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無機化学演習-大学院入試問題を中心に-5章解説


例題 5・1

初見で解くのは難しいでしょう。以下のカリキュラムにも教科書の使い方として書いたと思いますが例題と章末問題を繰り返し解いて暗記することが重要です。この 5 章と 6 章は少し重いかもしれませんが半分以上やってきたのだからここであきらめないでください。

さて、解説に進みますが p91~93 は簡単にこの後重要になってくるポイントだけ示します。

・塩橋について
塩橋とはなにか、どんな役割があるのかという問題が章末問題にも出てきます。章末問題は実際の院試で出た問題ですからここは暗記が必要です。

・カソードとアノード
どちらがどんな役割を果たすのか、日本語で言うとなんなのか、しっかりと言えるようにしてください。

・標準電極電位
定義が非常に重要です。水素電極の標準電極電位をどの温度でも 0 V と定義する。そして各物質の電極とこの標準水素電極の電位差をその物質の標準電極電位として用いる。標準電極電位は還元反応として表したときの値と定める。

(1) 物理化学の内容ですがこの知識は絶対に覚えておきましょう。標準反応ギブズエネルギーが負の時その反応は自発的に進行する。正の時は自発的に反応が進行しない。この後の問題でもこの知識は絶対に必要です。

Latimer 図の解説は p94 に詳しく乗っています。酸化数の高い化合物を左端に、右端に酸化数の低いものというように書きます。化学種の間に書いてある数字は標準電極電位 E゜ で問題文に与えられています。

-1.18 という数字ですがこれは標準電極電位の値です。この値は還元反応として表したときの値と定められているのでした。つまり Mn²⁺ から Mn への還元反応の標準反応ギブスエネルギーが正ということになります。(標準電極電位を E゜とすると標準反応ギブスエネルギー G゜(eV)=-nE゜(V) より)

よって解説にもありますが Mn から Mn²⁺ への酸化反応の標準電極電位は 1.18 V であり標準反応ギブスエネルギーは負になるため反応は自発的に進行します。その結果 Mn 単体は Mn²⁺ へと自発的に酸化されます。

(2)数ある参加状態のなかでどれが最も安定なのかは Frost 図を見ればわかります。Frost 図とは Latimer図をグラフにしたものです。2 つの関係は二次方程式と似たようなもので Latimer図 が式、Frost 図が式のグラフといった感じです。ここで注意ですが Latimer 図は化学種の酸化数の高いものを左から並べていました。しかし Frost 図はその逆で酸化数の低い順に左から並べていきます。 Latimer図 をFrost 図にする方法を以下に示します。p96 にあるように 酸化数 0 の nE゜を 0 eV とし、そこから Latimer 図の符号の通りに E゜を傾きとして用いて次の酸化状態の  nE゜を求めます。

酸化数を小さい順に左から並べる。Mn は +1 の酸化数をとりませんが一応書いておきます。

酸化数(横軸) 0 の nE゜(縦軸)を 0 eV とします。

酸化数 +1 の状態を Mn はとらないので +2 の点をプロットします。p96 にもあるようにLatimer 図の符号の通りに E゜を傾きとして用いて次の酸化状態の  nE゜を求めます。横軸が酸化数 n で縦軸が  nE゜なことからもグラフの傾きが  E゜だとわかります。傾きが -1.18 ですから y=-1.18 x と考えるとわかりやすいかもしれません。酸化数が 2 なので X=2 として代入すれば酸化数+2 の時の nE゜は -2.36 eVとなります。このようにやっていけば Frost 図が完成するはずです。


完成した Frost 図より Mn²⁺が最も底部にあるので安定であることが分かります。

(3)標準機電力の求め方は解説を参照してください。標準機電力が正より標準反応ギブスエネルギーが負。よって反応が自発的に起こるということになります。

これとは別に p96 のように Frost図から不均化が起こるかわかる方法もあります。Mn²⁺ と Mn⁴⁺ を結ぶ直線よりも Mn³⁺ の点が上側に位置しています。これは Mn²⁺ と Mn³⁺ を結ぶ直線の傾きよりも Mn³⁺ と Mn⁴⁺ の傾きのほうが緩やかになっているので Mn³⁺ が Mn²⁺ と Mn⁴⁺ を結ぶ直線より上側に位置することが分かります。式でわざわざ nE゜を求めなくても傾きを比較するだけで不均化するかどうかが分かるのです。

