小説 ノダくん 絶望編2
2011年3月11日14時46分頃に東日本大震災が発生した。
私はその頃、北九州の苅田から速報にて流れる情報をブラウン管テレビから観ていた。
その後大津波にて、家家が流れ、泣き叫ぶ遠い東北の日本人が映っていた。
まるでそれは、映画やフィクションのように、嘘のような本当の話だった。
私はその頃、親の事業の失敗で借金と生活費を稼ぐ為、出稼ぎにきていた。
しかし現状は、荒んでいた。毎日酒浸りで、ギャンブル三昧だった。
最初は工場の期間労働者として雇われていた。言うまでもないが、給料が高く、出稼ぎの王道であるからだ。しかしそこには借金を返す人間の巣窟であり、お互いにクズ人間と自覚しながらも、軽蔑しながら行動を共にした。
最初は真面目に働いていたが、暴力団や半グレ、クズ人間と生活を共にして、人生が馬鹿らしく感じてきた。
ある日仕事中、半グレカブれの男が因縁をつけてきた。
私の顔が気にくわないと、蹴りを入れてきたのだ。
しかし蹴りを入れた、彼の不幸だったことは、相手が悪かった。
何故なら、相手が素人でなかったからだ。
前職がプロレスラーであり、ボクシングや総合格闘技を身につけた身からすれば、薄ら笑いが出る程の腰の入ってない蹴りだった。
私は半グレカブれに軽くタックルを決めて、馬乗りになり、何度が顔面を殴った。
「これは正当防衛だけん」と言ったが、聞き入れなかったので、何度も殴りつけた。それでも周りは誰も助けないし、何でもないこととして扱われた。
そのような殺伐とした環境では、まともな生活など皆無だった。
半グレの彼(マス)と悪友となり、ギャンブルなど行動を共にすることが多くなった。
マス自身、家庭環境がめちゃくちゃで、父は監獄、母は失踪しているらしかった。
しかし相手に同情している暇はなかった。
借金は、益々膨れ上がっていっていたからだ。
早く悪循環から抜け出す為に、仕事を増やし、狂ったように働いた。
元プロレスラーの経験を買われ、一時SMクラブのボディガードもやった。
SMクラブのサディスティックな女王様やマゾヒスティック巫女様がいる風俗店である。
大体はMのお客様相手が多いのだが、時に高額でサドスティックな客が出入りすることがある。その時、マゾスティック巫女様が過剰に怪我をしないかをボディーガードは監視し、必要なら取り抑える必要がある。
一晩で何百万動く案件である為、巫女様が危険を感じた時のみの実働となる。
なので殆どの場合は、仮眠をとる。
昼間は工場、夜は風俗のボディーガードの生活。疲労が溜まり倒れた時は、治験にいる。
治験は、新薬の副作用がないかを見る仕事である。高額であれば、2~3日で50万程稼げることも出来る。注射を打たれて、寝るだけで良いので倒れたあとでも出来る。
そのような、人間として終わったような日々が日常化していた矢先の東日本大震災のニュースである。