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水玉の世界は距離を超える

11月の課題のエッセイをこちらでもご紹介させていただきます。

「水玉の世界は距離を超える」

早稲田駅から歩き夏目漱石の記念館のほど近くにある、ロールケーキの細長い箱を縦にしたような白く目立つ建物。それは「草間彌生美術館」だった。

あの草間彌生!…と言ってもご存じない方もいるかもしれないが、色鮮やかな水玉模様の作品は一目で彼女のアートだとわかる世界でも知られる日本人アーティストの一人。見慣れたかぼちゃやピーマンも「水玉模様」で表現され、しかも赤、黄、青と原色使いで色も形も斬新。初めて彼女の作品を見た時は、皆、度肝を抜かれたに違いない。

 日本各地に彼女の創作物が様々展示されているのは知っていたが、新宿に、しかも歩いて行けるところに美術館ができたとは!新宿区民、一度は見物をしなくてはなるまいと好奇心旺盛な私は夫を誘ったものの、興味がないということで振られ(苦手らしい)一人テクテク歩いてその建物を目指した。
 水玉のみならず幾何学模様や、独創的な示唆を与えるような作品もあり、「色」がテーマということで興味津々で出かけたのだ。ベッドやドレッサーといった彼女の部屋をしつらえた展示もあり、天井にはミラーボール、テレビの中から草間さんが話す。目がチカチカするほど自分にも光と色が注がれ、唖然というか「ここには住めない」と心の中で思いつつ退出。

 晴れた日には解放されるという屋上へ足を運んだ。白い天井は楕円形で青い空がのぞく。自然の青の優しさにほっとするも、すぐ目の間にあったのは巨大な花。その奇抜な花のオブジェをしげしげ鑑賞した後、喜々としてスマホで写真を撮りまくっていたら、そばにいた外国人の女性が「take a picture?」と声をかけてくれた。(え、いいの?)

 ともかく、にっこり「サンキュー」と笑顔でスマホを渡してから、ゆっくり周りを見渡したら日本人は私一人。もはや私の方が観光客ではないか?徒歩20分の地元民は「ここは、どこ?」と一瞬考えてしまった。世界ってあんがい近いわね。



J.Discoverさんが運営されているエッセイ塾「ふみサロ」のリブリオエッセイの11月の課題図書は
イノベーション創出を実現する「アート思考」の技術 
長谷川 一英 著

今回のエッセイは公立の展示において男性優位で女性は1割ほどというジェンダー格差があると本の中で紹介されていましたが、そんな中、現代アートにおいて女性でも世界で活躍が知られている日本人アーティストの草間彌生さんを取り上げ、アートは男女差も、人種も距離を超え、国境すらなくしていまう…こともあると意図して書いたものです。

もっとも、「草間彌生さんを知らない」という方も一定数いらしたので、
なかなか価値観の相違というもにより、評価や受け取り方にもアート同様、理解や違いで様々に意見が割れるエッセイ作品となったようです。

ちなみに、エッセイの中に出てきたお花はこちらです↓

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