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幼い人間に不安を植え付けるのが 母の娯楽の1つだった
1997年5月12日(月)
わたしのお腹にはあばたの刻印が1つある。
信じられないことだけど、母はある時こう言った。
「あんたは赤ちゃんのとき、筋ジストロフィになりかけたんだよ」
あんたのお腹にある痕がその証拠だよ、と。
筋ジストロフィで首しか動かせない男の人が病院のベッドに横たわっているテレビを、母と一緒に見ていてたときだった。
恐ろしかった。さすがに、額面どおり受け取っていいとは思えなかったけど、でも赤ちゃんのころのことなどわからないから、母が言ったことは嘘だ!と確信することもできなかった。
いつか、自分は動けなくなるのかもしれないの?と怯えた。
2022年5月7日(土)
「いつか」だけではないよね、怯えたのは。
自分の親はろくでなしだと、その場で理解して、諦めることができないから、子どもは。怯えの薄暗がりに自分を閉じ込めた。