ショートショート ゾンビ
今何時だろうか?
ああ16時か。
男は感情なくつぶやいた。
一日が終わるのだ。
見慣れた部屋の片隅に男の世界はある。
まるで定年退職した老人のように、毎日は死を巡る単純作業であった。
男はもうすぐ40になろうとしていたが、定職に就くことなく、のらりくらりの生活をしていた。友人からは、ゾンビというあだ名をもらっていた。彼自身自分はゾンビだと思っていた。
家の外に出ると、朝日のような夕日が
木々に人々に区々にあるがまま照していた。
男に思考がなければ、そこにいる猫たちのように素晴らしい時間を謳歌していただろう。
しかし男はゾンビであった。
後ろ向きの彼には、光り輝くもの全てが、心に闇をつくるなにものでしかなかった。
自販機で、缶コーヒーを買う。
一杯のその一時が彼にとっての唯一の平安であった。そして夜の帳が街灯を照らす頃、悲しみは消え、人工的な朝が始まる。
エジソンの朝と男はよぶ。
そして夜回りを始める。