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【詩】糸の記憶

静寂の夜に
その闇の壁に
白い花を縫い付ける

朝を追いかける夜があれば
幾分いくぶんか しっとりとした月光が
糸の芯を通るでしょう

今夜 枕に夢を沈め
その香りを呼気の中にかくまう時
古いお伽話や神話の世界までもが
唇の先の先まで届くように囁き出す

幾星霜いくせいそうの恋人たち
うなづきながら嘘を笑う
闇を縫うしぐさに
溶け出した欲情の優先度が
痛みの先に伝わっていくでしょうか

気が付けば右腕についた歯形には
虹色のさびがこびりついて
一枚一枚剥がされながら
重ね合わされてゆく

縫い付けれらた花びらは
白を重ね 透明になり
夜の闇に溶けだして
後に残った糸だけが
記憶のようにひかる

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