(4)ただ酸化還元反応式の電子を消すために足し算引き算するだけではいけません。 その理由は標準反応ギブスエネルギー ΔG゜には加成性が成り立ちますが E゜は状態量ではないので加成性が成り立たないからです。(ある物質の酸化反応の E゜は 1 g でも 10 g でもかわりませんね。)

よって計算の仕方ですが酸化還元反応式の右に E゜、ΔG゜を書いて計算します。ΔG゜=-nE゜の n が電子数ですから忘れずに計算してください。求まったΔG゜を n で割るのも忘れないでください。

(5) MnO₄⁻ が水を酸化して HMnO₄⁻ になる反応を考えます。MnO₄⁻ が水を酸化し自身は還元される半反応式と、水が酸化される半反応式をまずは書きましょう。電子数をそろえるわけですがいろいろなそろえ方があります。電子数を 2 としてもいいですが 1 にするのが最も単純になると思います。そしてE゜は状態量ではなく反応に固有の値で反応係数には左右されません。ここはとても重要です。あとは (4) 同様に計算してください。

(6) MnO₄⁻  と Fe²⁺ のnE゜は異なりますがそこは気にしないでください。あくまでも重要なのは Frost 図における傾き  E゜です。同一化学種間での不均化するかどうかの問題と同じです。生成物どうしを結んだ直線の上側に出発物が位置しますから、出発物の nE゜の合計はの生成物のそれよりも高い、つまり出発物から生成物への反応の標準反応ギブスエネルギー Δ G゜は負です。よって反応は自発的に進行します。

例題 5・2

(1)最も安定な酸化数はその化学種の Frost 図において最も縦軸 nE゜の値が低いものです。よって答えは+2 となります。

(2)問題文にある 3d 系列とは Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn のことですね。3d 軌道に電子が入ってくる電子のことです。すでに Cu, Co, Fe が図に書いてありますから A~E に残り 7 つのうちどれかを入れていくことになります。解き方としてはそれぞれの原子の族番号に着目します。例えば E ですが安定な酸化数で +3 をとっています。これは答えがスカンジウムですがスカンジウムは 3 族に属しており通常は 3 つの価電子を放出して Sc³⁺ の状態をとります。同様に D は +4、C は +5、、、と酸化数をとることができますから属番号に着目して D は 4 族の Ti、 C は 5 族の V だとわかります。

(3)解説参照。標準反応ギブスエネルギーの求め方は解説の通り 2 通りあります。その 2 つの式を連立すると標準電極電位 E゜が Frost 図の傾きを示すということが分かります。

(4)  Frost 図における均化、不均化の問題です。例題 5・1 の (3),(6) を参照してください。

例題 5・3

(1) これは暗記してください。ギブスエネルギーが負の時に反応は自発的に進行します。また ΔG゜=-nE゜ (eV) より E゜が正の時に反応は自発的に進行します。

(2)
(a)平衡定数 K を求めろということは反応が平衡状態にあると考えろ、ということと同義です。問題文にある Q は反応濃度比と呼ばれる量であり、平衡状態においては平衡定数 K と等しくなるという分からもこのことが分かると思います。よって平衡状態ですから反応ギブスエネルギー Δ G に 0 、Q に K を代入すると答えが求まります。

ここで反応ギブスエネルギーとは生成系のΔG゜から反応系のΔG゜を引いたものです。一方のΔG゜は各元素の担体が標準状態において最も安定な状態を基準としてある物質 1 mol が成分元素から生成される反応における Δ G の測定値のことです。

