ウメケン(梅澤広将)

竹屋流剣道具師の家に生まれる。大学卒業後、父の元で剣道具作りの道に入る。剣道具作りの観…

ウメケン(梅澤広将)

竹屋流剣道具師の家に生まれる。大学卒業後、父の元で剣道具作りの道に入る。剣道具作りの観点からの剣道を日々考える。剣道と剣道具のより良い関係を追い求める。

マガジン

  • 竹屋流剣道具師からみた剣道の疑問

    剣道具師の立場からみえてくる剣道 剣道具師が抱く剣道に対する疑問等を書き留めておきます #剣道具師の疑問

  • 竹屋流剣道具についてby梅澤

    竹屋流剣道具師 梅澤 が竹屋流の剣道具について、作ってきたことで気付いたこと等残していきます。剣道家や剣道具に興味のある方の参考になればと思います。

記事一覧

剣道において刃筋が要件でなくなったらどうなる⁉️〜剣道具師の視点から〜

竹屋流の剣道具作りを通じていたった考えは、剣道は剣術(剣の理法)の合理的動きを基礎として成立し、剣道具はその為の道具であるという事である。 しかしながら剣道から刃…

剣道具製作 〜竹屋流梅澤派覚書〜 をなぜ書くのか

剣道具製作過程を書き残す 「剣道具製作〜竹屋流梅澤派覚書〜」 を書いていこうと考えている 何故そんなことを考えたのか、以下に今の考えをまとめてみた 剣道具は剣道の…

剣道の常識が変わり「剣の理法」を失う

私はここ数年の剣道と剣道具の変化に非常に危機感を抱いている。 大半の人が最近の剣道・剣道具の変化を前向きに進化・進歩ととらえているが、私には剣道から刀法が失われ…

剣道具の変化と剣道の変化 其の4 刃筋について

私は剣道具・剣道を研究する上で「刃筋」を剣道の原則的条件としている。 有効打突の条件にも「適正な姿勢」「竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突」「残心のあるもの…

剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の3

あくまで竹屋流剣道具師の立場からみた個人的考察です。 フィンガーグリップ型がもたらしたもの 1番わかりやすいのは「手首の可動域が広い」と思われている事だと思いま…

剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の2

甲手の形が昭和のパームグリップ型から現代ではフィンガーグリップ型に変わってきました。それによって起こった剣道の変化についての個人的な考察です。 フィンガーグリッ…

剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の1

「昭和の甲手」と「現代(主流)の甲手」は大きく形が変わっています。気づいている人もいると思われますが、その変化が何を意味しているかの研究は進んでいない様に思われま…

甲手についてのつぶやき 〜二分五厘の甲手の質問を受けて〜

二分五厘の甲手についての問い合わせをいただいて文章にまとめたので、上手く説明できませんが私心を述べさせていただきます。 うちで作っている甲手はサイズや材料は時代…

竹屋流梅澤派が目指す剣道具

竹屋流梅澤派が目指す剣道具は 「剣道の理想」を実行するための剣道具である では梅澤の考える「剣道の理想」とは 日本刀・木刀・竹刀は違う 竹刀で斬ることはできない …

剣道は正しく学び正しく行うものである

「正しい剣道」という言葉を聞くことがある 非常におかしな表現であると感じる 自分は「剣道そのものは正しいものであり、それを正しく学び正しく行う事が大事である」と…

剣道具の不易を考える

伝統としてある物事を後世に残していくためには、それ自体の本質を守りながら時代に合わせて変化していかなければならない 高野佐三郎先生が「剣道具は完成された」といっ…

竹屋流の甲手は「脱力を主体とした剣道」のための道具である

2023年1月号の「剣道日本」にて、竹屋流剣道具師として興味深い新連載が始まった。 タイトルは「脱力剣道の魅力 物理学者が解き明かす筋力に頼らない真の剣道」である。 …

剣道具について考える 「くの字オープン型甲手」の問題点

剣道具師の視点から「くの字オープン型甲手」が剣道に及ぼす影響について考える。 今主流となっている親指がつかず、手首の反りをつけているものを「くの字オープン型」と…

剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 着装編

剣道家の立場からのアドバイスは多々あるのですが、剣道具師の視点からのアドバイスはほとんど無いので、「力が入る」を克服するを考えてみます。 剣道は「心法」「身法」…

剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 竹刀編

剣道家の立場からのアドバイスは多々あるのですが、剣道具師の視点からのアドバイスはほとんど無いので、「力が入る」を克服するを考えてみます。 剣道は「心法」「身法」…

