私は大のアイス好きである。
スーパーに売ってあるアイスは多分ほとんど食べたことがあって、口に入れたらアイスクリームか、アイスミルクか、ラクトアイスか、くらいは簡単に判別できるくらいにはなっている。
免許合宿中にも箱アイスを複数個買おうとして、パートナーに止められたくらいだ。
そして、これがパートナーを通して教官達にも伝わり、高速教習の際に冒頭の質問を受ける羽目になってしまった。
この質問を受けた瞬間、私は黙りこくった。
正解
ちょっと弁明させてくれ。
いや、もちろん、分かっている。
選択肢が出され終わった瞬間、いや、1つ目の選択肢が出された時点で、
「そりゃ、もちろん彼女ですよ!」
と即答すれば、正解だったことくらい分かっている。
私が質問を受け、約5秒間黙りこくったのは、その間に脳をフル回転させ、
①彼女と一生デート、②1億円、③全国どこでもアイス、
の3つの選択肢の中で、最善の選択をするために、様々な考えを巡らせていたからだ。
別の言い方をするなら、コミュニケーションにおいての正解より、私とパートナーが幸せになるための利益を優先して考えていた。
あの質問は、教官本人が言った言葉そのままなのだが、見ての通り全く前提・定義がない。
故に、選択肢の定義次第でだいぶ選ぶべきものが変わってくるのだ。
答え合わせ
教官:
「①彼女と一生デートできる、
②1億円もらえる、
③全国のアイスをいくらでも食べられる、
この3つやったらどれを選ぶ?」
脳内:
この問題を考えるにあたって、
そもそも、私もパートナーも、微塵も別れる気はないので、①、②、③の選択肢において、私とパートナーは一緒にいることが前提とされる。
①から考えてみるが、
まず、この「彼女と一生デートできる」という選択肢が「一緒にいるかいないか」という意味であるならば、もう別れないことは当たり前なので、①の選択肢はもはや必要なくなる。
一方で、「デートでお出かけや旅行することができるかできないか」という意味でも捉えられる。しかし、③の「全国のアイスをいくらでも食べられる」という選択肢を見てみると、こ~っれはどう考えても全国どこでも旅行できるという前提だと思う。
(アイスというならご当地のソフトクリームなどももちろん含むだろうが、私がいる場所にアイスを持ってくるにしては、絶対に途中で溶けるので無理がありすぎると思う。)
したがって、③の選択肢で日本でのデートは十分カバーすることができるため、③の選択肢でカバーされない、かつ、選択肢として意義が残る①の最終形は、
「(海外でどこでも)彼女と一生デートできる」
である。
残りは「1億円」か「アイスを食べる名目の全国旅行」かということになるが、①と③の選択肢はどちらも「できる」という可能の意味が含まれている。デートも全国のアイス巡りも、制限なく「できる」という前提だとするなら、普通に考えてお金はたんまりあることも前提とされるべきだ。
よって、ここで②の選択肢を完全に省くことができる。
また、いくらでもお金があるならデート中に、いつでもアイスは食べられるので、③の中にもはやアイスという言葉がある必要もない。
結果として残るのは、①と③にそれぞれ解釈を加えた
「(お金がいくらでもある前提で海外どこでも)彼女と一生デートできる」
or
「(お金がいくらでもある前提で)全国のアイスをいくらでも食べられる」
の2つであり、簡単に言えば、お金がいくらでもある前提でパートナーと一緒に、海外旅行しかできないか、国内旅行しかできないかに落ち着くのだ。
う~、海外を取る方が人生楽しそうな感じもするけど、日本の料理とアイスもおいしいしなぁ~
これはどっちを選ぶべきだ….。
これを考えていた間が約5秒。
漫画やアニメなどで、時間の流れが遅くなるか止まるかして、それぞれが自分の思考に入るシーン(高田ちゃんの妄想をする東堂など)はよく見かけるが、このような描写にかなり近い形で、実際に現実でも瞬時に思考が回ったので、少し自分でも驚いた。
事故などの自分の身に何か危ないことが起こったときに、自分以外の時間がとても遅く感じることがあるというのもよく聞くが、似たようなものなのだろうか…。
結
日常生活において、時々定義や前提のない質問が飛んでくることがある。
今回のようなコミュニケーションや倫理に関しての問題であれば、つべこべ考えず一般的な正解を言うことが正しいが、一方で、組織の問題であったり、マネジメントに関することなど、定義をしっかりつけなければならない問題もある。
問題に対してどう取り組んでいくのかも重要だが、その前にまず定義の必要性の線引きをはっきりさせることも重要であると感じる。
今回のnoteはこれくらいにしておこうか。
ちなみに余談だが、約5秒の沈黙後、後部座席にいたパートナーによる秀逸なツッコミでその場は和み、教官も大爆笑。後にこのことも説明し、納得してもらえたようだった。
本当に良いパートナーを持ったと思う。
お世話になった教官達も本当にありがとうございした。