(b), (c)普通に式変形をするだけです。答えの式は暗記必須です。

(d)活量とは理想溶液ではなく実在溶液における実質的なモル濃度のことでした。Q が反応濃度比と呼ばれていることから解説の計算は理解できると思います。

例題 5・4

(1)それぞれ暗記です。過マンガン酸イオン(酸化数 +7)は酸性条件では相手を酸化して自身は Mn²⁺まで還元されますが中性又は塩基性条件下では相手を酸化して自身は MnO₂(酸化数 +4) までしか還元されません。つまり酸性条件のほうが中性又は塩基性条件と比べて酸化力が強いということになります。

(2) p105 の表 5・1 にまとめられている式は暗記しましょう。この問題を解くのに必要な式は E=E゜- (RT/nF)lnQ です。ネルンストの式と言われる非常に有名な式ですから導出の仕方ごと覚えておきましょう。

あとは与えられた (RT/F)ln10 などの値を代入すれば答えが求まります。ここで log の計算が少しややこしいので下に式変形に必要な式をまとめておきます。


例題 5・5

(1)解説参照。

(2)なにも考えず電子 e⁻ の項が消えるように二式を計算してもこの問題は正解になります。しかし解説にあるように式の反応が右と左どちらに進むかはFrost 図を書かないとわかりません。解説の(ⅰ)と(ⅱ)のどちらが起こるかを考えて不均化と同じように判断します。

(3)

電池の起電力はネルンストの式より求まる E の差です。そして平衡定数と問題文に出てきたら当たり前ですが平衡状態を考えて問題を解くことになります。その時反応は見掛け上起こっていませんから電池の起電力ΔE は 0、Q=K となります。そして例題 5・4 でもあったように (RT/F)ln10=0.059 V ということを考慮し式変形します。ただこの問題ではすでに式変形後の形の式が与えられていますから問題ないと思います。

(4) logK=62.5 より K=10^62.5 で反応はほぼ完全に右側に進行することが分かります。
反応式はMnO₄⁻ + 8H⁺ +5Fe²⁺ → Mn²⁺ + 4H₂O +5Fe³⁺ です。
当然[MnO₄⁻ ]=0 です。

次に [H⁺] ですが 2 つのプロトンを持つ硫酸が 0.50 mol/dm³ より初期の水素イオン濃度は 1.0 mol/dm³ であることが分かります。そして MnO₄⁻ の初期濃度が 1.0×10⁻² mol/dm³ であることと MnO₄⁻ と H⁺ が 1:8 で反応することから 1-8×1.0×10⁻² で水素イオン濃度が求められます。

他のイオンについても同様に大学受験のような知識を使って求められます。
各イオンの濃度が求まったらそれぞれ値を代入していきます。平衡状態なのでカソードとアノードの電極電位は等しいです。アノードのほうが化学種がFe²⁺ とFe³⁺の 2 つで計算しやすいためアノードで計算しています。

例題 5・6

(1) AとBの間の直線は横軸に平行です。ということはA⇆Bの反応にはプロトンが関与しないことが分かります。よって A,B はM²⁺,M のいずれかです。またある pH で沈殿反応が生じるときには横軸に垂直な線となります。よって pH 依存性のある沈殿反応を起こすのは M²⁺の金属イオンですから A がM²⁺、B が M、C が M(OH)₂ だとわかります。

(2) (1) ができていれば図よりわかります。

(3)解答参照。

(4)解説参照。

5・1

(1) 2PbO・PbO₂
O の酸化数が -2 なので一つ目の Pb の酸化数は +2 です。二つ目の Pb は酸化数 -2 の O が 2 つあるため 4 です。

(2) SnCl₃⁻
酸化数が -1 の Cl が 3 つあります。そして全体の電荷が -1 ですから Sn の酸化数は +2 となります。

(3)COF₂
省略

5・2

5)  形式的には硫酸のヒドロキシ基の部分がスルフィド基に変わっただけです。よって硫酸のようにスルフィド基をヒドロキシ基と考えて計算します。硫酸の化学式は H₂SO₄ ですから酸化数 +1 の H が 2 つ、酸化数 -2 の O が 4 つなので S の酸化数は +6 です。末端の S は酸素原子と同等に考えているので -2 となります。



6)

