香り
大きな別れを経験したあと、人はさまざまなシーンでその別れを実感します。
街を歩いているだけで。
お皿を洗っているだけで。
眠ろうと目を閉じただけで。
有し日の思い出を、ご丁寧に心の中から引っ張り出しているわけではないのに、
無意識と言っていいほどのスピードで涙がこぼれてしまう。
寂しさや後悔が次から次へと溢れ出して、
嗚咽を漏らして泣きじゃくってしまうことも少なくありません。
つらいつらいその号泣スイッチは、香りにあるような気がします。
ともに過ごした時間で共有した、香水の香り、汗の香り、洗剤の香り。
それらを感じた瞬間、もう会えないあの人がそこにいるように感じて、
どうしようもない虚無感に襲われてしまうんですね。
この現象にはちゃんと名前が付いていて
『プルースト効果』っていうんですって。
難しいことはわかりませんが、嗅覚は、本能的な行動や感情をつかさどる
大脳と直結しているらしく、懐かしい匂いを嗅いだ途端に、楽しかった
あの日が大脳をグルグルグルー!!っと駆け巡るんですね。
はあ。
そんな仕組みがわかったところで、今はいないあの人。
笑って思い出せるようになるまで、鼻栓を突っ込んでおきたいよ。
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