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「センスの哲学」
今回は千葉雅也さんの、センスの哲学という本を読んだのでその感想を載せます。先に言っておくと、私はこの本は今年読んだ本の中で一番面白かったです。
千葉雅也の紹介
千葉雅也(ちば まさや)は、1978年に栃木県で生まれた日本の哲学者であり、作家です。東京大学教養学部を卒業後、パリ第10大学および高等師範学校で学び、東京大学大学院総合文化研究科で博士号を取得しました。彼は現在、立命館大学の教授として教鞭を執りながら、哲学や現代思想に関する著作を多数発表しています。
主な業績
千葉は、特に現代思想や美術、文学に関する著作で知られています。彼の著書には『勉強の哲学』や『現代思想入門』などがあり、これらは哲学を一般の読者にわかりやすく解説することを目的としています。最近の著作『センスの哲学』では、センスというテーマを中心に、音楽、絵画、小説、映画などの芸術的ジャンルを横断しながら、センスの本質やその育て方について考察しています
はじめに
『センスの哲学』は、「センス」という言葉に潜む曖昧さや危うさに迫る一冊です。当初、このテーマに対して私は興味が湧きませんでした。センスを言語化する行為自体がセンスを損なうように感じたからです。しかし、あえて読んでみることで新たな視点が得られました。
センスと言語化のジレンマ
本書を通じて感じたのは、「ダサさ」への直感的な嫌悪が、センスを規則やルールに落とし込むことで生まれるという点です。たとえば写真の構図や色彩にテンプレートを適用することが美しさを均一化し、個々の感覚を抑圧してしまうように思えます。
美しさとは学ぶものではなく、本来、潜在的に備わっているものであり、それを言葉やルールで縛ることに違和感を覚えます。
センスの本質
センスとは「意味の手前にある面白さ」、すなわち、身体で直接感じるものです。アートは即物的に、ただ「そこにあるもの」として楽しむべきだと本書は説いています。背景や意図に囚われず、ジャンルや固定観念を超えて、単純にその作品がもたらすリズムや差異を楽しむことが大切だと感じました。
具体的には、「存在するか否か」の二元的なリズムと、「存在の中の複雑な変化」を体感することがセンスの基盤です。これらを捉えることで、テンションの波が身体に生じ、それがセンスとして表れるのです。
脱意味的視点とセンスの磨き方
「脱意味的」とは、目的達成の間にある余暇を楽しむ姿勢を指します。現代の合理性優先の社会では、このような「遠回り」の重要性が忘れられがちです。しかし、予測誤差や偶然性を楽しむことで、新たな視点やオリジナリティが生まれるのです。
センスを磨くためには、規則やルールを一度平面化し、その上で新たな組み合わせや逸脱を試みることが重要です。偶然性や逸脱から生まれるエネルギーや無秩序さこそ、アートやセンスの本質であり、その先に個人のスタイルが形成されます。
人生とセンスの関係
人生におけるセンスとは、「安心」と「変化」のバランスを取ることに似ています。安定を求めつつも変化を楽しむ欲求を満たすためには、反復と差異を意識し、習慣と遊びを両立させることが鍵です。
特に、合理性を超えて不快から快への転換を楽しむ「マゾヒズム的」な感覚が、センスや生き様を豊かにするヒントとなります。
結論
センスとは、無駄なものを楽しむ余裕や、偶然性から新たな価値を創出する力にほかなりません。それは規則と逸脱の間に生まれるエネルギーであり、エロスや崇高さを内包するものです。本書を通じて、センスとは「人生そのものの楽しみ方」であると気づきました。
最後に
この本はセンスという一見言葉にすると、死んでしまうようなそんなナマモノの言葉について考えるそんな本でした。私自身もセンスって感じるもので言葉とかルールにするものではないなと思いながらも敢えて読んでいたのですが、めちゃくちゃ面白かったです。言葉にするとダサくなるのではなく、一般的な規則が手着ることがアートとしてふさわしくないと思っているらしいです。写真を撮ってたりすると、構図がどうとかそんな話はよく耳にします。より多くの人に感動してもらうためにはそれが必要なのでしょうけど、うまくとりたいというのは他者評価メインであり、なかなかお勧めする姿勢ではありません。自分が感動したい写真を取れればそれで充分なのです。無理に一般的な型にはまるのは面白くないのでしょう。
また、生き方に関しても書かれていました。
「何をどうつなぐのかはその人次第である。」
という言葉はめちゃくちゃ響きました。点と点をつなぐ間隔は、どこがつながるのか、というアンテナが必要であり、要素を増やしても意味がありません。点を生み出したならメタで認知できるように、時間をかけるか、初めからメタ的に認知する必要があるでしょう。
とにかく、just do it を貫き、習慣を作りつつ、修練を積み、何かわくわくする偶然、チャンスがあれば飛び込む。これはよく言われることですが、大事なことでしょう。
引き続き、頑張りましょう。