二硫酸の構造を上に示しました。こちらは S を O と同様に扱う必要はないのでいつも通り計算します。酸化数 +1 の H が 2 つ、酸化数 -2 の O が 7 つなので S の酸化数は 2×1-7×2 が 0 になるようにします。S は 2 つあるので酸化数は +6 です。

5・3

(1) H₂S
水素の酸化数を +1 として数えると水素は 2 つありますから硫黄の酸化数は -2 となります。

(2) KH
カリウムも水素も酸化数が +1 になりそうですがカリウムのほうが水素より電気陰性度が小さいです。酸化数とは電気陰性度が大きい原子に電子が帰属すると仮定した時のその電子の電荷の大きさのことです。水素のほうが電気陰性度が大きいため電子をより引き付けて酸化数が -1 になります。カリウムが +1 です。

(3) [ReH₉]²⁻
水素の酸化数を +1 として考えます。全体の電荷が -2 ですからレ二ウムの酸化数は +7 です。

(4) H₂SO₄
H の酸化数は +1、O の酸化数は -2、として考えます。すると S の酸化数は +6 です。

5・4

(1)亜鉛の過マンガン酸イオンによる酸化反応
過マンガン酸イオンは亜鉛を酸化し自身は還元されます。亜鉛は過マンガン酸イオンを還元し自身は酸化されます。それぞれの半反応式は
Zn²⁺+2e⁻→Zn と MnO₄⁻+8H⁺ +5H⁺→ Mn²⁺+ 5H₂O です。電子数をそろえて消せるように計算しましょう。

(2)解説参照。塩素が酸化されマンガンが還元されます。

(3)イオン化傾向は銅のほうが銀より大きいです。よって銅が陽イオンへと酸化され銀は還元されます。

5・5

(1) H の酸化数を +1、 O の酸化数を -2 とします。後は化合物全体の電荷が 0 になるように N の酸化数を計算しましょう。

(2) (b) が少し難しいかもしれませんが (a), (c) はできると思います。各原子の数が合うように係数を計算しましょう。(b) は 3 HNO₂→ 2NO + HNO₃ + H₂Oでも正解です。

5・6

Frost 図の書き方は例題 5・1 で解説したのでそちらを参照してください。また標準電極電位の求め方ですが標準電極電位 E は状態量ではないので加成性は成り立たなかったことを思い出してください。よって半反応式の右にE゜とΔG゜を書いて計算を行います。

教科書解説の→①ですがそれぞれの E゜は問題文で与えられています。そしてΔG゜=-nE゜の計算によりΔG゜を求めます。電子数をかけるのを忘れないでください。

次に→②です。ΔG゜は状態量なので加成性があります。よってここで足し算を行いましょう。

次に→③ですが E゜=-ΔG゜/n より電子数で割るのを忘れないでください。

5・7

イオン化傾向でどちらがアノードでどちらがカソードかという考え方をすると間違えます。その考え方をすると銀よりイオン化傾向の大きい銅が酸化されるはずですが実際の解答には銀が酸化された形が書いてあります。ではどのように考えればいいのかというと電池式を見ればわかります。電池式とは問題文に与えられている|で仕切られた式のことです。この電池式の左側がアノードで酸化される、右側がカソードで還元されると電池式の定義により決まっています。よって (1) の電池反応式は書けるようになると思います。

電池の反応式から反応の標準電極電位を求めます。よって銅と銀の電池の標準電極電位は 0.34-0.80=-0.46 V, 銅と亜鉛の電池の標準電極電位は 同様に計算して +1.10 V となります。アノードの標準電極電位からカソードの標準電極電位を引いています。

2)ネルンストの式は ΔE=ΔE゜-(RT/nF)lnQ でした。問題文の半反応も電池反応の反応式も = ですから Q=K としていいでしょう。そして lnQ の処理ですがln の底が e で log の底が 10 とすると log Q= lnQ/ln10 です。さらに ln10 が 2.3 ですから解説の通りの式になります。後は値を代入していきます。銅や銀など単体はこういう時は 1 とするのでした。イオンの濃度は電池式に書いてあります。銅と亜鉛ですが値を代入すると log の部分が 0 になることが分かると思います。

