『ミライの源氏物語』を読んで
山崎ナオコーラさんの『ミライの源氏物語』を読みました。
「現代を生きる私は、平安時代の読者に近づく努力をするよりも、現代人としての読書の楽しい方を極める方向にシフトした方がいいんじゃないか」
「平安時代に近づく、という行為ではなく、今だからこそできる、という行為をやってみよう」(P16)
というコンセプトの元書かれたものです。
私も現在、古典を読むことには、現代とかわらない部分、差異などの、現代との距離感のなかで読むことには大賛成、かつ、そこにおもしろさがある、と思っています。でも…。
基本的にはすべてがそのとおり、本当にそのとおりなんだけれど、
じゃぁ、『源氏物語』を読んでみよう!ってなる人いないだろうなぁ、、という気持ちになる不思議な本でした。
(そして勝手に推測するに、それは山崎ナオコーラさんの狙いとは真逆なのではないかという気がするところが複雑)
推測するに、その理由のひとつは、山崎ナオコーラさんの視線の鋭さと筆力の高さにより、「とっても読んだ気になってもうおなかいっぱい」感が出ることにあるのかな…と。
もうひとつは、本来雑誌連載だったものを一書にまとめた、という点からか、一節が非常にコンパクト(とても読みやすいです!)ゆえに、
斬り!!
終了
という感じがするからかな、と思いました。
そして、とても充実しているがゆえに、これを読んで、『源氏物語』を
すべて理解した気持ちになって「斬って語る」人を量産しそう、、という気がしました。
詳しく書くと身バレするので避けますが、山崎ナオコーラさんとは
物理的にものすごく共通点があるため、わかるぅぅというところがたくさんあっておもしろかったのも確かなのですが、なんか、こう、隔靴掻痒、、的な感じがありました。
良書です。そしてできればこれを通過点に本編にたどりつく方が多いといいな、と思いました。