100年前の東京の生活を伝える写真
100年前の東京を写した写真には、第一次世界大戦で勝者となった日本が、列強へとのし上がっていく様子が写っています。
ここにある写真は、今から97年前の1926年にフランスの写真家ロジャー・ドゥマスにより撮影されたものです。ドゥマスは、当時のフランスの実業家アルベール・カーンが設立した「地球映像資料館」プロジェクトの一環でこれらの写真を撮影しました。このプロジェクトは、カーンが私財を投じて世界各国へ写真家を派遣し、その国の人々や建物、文化・習慣などを記録するというものでした。
1926年は大正最後の年でした。大正期の日本は、第一次世界大戦中に中国大陸へ進出し、青島などをドイツから奪います。日本は占領した地域から権益を得、列強の地位へのし上がっていきました。
もっとも日本はいきなり列強になったのではなく、明治維新によりそれまでの農村封建社会から産業社会へ転換したことが基礎になっていました。
大正期になると、いわゆる大正デモクラシーにより民権が拡大し、経済も安定しました。これにより、劇場や絵画、文学といった文化も成熟することになりました。
ドゥマスが撮影した写真には、東京の人々が公園でくつろいだり、商店で買い物をしたりする様子が写っています。その後、昭和に入ると、金融恐慌により社会不安が増し、それを背景に軍部が台頭し始め、次第に戦争の時代に突入していきます。ドゥマスの写真からは、大正期がそうした時代を前にした束の間の平和の時であったことがうかがえます。
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