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大型カメラで学んだこと

最高級機「リンホフマスターテヒニカ4×5」を使って

当時、山岳写真などで、カメラの大型化が進んでいた。それは、繊細な描写と画質を高めるためだった。
大型化すると、カメラ・レンズ数本・がっちりした三脚・フィルムホルダー20~30ヶ・フィルム・付属品などなどカメラ機材だけでも相当な重量となった。
フィルムサイズ「4×5・しのご」(4inch×5inch)のクオリティーは素晴らしく、重さや現像所へ足を運ぶこと、金額面においての負担をも凌《しの》ぐものだった。

大型カメラを使うと自然に身につくもの

  1. 四隅までしっかり画面構成し、無駄のない構図にすること。

  2. 無駄な露出で何枚も撮らないこと。(フィルム1枚500円くらいしたので、無駄打ちはできない)

  3. 1カット2枚から多くても3枚の中に、「ピタッと」希望の露出を持ってくる。(スポットメーターを使用)

1.設定するまでには慣れていても、一眼レフカメラで撮るように早くはできない。その分、クオリティーで勝負となる。だからこそ、「これだ!」という構図にして、「この瞬間だ!」を待つ。それまでは長く待つが、その瞬間は実に早く行動する。そういう瞬間に出逢えるのは二度とないので、何枚も撮る。
構図は、4倍のルーペで確認し、ピントはもちろん、左右上下に無駄な木の枝などが入っていないか確認する。(今のようにレタッチで消せる時代ではなかったので)

2.限られたフィルム枚数、限られた金額の中で、質のいい写真を残すには、ちゃんと考えて撮らなければいけない。ましてや、露出を変えて何枚も撮るなどできるわけがない。だからこそスポットメーター(35㎜一眼レフ基準2000㎜レンズをつけて露出を測るのと同じ)で、風景の中から構図した部分部分を測り、構図した画面の露出の範囲(約5EV)を計算し、露出値を決める。

3.無駄打ちはできないので、より慎重に1枚1枚を大切に撮る。
大型カメラは、設定に時間がかかるので、予測することが大切。この場所、この瞬間を予測し、その瞬間が来るのを待ち、予測通りの瞬間が来たらモノにする。

愛用のリンホフマスターテヒニカ4×5
愛用のスポットメーター(左・反射光式/右・入射光式)

こんな効果もある

目の前の岩峰がせりあがっているのを広角レンズで撮ると、見た目よりも先細りとなって迫力がなくなる。そんなときは、レンズ面を上に上げ、ライジングという操作をすると、先細りしていた岩峰が起き上がり、見た目以上に迫ってくる。(高層ビルを真っすぐ撮るのと同じ)
また、チルトという操作(フィルム面を動かす)をすると、足元から遠景までピントを合わせることができる。
さらに、ブローニーフィルムを使い「6×7」「6×12」のホルダーで、望遠効果とパノラマを撮影できる。
上記のように、チルトやライジングができるように、蛇腹がついていて、そこから光が入らないようになっている。

デジタル時代になっても

「大型カメラで撮ればうまく撮れる」と勘違いしている人がたくさんいた時代があった。しっかり三脚を使い、確かにピシッとピントがあった写真が撮れる。
だが、最も大切なのは、何を狙い、どのように表現するか?であると考える。むしろ、大型カメラで撮影し、無駄な空間を多く入れてしまうと、構図が散漫となり、何を撮りたかったのかが伝わってこない。
構図は、デジタル時代になっても最も大切なものではないだろうか?

リンホフ・マスターテヒニカ
スポット測光について(SEKONIC)
カメラの種類と構造を知る(CAMERA ARCHIVES)


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