「この世界の片隅に」出演者、宝塚OGのSNSを見て思ったこと

 広島原爆の日、「この世界の片隅に」に出演された平野綾さんや村井良太さんが広島でこの作品を演じたからこその投稿をしていらっしゃいました。こういった作品に出演した以上、役を生きるだけでなくある程度平和や反戦のメッセージを発信していく覚悟も持ってほしいと今作の出演者に期待していたので、平野綾さんや村井良太さんの投稿を見て少しホッとしたような気持ちがしました。「この世界の片隅に」のパンフレットは、全体的にどこか耳馴染みのいい言葉が並んでいてふわふわしとした印象をうけました。この世界には誰だって居場所があると、そういったメッセージが強調されていました。作品は素晴らしかったけれど、この作品を扱う人たちの態度としては物足りないと感じました。この作品を見て「みんな居場所がある」だけしか持って帰れない、持って帰らせることができないのであればこの作品をやる意味はないのでは。現在進行形でその居場所を壊し尽くされている人が存在していることにはどう思うのか。そういうことを考えているよ、考えてほしいよと言って欲しかったです。

 「この世界の片隅に」関係者ではない方でも何人か原爆の日の話をされてる方を見かけました。木下晴香さんなども投稿されていました。平原綾香さんは公演のカーテンコールで言及されていたようです。中でも印象的だったのが朝月希和さんです。

 私は朝月希和さんのInstagramがかなり好きです。正直なところ、宝塚OGはSNSがうまくない方が多いと感じます。公式ではないが公式のような紛らわしさでインプレッションを稼ぐアカウントをRPされる方を見かけてガッカリしたことがあります。また、文法的におかしい変な敬語を書いている人もよく見かけます。一方、朝月さんはご自身のお役やそれを取り巻くいろいろなことについて考え、それを自分なりに発信しようとされている様子が好きです(盛りすぎ敬語と卑屈さがちょっぴり気になりはするのですが)。

 原爆ドームの写真とともに、ライムライトやシェルブールの雨傘といった戦争にまつわる出演作のエピソードや思いを綴っていました。

 私が朝月さんの発信に注目し始めたのはすごく最近です。王様と私のお稽古中と思われる期間に、国際女性デーと絡めて自分が演じるタプティムという役が置かれた立場と作品のメッセージについて踏み込んで書いていらっしゃいました。保守的な宝塚のOGが、クリーンでお淑やかなイメージを守りたがる宝塚のOGがここまで書いてくれるのかとすごく嬉しくなりました。舞台はエンタメだけど、過去や今の問題や人々の苦しみを映していて、変える力があると信じていらっしゃるんじゃないかと勝手に思って親近感が湧いています。これからも朝月さんのインスタに注目したいです。

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