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剣道において刃筋が要件でなくなったらどうなる⁉️〜剣道具師の視点から〜

竹屋流の剣道具作りを通じていたった考えは、剣道は剣術(剣の理法)の合理的動きを基礎として成立し、剣道具はその為の道具であるという事である。

しかしながら剣道から刃筋(個人的には剣の理法の根本だと考えている)が失われ、「剣道と剣道具」をはじめ「剣道」を中心とした関係性が変化をおこしている。

剣道具師として気になる刃筋が失われたことによる剣道具の変化

  • 甲手の変化

  • 面布団の長さ

甲手の形

これについては以前にも書いているので詳しくは書かないが、甲手頭部分がパームグリップ型からフィンガーグリップ型が主流になっている。

現在の剣道界ではフィンガーグリップ型は手首の可動域が広く良い道具のようにいわれているが、刃筋の固定を考えるならそんなに必要のない動きである。

有名な居合の方も「斬る為に必要なのは骨を整えることである」とおっしゃっている

八段の先生が雑誌で「昔の甲手は手首が固かった。今の甲手は柔らかくなっていて良い。もしかしたら昔は柔らかいものが作れなかったのではないか?」と今のクネクネ手首が動く甲手を良い変化だと評価していたが、作り手側から考えるとそういう需要がなかっただけだと思う。
ましてや今より職人が多かった時代に作れなかったというのは、いかにその先生が剣道具師を下にみているかをあらわしていて非常に残念である。

刃筋の通らない打突が試合で認められそれを練習することによってそれに適したフィンガーグリップ型が主流となっていったと個人的には想像している。

フィンガーグリップ型が主流となったことにより、一層刃筋は失われている。
しかしながら刃筋がわかる世代がどんどんいなくなって、刃筋正しくなくても認められる打突が増えている。

そしてそれは剣道の打突として認められていくのである。

それによっておこる甲手の変化は傷むところの変化である。

手首の可動域を広く使うために刀だと動かなくて良い方向に動かす為、甲手の筒の小指側が痛むことが多くなっている。さらに手の動きが大きくなっているため革に負担がかかり革が持たない。そのため上級者と呼ばれる剣道家でも革の甲手が使えなくなっている。

雑誌で紹介されている名手が選ぶ剣道具で、革の甲手をみかけないのをお気づきだろうか?

「使いにくい」と「使いきれない」は正しく判断しないと剣道にも剣道具にも残念な未来にしかならない

面布団の長さ

甲手の話が長くなってしまったが、面布団が短くなっているのも刃筋を失った打突の影響である。

打突方法に関する詳しい説明は省くが、面布団が短くなる傾向は打ち方が変わらない限り解消されず、最終的な解決策は肩の部分の布団をなくすことになると思っている。

今主流の打突方法だと実際肩を上から打たれることはほとんどなく、どちらかというと正面からの衝撃に備えた方が安全である。

以上、剣道具師からみた刃筋が失われることによる気になる剣道具の変化である。

剣道と剣道具は表裏一体のものである。

剣道が変われば剣道具も変わる、剣道具が変われば剣道も変わる

「古き良き剣道具」という言葉を聞くが、それに見合った剣道が残っていけば「古き良き」ではなく、ただの「良い剣道具」が伝承されていくのである。

そしてそこには自分が考える「良い剣道」が伝承されているかもしれない。

何もしなければ、「正しい」「正しくない」「良い」「悪い」関係なく、今大多数のものがそれと認識されていく。

試合で旗の上がる打突、試合に勝てる剣道、勝っている人が使っている道具が良いと評価される。

そうならない為にも、剣道と人の関係、剣道と剣道具の関係、剣道と社会の関係等、皆で考える時であると思う。

少しでもより良い伝承のために、剣道に携わる剣道具師として未来に向けた提言である。

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