竹屋流剣道具を考える 甲手編

竹屋流剣道具の甲手は、「押し斬り」を前提として作られている。 剣道は竹刀を使っての刀法の修錬であり、刀法の手の使い方には大きく分けて「打ち手」「突き手」「受け手…

剣道において刃筋が要件でなくなったらどうなる⁉️〜剣道具師の視点から〜

剣道において刃筋が要件でなくなったらどうなる⁉️〜剣道具師の視点から〜

竹屋流の剣道具作りを通じていたった考えは、剣道は剣術(剣の理法)の合理的動きを基礎として成立し、剣道具はその為の道具であるという事である。

しかしながら剣道から刃筋(個人的には剣の理法の根本だと考えている)が失われ、「剣道と剣道具」をはじめ「剣道」を中心とした関係性が変化をおこしている。

剣道具師として気になる刃筋が失われたことによる剣道具の変化

甲手の変化

面布団の長さ

甲手の形

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剣道具製作 〜竹屋流梅澤派覚書〜 をなぜ書くのか

剣道具製作 〜竹屋流梅澤派覚書〜 をなぜ書くのか

剣道具製作過程を書き残す
「剣道具製作〜竹屋流梅澤派覚書〜」
を書いていこうと考えている

何故そんなことを考えたのか、以下に今の考えをまとめてみた

剣道具は剣道の為の道具であり、先人の知恵の結晶である
剣道を正しく伝えていくためには、正しく動くことができる道具が必要である
それを有効・効率的に使うことによって正しく覚えることができるのである

平成の終わり頃から剣道具の構造(形・使い方)に大き

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剣道の常識が変わり「剣の理法」を失う

剣道の常識が変わり「剣の理法」を失う

私はここ数年の剣道と剣道具の変化に非常に危機感を抱いている。
大半の人が最近の剣道・剣道具の変化を前向きに進化・進歩ととらえているが、私には剣道から刀法が失われあまり良い形で伝承されているようには思えなかった。
色々考えている時に、下の篠原信さんの文章を読んでなるほどと思った。

私は「竹刀は刀の代わりである」「竹刀は刀のように使うこと」ということは剣道の常識(前提)であると思っていた。
そのため

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剣道具の変化と剣道の変化 其の4 刃筋について

剣道具の変化と剣道の変化 其の4 刃筋について

私は剣道具・剣道を研究する上で「刃筋」を剣道の原則的条件としている。
有効打突の条件にも「適正な姿勢」「竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突」「残心のあるもの」とあり全て刃筋(刀法)が条件になっているように考えられる。
また最近よく読ませていただいているshinshinoharaさんの記事を読んでハッと気付いたのだが
「サッカーにおける手を使ってはいけない」=「剣道の刃筋正しく」
であり、剣道の

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剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の3

剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の3

あくまで竹屋流剣道具師の立場からみた個人的考察です。

フィンガーグリップ型がもたらしたもの

1番わかりやすいのは「手首の可動域が広い」と思われている事だと思います。
他にも

指先で操作しやすい

上から握れる

手首が柔らかく使える

といわれています。
上記のような特性により竹刀剣道における打突技術(有効打突をとる方法)が格段に進化したといわれています。
しかし

本当に打突技術(有効打突

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剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の2

剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の2

甲手の形が昭和のパームグリップ型から現代ではフィンガーグリップ型に変わってきました。それによって起こった剣道の変化についての個人的な考察です。

フィンガーグリップ型がなぜ好まれるのか?

1番の理由は手首の可動域が広いことと指先での操作がし易いことによる竹刀操作の違いのためだと思われます。
ゆるい手首と指先での竹刀操作によって、パームグリップ型ではできなかった軌道で打突部位を捉えることができる様

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剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の1

剣道具の変化と剣道の変化〜竹屋流の甲手と現代の甲手〜其の1

「昭和の甲手」と「現代(主流)の甲手」は大きく形が変わっています。気づいている人もいると思われますが、その変化が何を意味しているかの研究は進んでいない様に思われます。

「竹刀と手の内」の関係が変わったことをあらわしている⁉️

自分たちが作っている竹屋流(昭和)の甲手はパームグリップを想定して作られています。
一方現代の甲手はフィンガーグリップを想定して作られている様に見えます。
パームグリップ

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甲手についてのつぶやき 〜二分五厘の甲手の質問を受けて〜

甲手についてのつぶやき 〜二分五厘の甲手の質問を受けて〜

二分五厘の甲手についての問い合わせをいただいて文章にまとめたので、上手く説明できませんが私心を述べさせていただきます。

うちで作っている甲手はサイズや材料は時代と共にかえていますが、構造はなるべく変えないよう心がけて製作しています。今までは昔ながらといっていましたが、最近では珍しくなりすぎて見たことのない甲手といわれることも増えてきました。

