方位盤のある風景と強力伝
山の山頂など広く見渡せる場所には、「方位盤」が設置されていることがあります。この方位盤は「山座同定盤(さんざどうていばん)」とも言われ、展望できる山名を記しているものですが、地図や方位磁石と照らし合わせることができます。
山を登り、山頂に立って、展望を楽しみ、見える山を知ることができるものです。
磐梯朝日国立公園にある「大朝日岳(おおあさひだけ)」1,871mは、日本百名山に含まれ、山形県と新潟県の県境に聳《そび》える朝日連峰の主峰です。
上の写真は、北の方向で、奥に山形県の月山(がっさん)が見えます。
方位盤の中に、大沼と小沼が描かれています。また、山名には標高も記されています。比較的赤城山内の山を中心とした方位盤です。
赤城山(あかぎやま)は、主峰・黒檜山(くろびさん)、駒ケ岳、地蔵岳、荒山、鍋割山、鈴ヶ岳、長七郎山から形成される山の総称です。
会津朝日岳(あいづあさひだけ)1,624mの山頂に建つ方位盤です。エンボス加工された方位盤です。
会津朝日岳は、日本二百名山ですが、とても疲れた登山でした。有名で登山客が多い山には、山小屋があり、登山道も整備されて登りやすく、標高があっても、小屋泊すると1日の行程が短くすることができます。
それに比べて、登山客の少ない山は、ひっそりと楽しむことができるのですが、あっても避難小屋があるだけで、ほとんど日帰り登山となるため、行程が長く、標高が低くとも、とても疲れる登山となります。まあ、若い頃はなんともないと思える山でも歳を重ねると「こんな筈ではなかった…」と嘆かざるをえません。この山は特に下部が歩きにくく、藪漕ぎに近い状態でした。
疲れた登山と言えば、日光の女峰山(にょほうさん)もたいへんでした。
話はズレてしまいました。
強力伝の方位盤
上の写真は、「ヤマレコ」の写真ですが、白馬岳(しろうまだけ)の山頂に建つ方位盤です。今ではヘリなどで上げるのですが、なんと、人力で50貫(約187キロ)もの大岩を背負い上げた男の物語があります。
『強力伝・孤島』新田次郎著にモデルとして書かれています
新田次郎は、富士山測候所などの勤務を経て、『強力伝』のデビュー作で直木賞を受賞し、『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』『剱岳・点の記』などの山岳小説、1974年には歴史小説『武田信玄』で吉川英治文学賞を受賞しています。
私は、山で方位盤を見る度に、この強力伝のことを思い出します。とてもとても人間業ではありません。かつて、山岳写真機材など合わせ40キロを担いで山に行っていたことをちょっとだけ自慢していましたが、「小宮正作(本名:小見山正)からしたら、ディパックを背負ったくらいにしか思わないでしょうね。