私が演芸にハマった話-(1話)講談師神田伯山さんとの出会い
ときどき寄席にいく。
いや、控えめに書きすぎた。ほんとのところ、多い時は月2回くらいのペースでいく。私の休みはひどい時で月に4回なので結構な頻度だ。
外に出るのが禁止されていたコロナの時期、他の人と同じように私もYouTubeを観る時間が増えていた。
元々人と会うのが好きで外に行くのも好きだった私にとってコロナの時期は辛く、半分うつ状態になっていた。
そんな時出会ったのが講談だ。
コロナより何年か前のテレビでお笑いグランドスラムにまだ二つ目だった神田伯山(当時は松之丞)さんと立川志らくさんが出演されていた。
落語は笑点で知ってはいたけど特に興味はなく、講談なんてもはや存在も知らなかった。
ただなんとなくついていたテレビから流れてきた講談、確かネタは寛永宮本武蔵伝の山田真龍軒だったと思う。
でも当時はネタの名前は分かるはずもなく、松之丞さんが出てきた時は
(なんか落語家にしちゃ若いけど妙齢のおじさん出てきたわあ)
が、感想だった(失礼)
特別目を惹いたわけではないけどそのままぼうっと眺め続ける。
最初に講談とはなんぞやという説明を少しして、それからネタに入るようだった。
へー講談ねえ、なんて呑気に構えていたその時
ネタに入った瞬間に空気が変わった。
確かにそこにいるのはさっきまで映っていた着物の知らない人なのに、私の目に浮かぶのは江戸時代と、宮本武蔵という侍だった。
なんの予備知識もなく、宮本武蔵が誰かも知らず、二刀流なぞワンピースのゾロしか知らないはず。
でも確かに私の目には物語の風景がありありと浮かんでいた。
お笑いとも、なんとなく知っている落語とも違う独特の言い回しと響くリズム、とんでもない早口なのに確実に耳に届く滑舌。
夢中だった。
あれは何分だったんだろう?
『このお物語はここからが面白くなっていくわけですがなんとなんと、お時間いっぱいいっぱい。この続きはまた、私を追いかけていただくということで。』
え!?!?
ウッソでしょ詐欺じゃん!!
思わずテレビの前で声に出た。
確実にその先が気になる展開なのに終わった。
なんだそのやり方あくどすぎる。
面白くて、続きが気になって気になって仕方がなかった。
だから、すぐYouTubeで検索…なんてしなかった。
面白かった〜続きは〜!とは思ったもののそのまま調べもせず、でもなんとなく頭の片隅になんだったんだろうなあアレ。という引っ掛かりが残っていた。
それから数年後、コロナが始まった。
誰にも会えず、どこにも行けず、鬱々としていた時に開いたYouTubeでたまたま流れてきたのが伯山ティービー。
一瞬であの時の人だ!と思い出した。
とりあえずおすすめに出てきた動画が『中村仲蔵』
運が良かったと思う。初心者にも分かりやすく聴きやすいネタで、かつ今なら断言できるが天才的に上手い神田伯山さんが語る講談なのだ。あのテレビを見た時と同じく夢中になって見た。
およそ40分。YouTubeにしてはかなり長い動画を見終えた後今度こそどこでなら生で観られるのか検索した。
驚いたことに東京である。週に1度は行っていた東京で見られるなんて!これほど東京のベッドタウンに住んでいたことを喜んだことはない。
ただまあ結局コロナ期間は行くことができず、近くにいると分かっているのに行けない悶々とした思いを抱えたまま伯山ティービーを身漁った。
そして2023年。ようやく外に出られるようになって初めての寄席。チケットの買い方も分からずふさわしい服も分からずアワアワしながらの初挑戦から寄席や演芸にハマっていくことになる。
初めての寄席に行くまでの緊張、寄席に魅せられる瞬間。
物語はこれから益々面白くなっていくわけですが今日のところはここまで。続きはまた別のnoteに書くことにいたしましょう。