日記#15
久しぶりに散歩をした。
昼間は眠気に抗えなかったため夜に出た。
雨がポツポツ降っていたので折りたたみ傘を差した。普通の傘は折れていて使い物にならなかったから仕方なく折りたたみ傘にした。
久しぶりの外の空気。
夜ってこともあって澄んだ空気が心地よい。
雨が傘を打つ音はハッキリしない冴えない音を聞かせてきた。
道は暗く、足元が見えずに何度も雨が作る罠にハマってしまった。寒いし、何度も罠にハマったから足に水が染みたけれど、嫌な気分はしなかった。
理由は明白であった。
自惚れなのは重々承知だけど、この天気が私の気持ちを表してくれていると思ったからだ。
ここ1週間ほど落ち込み、塞ぎ込んでいたのでみんなの前で泣いて慰めて欲しかったけど、そんな事はできない。だからこの雨が私の代わりとなってこの広い土地に涙を降り注いで、みんなに知らせてくれているんだ、と。
あまりにも自惚れだけど、そう思わざるを得ない程心地よい雨だったのだ。
しばらく歩いた後、小腹も空いたのでコンビニに寄った。いつも店員さんはレジに常駐していないのに今日は何故かレジにずっと立っていた。
私の服装が怪しかったのだろうか。
そんな事はどうでも良く、今は自分の小腹を満たせるのに最適な食品を必死に眺めていた。
15分ぐらい悩んだ末、菓子パンと酎ハイを取り、レジに置いた。店員さんは冷たい態度を取るのかと思いきや、案外丁寧に接客をしてくれた。15分ほどコンビニにしては長い時間ウロウロしていたのにも関わらず、店員さんの態度にはとても感心した。多分うざったかったと思うけど。
用も済んだし、もう良い加減寒かったので少し早いけれど散歩を切り上げて帰ることにした。
行きには気づかなかったけれど、信号機と電灯の明かりの色が水溜りに反射し、この時期と相まって紅梅と白梅を思わせた。
昼間の他所の家の木の紅梅や白梅よりも、夜の道路に輝く紅梅と白梅はなんとも心を和ませた。
たまに反射する活き活きとした葉の色もまた私を楽しませた。
まだ春はこれからと言うのに、私はもう春を満喫した様な気分になった。
帰ってきてから酎ハイを飲もうと思ったけれど、この心の暖かみを酒で流すのは勿体無い様で飲むのは辞めた。
今日はこのまま眠りにつきたい。
このまま眠りにつけば、もう悪夢を見る事も無く、暗澹とした気分もきっと晴れるだろう。
やっと待ち侘びた春が顔を覗かせてくれるだろう。ただ、そう思えるだけでもう満足であった。
たまには雨の夜の散歩も良いものなのかもしれない。