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VOICARION XVIII Mr.Prisonerを見た

 先日見たCROSS ROADはあまり刺さらなかったのですが、こちらは大変面白かったです!!今度推しが文翁作品に出るのですが、大変楽しみになりました。

 大好きな種明かし系です。〇〇だと人々に思われていた人は、実は△△だった!系といいますか、権力にとって都合が悪くなった結果レッテルを貼られて押さえつけられた人の真実の話に私はめっぽう弱いです。たとえば「ウィキッド」。「マタハリ」「ひばり」も同じ系統かなと思っています。今作も、王道の種明かし系でした。もう一回全部知った上で最初から見たいです。

 3人の役者さんの演じ分けも見事でした。シンドバッドのシーン、完全にディズニーランドのアトラクションだったな。私はもともとディズニーが大好きなのですが、イスラエルの虐殺にたいするディズニーの態度に不満があるのでディズニーにお金を落とすことを避けています。とはいえディズニーに触れられずかなり寂しいと思っていたので、山寺宏一さんが冒険する船乗りのシチュエーションをたくさん演じる様子はとてもワクワクしました。

 生きるというのはただ呼吸したり食べたり寝たりして生命を維持することではなく、学び、人を信じ、真実を見極め、自分で決断した行動をすることなのだとレスが知っていく。自分で考え行動することを知ったレスは、人々にメフィストフェレスのように恐れられ避けられたホークウッド伯爵を恐れることなく彼の本当の姿を見極め、彼と学んだことも自分自身の選択だったと気づきました。林原めぐみさんも、山寺さんとは対照的な役ですが、1人の変化や気づきがすごくよくわかる素敵なお芝居でした。

 牢獄の中にいる人も、知識や楽しいことや信じてくれる人があれば自由。体が自由でも、自分で真実を見極める素地がなく人々が恐れるものに囚われる人は囚人。単純で教訓的なメッセージですが、今の社会にこそ必要なものだと思いました。牢屋やロンドンの霧、カラスなど重苦しいモチーフが散りばめられているのに、晴れやかな気持ちで劇場を後にできる作品でした。

 プリズナーというのはつまり囚人252、ホークウッド伯爵のことだけでなく、ホークウッドを牢屋に入れた人々のことだとも思ったところで、刺さらなかったCROSS ROADの解釈も若干変わりました。

 「パガニーニは実は悪魔と契約してました!」という話にしては、悪魔は他の人にも見えるようだし、いまいち種明かし感もないし、パガニーニの視点で悪魔と契約したパガニーニの話が続くひねりのない話だなと思っていました。どちらかというと、パガニーニに出会った3人の女(母、ナポレオンの妹、ジプシー)たちの話としてのほうが面白かったです。パガニーニを消費し、すり減らしたのは聴衆の方だし、悪魔を実在させないで聴衆の話にしたらよかったのでは??悪魔との勝ち負けもよくわからん、、などなど、噛み砕けないでいました。

 Mr.Prisonerを経て、パガニーニが彼女たちの人生の十字路に現れた悪魔だったと解釈してもいいのかも?と思いました。自分には取り柄がない、息子の才能の開花こそが生き甲斐になった母親にも、ゴマスリのためだけに近づいてくる人にうんざりした皇帝の妹にとっても、音楽を知りたかった被差別階級の少女にとっても、パガニーニはメフィストフェレスのような存在だったのではとちょっと思いました。

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