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水晶-雀

1996年5月20日(月)
眠すぎて、起きようといくら思っても起きられないほど眠いわたしを起こそうとするものがあった。
わたしを呼びつづけていた。
右後頭部が強力な力で引っ張られて伸びる感覚があったので、右後ろを見た。1メートル弱離れたところに、底無しの恐怖そのもののようなものが、真っ黒の土から這い出てきたかのように在った。
焼けて炭のようになってしまった、黒い塊は、「かまくら」を潰したような形で、抱えられるくらいな大きさだった。
「在った」というようであり、「居た」というようでもある塊。
わたしが掘り出してしまったのかもしれない。
ぎゃーっ!!!と叫びたいほど衝撃的な恐ろしさ。
同時にわたしは異常なほど眠たかった。尋常ではない眠たさが破壊的な恐怖を緩和してくれていることが心底ありがたかった。これほどまでに眠たくなければ、直接恐怖が心身に雪崩こみ、のみこむ。そのばあい耐えて生きられるとは到底思えない。きっと死んでしまう。
眠った(夢の中で)。黒焦げの恐怖のものを時々思い出しつつ眠っていた。
どれくらい経ったのか、恐怖のものが半分に分かれていた──半分がそこに残っていて、半分は消えていた。
残っていた半分の断面。崩れ落ちそうな外皮の下は透き通って、あかく、あおく、銀に、あたたかくきらめく水晶だった。
見つめていると水晶の塊は雀になった。
もう何も恐くないと安心した。



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