【詩】概念タイムカプセル
朝顔の蔓を
蟻が登る
足先の毛のような
爪のような先端を
蔓にある毛に掛ける
刺激に驚き 朝顔は
じっとりとした
粘液を出す
五月の青空に
雲雀が飛び立つ
餌を求めてか
ひなを守るためか
その小さな舌先に風が
触れる
遠い海の底で
波が作られる時
浜辺のヤドカリが
遠くへ旅立とうとする
打ち砕かれた時間が
静かな砂つぶとなり降り注いだ後
わたしは誰の髪を梳くのだろう
蟻がかかえる重量や
雲雀の翼を圧した重力や
ヤドカリの眼に映る
星々の輝き
この蟻は数千匹のうちの一匹
この砂つぶは数万個のうちのひとつぶ
雲雀の姿は刹那の先に
もう見えない
星たちの煌めきを残し
ヤドカリが砂に潜り始めた
その時間は
須弥山の彼方の彼方