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マリファナと排泄物とゴミと

わたしはアメリカのハリウッドに行ったことがある。
これはその近くにあるスラム街に行った時の回想録だ。


ホストファザーが、車の窓を全開にする。
ホストファザーの娘さん(30代)は「閉めたかったら閉めてもいいからね」と言う。
閉めたい。だってホームレスの人たちがすぐそばにいるんだ。
それにわたしは英語も十分に聞き取れない。
何が起こるかわからない。
スイッチに手を伸ばして閉めようとする。
しかし、閉まらない。なぜかロックされている。
閉まらないことを英語で伝えようとするも、なんといえばいいか分からずまあいっかと諦めた。
そのあと20分ほど車で、夜のスラム街を通り抜けることになってしまった。

窓を開けっぱなしにして、スラム街に入っていく。
街灯が照らす暗闇の中、左側にゴミの山と歩道に連なっているテントが見えた。
少し遅れて、鼻から息を吸うと、すごく強烈なにおいがした。
今まで嗅いだことのないくらい強い匂いだ。
妙に甘ったるくて、でも蒸れたような嫌な臭い。
おしっこと生ゴミとマリファナだろうと分かるまでそう長くはかからなかった。

ここから少し離れたハリウッドの観光地(山に白い文字でHollywoodが見えて、☆がたくさんある有名な通り)にもホームレスや薬物をやってふらふらしている人はいたし、おしっこのにおいもした。
印象的だったのは、アメリカンなサイズのでかいショッピングカートにものをたくさん入れて押して歩いているホームレス(と思しき人)だ。
彼はゴミ箱をあさって半分以上残っているスタバの飲み物を取り出すと、ふたをぱかっと取って飲み物を吸い始めた。
さっき私が捨てたチップスも、このようにしてホームレスの人たちの食べ物になるのだとうか、と思った。
一緒に行ったホストファミリーたちは、こんな様子に慣れているのか平気な顔で通りを歩いていたが、私からすれば怖い。
でも少し経つと、何もしてこないと分かって平気になった。
ちなみにハリウッドに限らずビーチや町にも大麻ショップはたくさんあった。

スラム街を進んでいくと、テントが連なり、ホームレスの人も多くなっていく。建物の壁には大量の落書き、時折サイレンの音。
そのテントは、ホストファミリーによれば、政府が支給したものらしい。
ハリウッドのあるカリフォルニアは、一年を通して雨が少なく暖かいのでホームレスが住み着きやすいらしいとも言っていた。
スラム街にはいろいろな人がいた。
片足がなくて、車いすに乗っていて、ある方の足で車いすを進めて横断歩道を渡るおじさん。
マイクをもって音楽をかけて「put your hands up」とずっと歌っている男性。
1,2歳の子供がゆりかごのようなものの上で眠っているのも見た。
保健センターのような建物もあった。
行き止まりのようなところに行くと、ゴミの山がまたまた現れた。
ホストファミリーが「enough?」と尋ねてきた。
もう十分だ。特に嗅覚が…。

それからハリウッドの方向に戻っていき、ゲイプライドで有名なハリウッドの西側の地区をとおり、高級住宅街ビバリーヒルズを通って、家に帰った。
家で留守番していたホストマザーは、わたしたちがホームレスを見てきた、と言うと「あなたたちはクレイジーピーポーだわ」と言った。
娘さんによると、ホストマザーは繊細なので絶対泣いてしまうらしい。

その後シャワーを浴びている時も、ベッドに入ってからも、私の鼻からあの蒸れたような腐ったような甘ったるい強烈な臭いは離れなかった。

クレイジーだが、大切な経験だったと思う。

最後まで読んでくれてありがとう。
るえな


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