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血はつながっていない

1997年9月14日(日)
血はつながっていないおじいさんとおばあさん─というのは悪いような若々しさ─のうちにいた。母もいた。知らない男の人が見守るようにいた。

おじいさんとおばあさんはとてもわたしを愛していた。わたしが喜ぶとふたりは喜んでくれた。甘えさせてくれた。
わたしと母に食べものを与えてくれた。おいしくて、うつくしい和菓子だった。農家なのに本職の菓子職人がつくったよなお菓子。

わたしと母は往かなければならなかった。

おばあさんが、わたしに是非炊きたての豆を味わわせようと、目を輝かせて飛ぶように持ってきてくれた。
豆は宝石のようで、透き通ったピンクだった。
湯気がふわふわ──ここの食べものは、おいしい。この世のものとは思えない、重さがないから。

「この豆─白花豆?─が透き通っているのなんてはじめて見ました」とわたしは驚きをことばにした。
母も驚いていた。
見守る人はうれしそうだった。
「お日さまに当てて自然に育てた豆は透き通るんだよ」と、おばあさんは教えてくれた。

母は苛立っていた。おこっているように、先に行ってしまった。
母は、わたしがうらやましくて、くやしいのだった。

わたしも、往かなければ。
お別れを言おう。

おじいさん、優しくしてくれてありがとう。
おばあさん、優しくしてくれてありがとう。
思ったら涙があふれてしまった。

「おじいさん、優しくしてくれてありがとう。おばあさん、優しくしてくれてありがとう。必ず戻ってくるから」──その時も迎えてね──はこころの中で言った。

目が覚めた。6時。
泣いた。ありがたくて、切なくて。
この旅が終わったら必ずあの人たちのところへ戻りたい。全くの他人だけど、あんなに愛してくれる人たちの元へ帰りたい。

また寝入った。



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