5・8

(1)反応が自発的に進行するかは標準反応ギブスエネルギーの値により分かります。値が負であれば反応が自発的に進行しました。ΔG゜=-nΔE゜ です。電池反応の反応式の標準起電力 ΔE゜は先ほど 5・7 で求めています。よって先ほど求めた ΔE゜が正であれば反応は自発的に進行しますが負であれば反応は自発的に進行しません。

(2)平衡状態の時反応は見掛け上起こっていません。よって平衡時にはネルンストの式に Q=K、そして左辺のΔE に 0 を代入できます。各値を代入すれば平衡定数が求まります。

5・9

解説参照

5・10

(1)解説にあるようにカソードでは還元反応が起こります。これは絶対に覚えてください。そして標準電極電位が正に大きいとありますがここでも標準反応ギブスエネルギーを考えます。標準電極電位は E で、G=-nE ですから E の値が大きいほど反応は自発的に進行しやすくなります、ここで標準電極電位は還元反応をした時の値であることを思い出してください。例題 5・1 の解説でやりました。 p93 に書いてあります。

(2)銀のほうが銅より早く還元されるのですから銀の還元され始める電位、還元が終わる電位と銅が還元され始める電位を計算すれば銅と銀が分離できるのかが分かります。あとは単体の濃度は 1 ということを忘れずに与えられているネルンストの式に値を入れてください。

5・11

(1) Fe³⁺(aq)+3e⁻⇆ Fe(s) となるように与えられた二つの半反応式を組み合わせましょう。この問題では単純に 2 式を足し合わせれば大丈夫です。そしていつも通り E には加成性が成り立ちませんから加成性の成り立つ G を使ってEを求めます。電子数に注意しましょう。電子数 2 の半反応の E は 2 をかけて最後に G から E に戻るときは 2 で割るのを忘れないでください。

(2) Frost 図の書き方は例題 5・1 参照です。

5・12

(1)不均化の平衡定数を求める問題です。まずは与えられた半反応式から不均化の反応式の標準電極電位を求めましょう。その後平衡時のネルンストの式に代入してもいいですが ΔG゜=RTlnK の式を使うのが簡単でしょう。そして標準反応ギブスエネルギーですが  ΔG゜=-nE とΔG゜=-nFE の違いに混乱する方もいらっしゃるかもしれませんが単位が違うだけです。この問題ではファラデー定数を使うことが問題文からわかりますから後者のほうを使いましょう。

(2)問題文にどのように解くかが書かれています。使えと言われた式を使って標準電極電位を求めてください。また教科書の解説の半反応式のところについてですが上の半反応式は電子数が 2 ですが 2 つの半反応式によりできた反応式の電子数は 1 ですから 2 で割らないように注意してください。割ってしまう人がたまにいます。

(3) E゜(Cu²⁺/CuI) を求めるのに必要な半反応式は解説の通りです。大学受験の数学や物理でやったようにある問題の前の () の問題がヒントになっているパターンです。そのことと CuI の銅イオンが 1 価であることに気づけばわかると思います。

Cu²⁺ + e⁻ → Cu⁺ の半反応式の標準電極電位は (2) で求めました。ここで CuI の半反応式の標準電極電位もわかればいいのですが問題文に書いてありません。その代わりに CuI の溶解度積が与えられています。G=-RTlnK の関係に溶解度積の値を代入すると解答が求まります。この溶解度積とG=-RTlnK の式を使って標準電極電位を求めることを思いつくかが本問のポイントでした。

5・13

(1)カソードでは還元反応、アノードでは酸化反応が起こります。酸化反応とは電子を放出する反応ですから与えられた半反応式の右から左への反応ですね。Ag と Cu はこの単体の形で存在していませんから解説の通りアノードで起こる反応は 2H₂O → O₂ + 4H⁺ + 4e⁻ となります。

(2)ネルンストの式に各値を代入します。[Ag] と [Cu] は 1 でした。また lnQ ですが logQ=lnQ/ln10 より lnQ=ln10・logQ です。-log1/[Ag⁺]=log[Ag⁺] にも注意してください。

