覚えていてね
1997年10月19日(日)
暗く白い空。
顕はまだ逃げた鳥、母親の飼ってた鳥を探していた。
顕の母親は鳥を探しに行ったきり帰ってこない子を探していた。
坂のところで自転車によっかかってアイスを食べている顕を見つけた。
「お母さんが顕を探してるよ」
顕の目が輝いて一目散に帰ろうとした。
「ちょっと待って」
ふだん邪険な母親が自分を気にしてるんだから、うれしくて仕方ないのにわたしが止めたものだから、顕は嫌だったろうが待ってくれた。
うつむいている顕。
「顕、わたしの目を見て。
ね、ピーちゃんは鳥でしょう? 鳥は飛ぶでしょう?
顕だって走ったり、自転車に乗って楽しいでしょう?」
「うん。チャリ、はじめん時は恐かったけど、いまは楽しい」
笑った。わたしも笑う。
「うん。わたしだって、鳥だったら飛びたいよ! 飛ぶよ!
ね、ピーちゃんが行っちゃったのは顕のせいじゃないと思う。」
「おれもそう思う」
「うん、顕のせいじゃないよ。
でも、お母さんは顕のせいって思ってる。
お母さんには解らないかもしれないけど、顕のせいじゃない」
「うん」
「あとね、時々暗くなっても顕が帰ってこないから、お母さん心配してるよ。あんまり暗くならないうちに帰りな」
雪が斜めに降ってきていた。
顕の母親はいつも子どもをぞんざいに扱ってるから、余計に心配するんだ。
何度も顕の頭をなぜた。そばに、顕より少しお姉さんの子がいたので、顕を頼んで、わたしは白い犬を探しにいった。
白いい犬を見つけることはできなかった。
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