【詩】棺の家
自分の匂いのするものを
確かめるために
身体のあちらこちらを
弄っている
犬のように 少年のように
無駄ではないはずなのに
しばしば途方に暮れてしまう
それは聲なのだろうか
叫びなのだろうか
数えるたびに ひとつ ひとつ
消えてゆく
特別なことではなく
生活の上で生まれ捨てられるもの
時間とともに積み重なり
捨てていかなければ生きてゆけないもの
生まれ落ちた時から始まる
死の生成のように
少しずつ捨てられてゆく生
わたしが聞かなかったすべての沈黙の
浮遊する仮面たちの些細な言い訳
悲しみだけが
遠くの匂いを嗅ぎつける
氾濫する夜に
戻って来るものはあるのか
窓をつくる
扉をつくる
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