(3)銀の還元の半反応と水が酸化される半反応を組み合わせた全反応の標準起電力を求めましょう。標準状態では反応は起こらず、電圧をかけなければ反応が起こらないことが分かります。

よって各値を各電極でのネルンストの式に代入します。銀のほうは大丈夫だと思いますが酸素のほうは分圧を使用していますね。ここが本問のポイントになります。気体が出てきたら Q もしくは K の部分は分圧と覚えておきましょう。そして求まった E 分の電圧をカソードにかけてやれば銀の還元反応が始まります。G=-nE ですから E が正になれば反応は進行します。そもそもの標準電極電位は (2) の式に[Ag⁺]=0.1 を代入すれば求まります。そこに E を足した電圧をかければ G が負となり反応が自発的に進行します。

(4) (2) で求めた式に値を代入すれば銅が還元され始めるときの電圧が分かります。その電圧を (2) の銀のほうの式に代入すれば答えが分かります。問題5・12 とは違って直前の () の問題ができていなくても解ける問題ですね。こういう問題もありますから本番でも演習でもあきらめず最後まで解いてみましょう。本番であきらめず解いていたら勘が当たって東工大に合格した人もいます。最後まであきらめないでください。

5・14

(1)今までと同様に計算してください。

(2) Frost 図の書き方は例題 5・1 を参照です。

(3)不均化についても今までと同様の解き方です。生成物どうしを結んだ直線の上側に出発物が位置しますから、出発物の nE゜の合計はの生成物のそれよりも高い、つまり出発物から生成物への反応の標準反応ギブスエネルギー Δ G゜は負です。よって反応は自発的に進行します。

直線よりしたにあるから、でもいいかもしれませんが上のように理由を言えるとなお良いと思います。

5・15

(1)電池の起電力は各半電池の電極電位の差でした。よって問題文に与えられている平衡電位 E と 標準電極電位 E゜の関係を示すネルンストの式に各値を代入していきます。 [Zn] と[Cu] が 1、各イオンの濃度は問題文に与えられている活量を使います。すると各半電池の電極電位が求まりますからその差をとってください。電池の起電力が求まります。

(2)解説参照。

(3)外部回路に電池をつなぐと放電が起こります。このとき電池は負極で亜鉛が亜鉛イオンに酸化されます。そしてその反応で生成した電子は外部回路を経て正極に向かい正極で銅イオンを銅へと還元します。

(4)亜鉛版は亜鉛へと酸化されその過程で電子が発生します。その電子は回路を通らず銅イオンと反応し銅が亜鉛板の上に析出します。

5・16

(1)ネルンストの式に各値を代入してください。

(2)ネルンストの式に各値を代入してください。またE=E゜- (RT/nf)lnQ のマイナスの部分ですが Q の中身を分母と分子逆にしているので答えはプラスになっています。

(3)ネルンストの式の [Red]/[Ox] の部分は当然 [Ee(CN)₆]⁴⁻/[Fe(CN)₃]³⁻ なります。 [Ee(CN)₆]⁴⁻/[Fe(CN)₃]³⁻は錯体の全生成定数が与えられていますからわかります。さらに錯体の生成反応も考えると解説の通り [Ee(CN)₆]⁴⁻/[Fe(CN)₃]³⁻の部分を[Fe²⁺]/[Fe³⁺]×10^-8.2 とすることができます。後はネルンストの式に代入すれば答えが求まります。

5・17

(1)解説参照。

(2)銀イオンは水中で水和しています。結合しているわけではありませんから格子エネルギーのほうが大きいです。格子エネルギーとは結合している結晶をイオンへと解離させるのに必要なエネルギーです。

(3)各 pH でどのような反応が起こるかわからなければ解くことができない問題です。逆に各 pH での反応が書ければネルンストの式に各値を代入して標準電極電位が E゜ より低くなるということが証明できます。

