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ゆけない
1997年9月7日(日)
長いこと待ったがはじまらなかった。
わたしは西にゆくことにした。気が楽になった。
すると、女が、わたしが去ると、もう自分はおしまいだと言った。
そんなことを言われてしまったら、もうゆくことができない。
「わたしはあなたのそばを離れないから、そんなこと言わないで」
全然言いたくないことばが自動的に出ていた。
わたしの中で何かが死にゆく──もう、ここに、いたくない。でも、あなたが死ぬと言うのなら、死なせることはできない。
動けないあなたのそばで、わたしも動けない。
あなたは子を堕すと言う。
堕せばいい。子の父は逃げた。