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ディズニーと"ポリコレ"揶揄に思うこと①━ ディズニーシーのアラビアンコーストは「アラビアン」ではない!?

 実は去年の秋頃から書いてみたいとおもってちょこちょこ書き進めていたものの、なかなかうまくまとめて投稿に至ることができず悩んでいたテーマなのですが、ゴールデンカムイのキャスティングについての議論をXで見かけて公開してみることにしました。

 昨年2023年は、ディズニーを絶賛したくなったり暴言を吐きたくなったりと忙しい1年でした。黒人ヒロインの起用が大きな話題となった実写版の「リトルマーメイド」は、個人的にディズニーの実写化作品No.1だと感じました。一方で、イスラエルとガザ地区の戦闘にまつわる態度など、疑問に思わずにはいられないこともありました。

 とはいっても、実は私は、「黒人アリエル」を発表当時から歓迎していたわけではありませんでした。でも今は、「ディズニーは"ポリコレを意識しすぎてつまらない"などと言われても屈してほしくない」と強く思っています。私がどうしてこう思うようになったかを何回かに分けて書いていこうと思います。よかったらお付き合いください。

 大学生の時に受けた授業で大変印象に残っているものがあります。担当の先生は、ディズニーシーにあるアラビアンコーストがいかに「アラビアン」ではないか、バサッと斬っていました。

 たしか、「中東・イスラームの文学と美術」といったような名前だったと思います。アラビアンコーストが引き合いに出されたのは、「中東」と「イスラーム」と「アラビアン」が表す範囲の違いを理解させるための導入でした。

 地理の範囲を意味する「アラビア」と、ヨーロッパ人によって作られた概念の「中東」と、宗教とその文化圏を指す「イスラーム」。イスラームの文化圏はアラブだけでなくイラン、トルコ、アフリカ、スペイン、インド、東南アジアなど世界中にあります。アラビアンコーストにある建物は、スペインにあるモスクやイランにあるモスク、トルコにある宮殿などが混在した、アメリカ人がそれっぽいと思ったものを集めて作られたなんちゃってアラビアンだというのが先生の主張でした。

 見慣れたディズニーシーのアトラクションやレストランの外観の写真と、世界各地にあるモスクの写真が並んだPowerPointを見せながら、先生が「いかに欧米人によって誤って作られたイメージなのか」を語っていきました。ディズニーオタクとしては、先生が正確にアトラクションやレストランの正式名称を言いながら、公式HPから取ってきたと言うよりは先生自身が撮ってきたように見える写真をビシバシと批判していく様子が、ディズニーが好きなんだか嫌いなんだかよくわからなくてかなり面白かったです。不思議と好きなものをディスられたような気分にはならず、むしろ好きなものに対して今までなかった視点を与えてもらえてかなりいい時間だったと思っています。面白いと思ったものの問題点を指摘したりするのは楽しそうだしかっこいいとすら思いました。

 先生はテーマパークの話題のほかに、ディズニー映画「アラジン」の1992年のアニメ版と2017年の実写版を比較して、アメリカの企業であるディズニーがどのくらい事実に近い「アラブ」を表現できるようになったか、という話もされていました。こういった導入を受けて、シェエラザードがペルシア王に語った物語のかたちをとる「千夜一夜物語」が「アラビアンナイト」という英語タイトルをつけられたいきさつや、アラジンの舞台は実は中国であるといった話がはじまりました。

 これらの話を聞いて以来、ディズニーランドやディズニー映画にはかなり"そういうもの"、つまりアメリカの白人から見たらそれらしいが実際は正確とは言えないものが溢れてるんじゃないかと思うようになりました。スプラッシュマウンテンの元ネタである映画「南部の唄」をなぜ今見ることができないかなど、差別とディズニーに関する一部の話題を豆知識やトリビア的に知ってはいたのですが、あらためてディズニー作品の良くも悪くもアメリカの白人による作品らしい面を強く意識するようになりました。


つづく

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