5・18

(1)何度もやっている問題です。酸化還元反応式とその標準起電力をとめる。求まった標準電極電位を平衡時のネルンストの式に代入する。すると平衡定数が求まります。

(2)溶液中には問題文より鉄(Ⅱ)イオンが 0.01 mol 存在します。そしてプロトンを 2 つ持つ硫酸は 2 × 0.3 mol/dm³ × 0.1 dm³ = 0.06 mol あります。酸化還元反応の係数より滴定終了までに必要な過マンガン酸イオンの量が 0.100 dm³ とわかります。よって水素イオン濃度は酸化還元反応の係数より
(0.06 - 8 × 0.002)/0.2= 0.22 mol/dm³ とわかります。

そして次に各半反応のネルンストの式を組み合わせて当量点での電位を求めます。当量点では [Fe²⁺]=5[MnO₄⁻], [Fe³⁺]=5[Mn²⁺] ですから水素イオン濃度のみで当量点の電位が分かります。水素イオン濃度は先ほど 0.22 mol/dm³ と出ていますから組み合わせたネルンストの式に代入すると答えがもとまります。

5・19

(1)
(ⅰ)式 5・31 と式 5・32 を 2 で割ってから酸化還元反応式を組み立てています。E゜は状態量でないので加成性が成り立ちませんから値を 1/2 していません。

(ⅱ)与えられた式ではなく(ⅰ)の酸化還元反応式を使うと気づけるかがポイントになります。式 5・33 では標準電極電位が与えられていない代わりに pKa 
が与えられています。ΔG゜=-RTlnK の式に pKa を代入します。pKa=-log K ですからいままでやってきたように底の変換を行うとΔG゜を求めることが可能になります。そこから今回求めたい酸化還元反応の E゜が導けます。

(2)下線部の反応式を作るのに必要な半反応式を適切に 2 つ選択しましょう。(1) と同じように計算すればギブスエネルギーが求まります。どちらの単位で答えても問題ありません。

5・20

(1) 5・18 でもやりました。酸化還元反応式とその標準電極電位をとめる。求まった標準起電力を平衡時のネルンストの式に代入する。すると平衡定数が求まります。

(2)濃度比は (0.10-0.08)/0.08 でも求まります。この濃度比をネルンストの式に代入しましょう。

(3) 5・18 でもやったように当量点ではあるイオンの濃度が別のイオンの濃度の整数倍になっていますからネルンストの式を簡単にすることができます。
K=([Fe³⁺]/[Fe²⁺])^2=14 ですから [Fe³⁺]/[Fe²⁺]=7 です。これをネルンストの式に代入しましょう。


5・21

(1)結果として E どうしの引き算でも正しい答えが求まりますがここは解説の通りに酸化還元反応式をたてて起電力を求めましょう。

(2)平衡時のネルンストの式に代入します。 (1) の結果を代入します。

(3)カソードでは還元反応、アノードでは酸化反応が起こります。(1) での酸化還元反応を見ていただくとわかるように Gが正ですからこの反応は自発的に右方向には進行しません。よって自発的に進行する方向は当然ですが左方向です、よってカソードでは銀が還元され、アノードでは鉄が酸化されます。

(4)各半反応のネルンストの式に a, b, c を代入して引き算を行うと鉄のほうが電位が高いことが分かります。電流は電位が高いほうから低いほうへと流れますから Ag が 負極で Pt が正極となります。

5・22

(1)酸性溶液に鉄を加えると水素が発生することが分かっていれば解けるはずです。表 5・3 の下 2 つの式を使って標準電極電位を求めてください。

(2)省略

(3) Fe²⁺ が酸素により酸化されます。標準電極電位の求め方は今までと同様です。

(4)解説参照。

注:どういうときにどういう反応が起こるかを知らなければ解けませんから覚えておきましょう。

5・23

(1)今まで通り酸化還元反応式をたてて標準電極電位を求めます。G=-nE の関係からギブスエネルギーを求めましょう。単位は eV でもいいですがクーロン定数が与えらえていますからそちらを使えということなのかもしれません。

(2)ネルンストの式に代入しましょう。log の式変形はもう大丈夫でしょう。ネイピア数 e の約 2.3 乗が 10 になります。

(3) (2) の式に代入します。











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