関市の町家を調べてみた 「鍛治町家の再生」#2
刀鍛冶のはじまりは南北朝時代
岐阜県関市の刀鍛冶は、13世紀の南北朝時代に鍛冶屋の金重や兼永がこの地に移り住んだことから始まりました。なぜ関市で刀鍛冶が発展したのかはさまざまな説がありますが、関市が東西の中間に位置し、争いが多かったことが一因と考えられています。また、関ヶ原の戦いでも、関の刀鍛冶が重要な役割を果たしたことは疑いの余地はありません。
刃物のまちの構成
「刃物のまち関」には、吉田観音(新長谷寺)、春日神社、貴船神社、善光寺など、多くの神社や仏閣があります。これらは、鍛治に関わるさまざまな神事に由来しているようです。寺社を結ぶ通りには町家が並び、まちの特徴となっています。これらの町家には、鍛治に関連する職人たちが住んでいたと考えられます。
まだ残っている町家
関市の中心部にある町家の状況を調査しました。町家とは、通りに沿って均等に建てられた、店舗と住居が一体となった住宅のことです。この地域は刃物の生産が盛んで、多くの町家では通り庭を通った奥に作業場が設けられていました。新長谷寺から貴船神社までの1.2kmの道沿いには53軒の町家が残っており、ところどころに伝統的な街の風景が見られます。しかし、町家の間口は三間から四間が多く、一般的にプレハブ住宅には向かない敷地であることもわかりました。
今後10年で世代交代が進むことを考えると、多くの町家で世帯主が変わるため、何らかの対策が必要になります。新しい住宅を建て替えたり、部分的に改修したり、取り壊して空き地や駐車場になる可能性があります。しかし、将来的に人口が減少することを考えると、放置されて空き家になる町家も増えることが予想されます。
空き家の有効活用に向けた補助金や課税
最近、国は増えている空き家に対処するために「空き家対策特別措置法/2015」など、制度を改正しています。空き家の耐震や断熱の改修に対して補助金を用意している自治体もあります。一方で、空き家や利用されていない別荘を所有する人に対して課税する自治体も出てきました。活用されていない空き家には、固定資産税や都市計画税に加えて、この非居住住宅利活用促進税がかかります。これらの具体的な内容や条件は自治体によって異なるため、詳細は各自治体の情報を確認することが大切です。
町家の伝統的な価値を大切にしながら、住みやすさや経済的な持続可能性を高める空き家の活用が必要です。そのためには、建築だけでなく、まちづくりや地域の産業、福祉、医療に関する専門家、ボランティア、住民との協力やその仕組みを作ることが重要です。
参考文献
建築・まちづくりのための空き家大全:田村誠邦・加藤悠介ほか編、学芸出版、2024.10