二分五厘は普段使いにしてもらえるような規格として設定

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竹屋流梅澤派が目指す剣道具

竹屋流梅澤派が目指す剣道具

竹屋流梅澤派が目指す剣道具は

「剣道の理想」を実行するための剣道具である

では梅澤の考える「剣道の理想」とは

日本刀・木刀・竹刀は違う
竹刀で斬ることはできない
それを承知の上で
梅澤が考える剣道の理想は

竹刀で刀法を実現することが剣道の理想であると考える

竹屋流梅澤派が目指す剣道具は
必ずしも競技において有利ではないかもしれない
必ずしも競技者にうける剣道具ではないかもしれない

それ

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剣道は正しく学び正しく行うものである

剣道は正しく学び正しく行うものである

「正しい剣道」という言葉を聞くことがある
非常におかしな表現であると感じる

自分は「剣道そのものは正しいものであり、それを正しく学び正しく行う事が大事である」と言われ成程と思ったことがある

いっぽう真面目に「正しい剣道とは何か?」と議論されていることがある

そのこと自体が剣道が直面している課題を表していると思う

剣道を正しく学び正しく行なっていれば、段階における上手下手はあるにしてもそれは

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剣道具の不易を考える

剣道具の不易を考える

伝統としてある物事を後世に残していくためには、それ自体の本質を守りながら時代に合わせて変化していかなければならない

高野佐三郎先生が「剣道具は完成された」といってからもうすぐ100年になる。
また戦後剣道が再開されてから70年が過ぎた。

その間、剣道具は大なり小なり変化をしながら今に至る。最近では「古き良き剣道具」というフレーズも聞こえてくるほどである。

個人的には、時を経て少しずつ変化をし

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竹屋流の甲手は「脱力を主体とした剣道」のための道具である

竹屋流の甲手は「脱力を主体とした剣道」のための道具である

2023年1月号の「剣道日本」にて、竹屋流剣道具師として興味深い新連載が始まった。

タイトルは「脱力剣道の魅力 物理学者が解き明かす筋力に頼らない真の剣道」である。

そこで語られている剣道は「脱力を主体とした剣道」であり、それは日本伝来の剣道に近いのではないかと書かれている。かなり共感できる文章である。

なぜなら自分が教わってきた本来の剣道具は「身を守りながら、身体に負荷をかけない」を前提に

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剣道具について考える 「くの字オープン型甲手」の問題点

剣道具について考える 「くの字オープン型甲手」の問題点

剣道具師の視点から「くの字オープン型甲手」が剣道に及ぼす影響について考える。

今主流となっている親指がつかず、手首の反りをつけているものを「くの字オープン型」と分類する。

剣道家ではなく剣道具師の視点から「くの字オープン型甲手」には、主に以下の問題が発生する。

力みが取れない

構えた時の姿勢が前傾になりやすい

刃筋の通った打突が難しくなる

打つではなく当てるようになる

打突後腕が上が

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剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 着装編

剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 着装編

剣道家の立場からのアドバイスは多々あるのですが、剣道具師の視点からのアドバイスはほとんど無いので、「力が入る」を克服するを考えてみます。

剣道は「心法」「身法」「刀法」の三法から成り立っていますが、その中で剣道用具(竹刀を含む)は「身法」「刀法」に関わっています。そして剣道用具は「力が入る」原因になりうる要素があります。

着装について考える

剣道は基本的に剣道衣・袴・剣道具を身につけて行いま

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剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 竹刀編

剣道上達のヒント 剣道具師の視点から「力が入る」を考える 竹刀編

剣道家の立場からのアドバイスは多々あるのですが、剣道具師の視点からのアドバイスはほとんど無いので、「力が入る」を克服するを考えてみます。

剣道は「心法」「身法」「刀法」の三法から成り立っていますが、その中で剣道用具(竹刀を含む)は「身法」「刀法」に関わっています。そして剣道用具は「力が入る」原因になりうる要素があります。

竹刀について考える

竹刀は競技の公平性と安全性という名目で規定が決めら

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竹屋流剣道具を考える 甲手編

竹屋流剣道具を考える 甲手編

竹屋流剣道具の甲手は、「押し斬り」を前提として作られている。

剣道は竹刀を使っての刀法の修錬であり、刀法の手の使い方には大きく分けて「打ち手」「突き手」「受け手」の3種類がある。構えた時は右手はやや「受け手」に近い形、左手はやや「打ち手」に近い形となる。

そう考えると、甲手の形の基本は「打ち手」と「受け手」の中間、軽く拳を握った形となる。

ここで「押し斬り」の条件を考えてみる。

物打ちが振

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