クリニックの医師の採用(1)
クリニックにおいて医師を採用する場面は、つぎの場面が考えられます。 1.患者数が多くなり、2診体制にする場合
2.分院を展開し、法人の理事として分院長もしくは本院を任せる場合
3.常勤医もしくは非常勤医として分院の診療にあたらせる場合
おおまかに別けると上記の3つが考えられます。
患者増加に伴うクリニックの2診体制導入 ~医師採用の成功ポイント~
開業後、順調に患者数が伸び人気のあるクリニックに成長すると診療における待ち時間の増加や、院長はじめスタッフの負担が課題となってきます。
そのため、新たに医師を雇用し、2診体制を導入することも検討の余地があります。
この記事では、実際の経験やエピソードも交えつつ、医師採用におけるポイントをご紹介していきたいと思います。
1. 採用の目的を明確にする
ある日、受付スタッフから「最近、患者さんから『待ち時間が長い』という声が増えています」と相談がありました。
待ち時間の長さは、クレームの大きな要因です。
予約システムなどを導入するなど、時間の交通整理をすることである程度の分散はできるかもしれませんが、患者さんは思った通りに来院効率をはかれないことはあるあるの話しです。 診療の質をあげるためにも、新たに医師を雇用し待ち時間対応の解消をはかりたいところです。 また、内科系のクリニックの場合、例えば循環器や糖尿病など専門医を雇用し、専門枠を設けて患者さんの診察分散化を試みる目的も良いでしょう
2. 雇用条件と勤務形態の明確化
新しい医師の雇用を検討する際、雇用条件を設定することは欠かせません。 常勤、非常勤、いずれにしても給与相場を把握しておくこと。 給与は、月給・日給・年俸制が一般的ですが、年俸制だからといって残業代が発生しないわけではありません。
雇用する場合、労働基準法に則って書面で雇用契約を締結することが重要。 ここはきちんと、社会保険労務士や弁護士に契約内容を確認してもらいましょう
非常勤であるならば雇用契約のほか請負契約も考えられますが、その場合税務的にも労働法的にも合理性を整えておくことが必要です。
また、勤務形態についても柔軟に考えてみたいところです。 例えば、ある医師は「週に3日だけ働きたい」と希望していたため、非常勤として採用し、忙しい曜日に集中的に勤務してもらうなどして、混雑度合いを分析して採用を検討してみてください。 いまは電子カルテで、曜日別、時間別で患者トレンドが抽出できますので利用をお勧めします。
3. 適切な採用チャネルを選ぶ
医師の募集は、看護師や医療事務と違い一般的な募集媒体などでは期待ができません。 医師専門の求人紹介サービスを利用することが主だった採用経路になりますが、まずはご自身の人脈の中で声をかけてみることを第一優先に考えたいところです。
同業の院長仲間からの紹介で「地域に戻りたい」と考えている医師に出会うこともあるでしょうし、大学病院での教授との繋がりがあれば医局員を派遣してもらえるケースもあります。 やはり人脈が大切ですが、逆に断りずらいケースもあったりするので踏まえておくことが必要です。
医師紹介会社といえば、エムスリーキャリアやリクルートドクターズキャリアなど大手と言われるところから、中規模ないし個人レベルの会社さんも様々存在します。 ポイントは、紹介会社同士の人脈ネットワークに長けている担当者と巡り会うことで、多方面の会社やエージェントに情報を拡散して貰えれば効率よく候補者と出会うことが可能です。
4. 求める人物像を明確化
採用活動中、ある候補者と面接をした際、患者への対応の考え方が院長の理念と大きく異なると感じる場合も少なくないと思います。 その経験から、「スキルだけでなく、クリニックの方針に共感してくれるかどうか」を重視してもらえるかどうかを判断する必要があります。
例えば、「患者さんの話を丁寧に聞く姿勢」を求める場合、面接で過去の具体的な対応事例を聞き出すようにしてみても良いでしょう。 自院にあった、より適切な人物を見極めたいところです。
5. 面接・選考プロセスを丁寧に行う
候補者の一人と面接を行った際、「診療中に患者さんが感情的になった場合、どう対応しますか?」という質問を投げかけてみるのも一つです。 その医師は具体的なエピソードを挙げて、冷静かつ共感を示す対応をしたことを説明してくれたら安心できますね。 このような答えから、患者対応の適性の高さを評価することもできます。
さらに、トライアル期間での診療を設定することができるのであれば、実際の診療での患者対応やスキル、スタッフとの相性を確認することも重要です。 もちろんその際は、トライアル診療とはいえ労働対価が発生することは言うまでもないです。
6. クリニック全体の体制を整備
2診体制の導入にあたり、スタッフ全員でミーティングを行い、診療方針や役割分担を再確認してみましょう。 例えば、看護師には新しい医師のサポートに重点を置いてもらい、受付スタッフにはスムーズな案内方法を再教育するなど患者さんが困惑しないように業務構築をはかってみるのも必要。
また、電子カルテシステムを見直し、2診体制でも操作が混乱しないような設定に見直しをしてもらいましょう。 このような準備により、スムーズに新体制をスタートできると思います。
7. 勤務後のフォローアップ
新たに採用した医師が勤務を開始してから1か月後、定期的なミーティングを行い、課題や改善点を共有したいところです。 例えば、「この時間帯は患者が集中しやすいので、もう少し診療ペースを調整したい」といった具体的な意見が出て、改善に繋げることができると質の向上にもなると思います。
最後に
2診体制の導入は、患者満足度の向上だけでなく、スタッフの働きやすさやクリニック全体の効率化にも繋がります。 しかし、それを成功させるためには、採用活動の段階から明確な目標と丁寧な計画が必要です。
この記事が皆さんの参考になり、より良い医療提供の一助となれば嬉しいです!